14章 生配信中の殺人事件-スムーズな解決…5
「それは彼女の持ち物を確認すれば分かるわ、まず携帯用植物図鑑。スマホでいつでもどこでも検索できるこんなご時世に、わざわざ持ち歩いている時点で不思議だと思わない?」
「言われてみれば…あっ!」
すっとんきょうな声を上げる雅樹、片手に持っていたコーヒーをこぼしそうになって慌ててカップをテーブルの上に置く。
「そう、山の中の入ってしまうと木や崖に遮られて電波が届きにくいからよ。近くに電波塔や基地局がないような山ではなおさらね。そして彼女がいつも持ち歩くというお菓子も登山趣味の人のソレね、チョコやクッキーなんかの重量が軽くてすぐにエネルギーを補給できるものはハイキング程度の山登りでもおススメされてるわ。」
「なるほど。それに本人がアウトドア派だと言ってることも踏まえれば、趣味は登山だと推測できるわけか。」
頭の中で順を追って整理しながら忠司がつぶやく。
「そういうこと。キリヤさんと真鍋さんにも毒が入手できないわけではないけど、どこかで購入したりすれば必ず足がつくしそんなもの警察の情報網にかかればすぐ突き止められるはず。なのに犯人が未だ分かっていないのはおかしい、だから登山が趣味の豊島さんが怪しいと思ったのよ。監視カメラのない山の中ならじっくり図鑑と見比べながら毒キノコを吟味できるでしょうし、事情聴取でも趣味が登山だと断言しなければ疑われにくい。現に豊島さんの証言を見て、アウトドアが好きなことや図鑑をいつも持ち歩いてることは認めているけど登山が趣味だとハッキリ言ってはいない。」
うーん、とお茶を片手に唸りながら警部が言う。
「たしかに彼女の持ち物から趣味の登山を割り出したこと、毒の入手経路についても筋が通っている。警察でもまだ詳しい成分は解析中だが、のり子くんの推理通りならどこかの山に自生している毒性の強いキノコなのだろう。」
そうでしょ?アタシってやっぱり賢いのね、と得意気な表情を浮かべるのり子に向かって警部が次の疑問をぶつける。
「まだ大きな謎が残っているぞ、映像に映っていた黒い長そでを着た人物が豊島さんである証明をする必要がある。」
これこそまさに警察が頭を悩ませているところだった、豊島の荷物を改めて見返しても黒いものと言えばニット帽しかない。だがのり子には一つの確信があった。
「違いますわ警部、だからこそ彼女にしかこの犯行は無理なんです。これまでの情報を整理して考えてみてください、彼女が犯人である確証があと2つあるんです。」
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※5/12 更新分です
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