14章 生配信中の殺人事件-21
3/4 9:00 事務所
昨日一緒に帰ったのり子の情報によると今日は10時に警部が来るので、その前に集まった3人。土曜日なので入り口の札はCLOSEのままである。
「んぁーー、結局分からず仕舞いだったー!」
朝から雅樹の絶叫が事務所にこだまする。それを聞いてどこか残念そうな忠司は雅樹が自力で答えを用意してくることを少しは期待していたのだろう。対するのり子は、その降参とも取れる絶叫を聞いて余裕の笑みである。ちなみに忠司が自分の推理を覗き見たことは前日雅樹からメッセージをもらいもう把握済みである。
「まぁ恐らく雅樹くんの頭を悩ませているのは動機の部分でしょうね。そこが分かれば犯人も分かるしあとはその人について出てきた情報を精査すれば、自ずと黒い袖口のトリックも犯人の行動も分かるから。」
「そういえば、なんでのり子さんは事件概要を聞いたとき『私が解くわ』ってあんなに自信マンマンで言いきったんですか?それくらい教えてくれてもいいでしょう?」
雅樹はどうやらまだ諦めていないようだ、警部が来るまでにちょっとでもヒントを掴みたい気持ちが伝わってくる。そんな二人のやりとりを黙って見ている忠司、答えを見てしまったからネタバレしてしまわないよう彼なりの気使いだ。
「アタシがニリポンのチャンネルの古参リスナーだってことは言ったわよね?」
「そういえばそんなこと言ってましたね。でもニリポンに関する情報はネットで検索すれば出ますからアドバンテージにはなりませんよ、現に容疑者達とのトラブルも"噂"としてネットの掲示板なんかに書かれていましたから。」
「この事件の動機はニリポンじゃないのよ。もう一人いたでしょう、名前が出てきた関係者が。」
「田島宮淳史のことすか?」
「そっちじゃないわ、寿々林さんの方よ。この事件の動機は彼女が原因と言っていいわ、そしてその情報はネットでは掴めない。だから古参リスナーとしてそのことを把握しているアタシが有利なのよ…試しに調べてごらんなさい。」
のり子の言う通り寿々林鈴についてはほとんどネットで出てこない、一緒に活動していた頃チラッと動画に映った切り抜き画像が出るくらいだ。
「ホントですね。寿々林さんについての情報は、ネット検索でもほとんど得られない。」
「でしょ?そのチャンネルのメインはニリポンであり寿々林さんはあくまでスタッフ、一般人という扱いだからニリポンも積極的に動画に映すことはしなかった。そして彼女は一昨年いっぱいでニリポンの編集スタッフを辞めている…死んでしまったからよ。」
ガチャっとドアが開いて警部が入ってきた、いつの間にか10時になっていた。
いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
※5/7 更新分です
※筆者は他にも書いているものがあり、更新がない場合は他の作品を更新している可能性があります。〇日更新分ですを目安にしてくださると助かります。