2章 行き過ぎた好意は困りもの-3
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/9/16 PM15:30
ただいまー、男性2名が事務所に帰ってきた
「ちょっと遅いわよ、遅くても15時って言ってたでしょ?依頼人待たせたら失礼じゃない!」
頭からツノが生えそうな勢いでのり子詰め寄ると、雅樹がまぁまぁとなだめる。
「仕方ないじゃないですか、依頼人が来ているっていうから忠司さんと銭湯入ってから帰ってきたんですよ。汗臭いまま応対する方が失礼でしょ?引っ越しの手伝いって依頼だったから着替えはあらかじめ持って行ってましたし。ねぇ忠司さん?」
ほれ、と忠司がのり子にお茶菓子代わりなのか和菓子の詰め合わせを渡す。
「そんなの良いから、ほら来て。あちらが今回の依頼人の白川ゆりさん。」
よろしくお願いします、と頭を下げる白川。
「依頼概要はすでにスマホで送ってあるけど、八重島さんに頼みたいそうよ。じゃあ白川さん、八重島さんと本人同士で打ち合わせしてくださいね。この人さっき教えた通りアドリブ苦手だから、ある程度設定を練っておくのおススメしますわ。」
そういうと、新しいお茶を置きさっきの和菓子を開けながら笑顔で言った。
「チェッ彼氏のフリとか合コンとか、ほとんど忠司さん行きなんですよねー。世の中顔なのかよバカヤロー。」
ふてくされる雅樹にのり子が言う。
「そんなことより、失くさない内に今日の引っ越し依頼の書類まとめといてよねー。」
ヘイヘイ、と気だるそうに返事すると忠司と自分の2つのバッグを持って事務所の奥に下がった。
一方白川と忠司はお互い自己紹介し、基礎的な契約条件を確認したあと計画に入る。
「自分、雅樹と違ってあんまりおしゃべりじゃないですけど。」
そういう忠司に白川が答える。
「大丈夫です、私と仕事で知り合ったばかりで合コンなども慣れてないということにしておけば通せると思います。それより合コンのときに町出さんにいくつか探りを入れていただきたいんです。なぜそんなに私にアピールしてくるのか、とか…。男性同士の方が気軽に聞けると思うので。」
「そんなにしつこいんですか?彼のアピールは。」
忠司が質問すると困惑するように白川が答える。
「えぇ…2か月前に『夏のボーナスを資産運用したい』と私の会社に相談に来て知り合ったんです。偶然私が担当になったんですが、結構頻繁に取引情報の確認に来るんですよ。日中でも関係なし、多いときは週に4回も。それで私、なんだか怖くなってきて。同僚に相談しても『そんなに頻繁に来る人珍しいよ~きっとアンタのこと好きなんだよ』とか冷やかされちゃって。」
「確かに週4回は少し多い気もしますね。あなたが一人で担当されてるんですか?」
忠司は白川に質問しながら情報を集めていく。
「いえ私と男性社員の2人です。私が基本的な契約の説明と証券情報の担当、もう一人の社員が契約時や解約時の立会いです。実質その町出さんは情報確認に来るばかりなので、私が担当しているような感じなんです。うちの会社人手不足のところを無理矢理まわしてるので、担当変更も言い出しづらくって…。」
「そうですか。では町出さんにも話を聞いてみて、あまりあなたに固執しているようなら自分が恋人のフリをしつつ逆上しないようやんわりと説得してみます。そういうことで、よろしいでしょうか?」
確認するように忠司が言うと、よろしくお願いしますと頭を下げて白川は去っていった。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後を改行)
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