14章 生配信中の殺人事件-19
「どうだね?容疑者達の証言は一通り確認したわけだが、何か分かったかね?」
問いかける警部に、順番に答える忠司と雅樹。
「俺はもう少し考える時間がほしいですね…。」
「オレはなーんか引っかかるんですよね、漠然とした違和感っていうか…。」
頭を捻って考える男性陣3人をよそに、のり子は羊羹をつまみながら悠々とした態度である。どうやらそれぞれの証言を調べ、自分の推理に確証を得たらしい。
「もう、情けないわね~。アタシはそれぞれの証言で見抜いたわよ。このまま皆の様子を見てても良いんだけど性格悪いと思われそうだから、じゃあヒントを。」
「このケースはまず消去法を使うといいわよ、それで犯人を2人に絞る。そしてもう1つ、警察も重要視している黒い袖口の毒を入れた人物。これも証言をよく精査すればきちんと割り出せるわ、身体検査・持ち物検査をごまかした方法もね。」
そんなのり子の言葉に余計頭を抱える忠司。
「俺はなんだか余計分からなくなってきたぞ…。」
「たぶん雅樹くんの方が得意かもね、まぁ後から意見を修正したと思われても嫌だからアタシの推理は…そうね。このパソコンのメモ帳にでも打ち込んでおくから、ギブの人は開いてみて。…ってここまで自信満々で、間違っていたらシャレにならないんだけどね。」
そういうとのり子は忠司がいつも使っているパソコンの前に座りカタカタと打ち始めた。忠司ほどではないが何気にタイピングが早い。
「なんで急にのり子さんがパソコンなんて…あ、まさか!」
そう言って雅樹が時計を見ると、もう19時を過ぎていた。のり子は推理の打ち込みを終わらせたらさっさと帰りたいのだろう、手書きだと時間がかかるから時短できるパソコンを使ったのだ。
「お察しの通りよ、それにアタシは今日の午前中ベビーシッターしてきたんですからね。疲れてるのよ…これでヨシっと。」
のり子は自分の推理を打ち込むと、最後に自分のスマホで写メを取った。雅樹辺りがイタズラしないよう念には念を入れているのだ。
「のり子くん、私には教えてくれてもいいんじゃないか?」
警部がそう言うがのり子はチッチッチッと人差し指を立てて左右に指振りする。
「まぁ明日解答編にしましょうか、事件概要を聞いたときどうしてアタシが有利だと思ったのかの理由も合わせて説明するわ。じゃあ警部さんも帰るでしょ?駅までボディーガードが一緒に歩いてくれると心強いわ。」
遠回しな言い方だが要するに自分を送れと言っているのだ、警部に対して。じゃあ帰るか、とお茶と羊羹を全部食べた警部が腰を上げた。
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