14章 生配信中の殺人事件-企画担当者の証言4
「では当日の服装と所持品についてもう一度確認させてください。」
「ウチは確か…。上はブラウンの長袖ヒートテックにピンクのフリースジャケットを重ねて、下は白のロングパンツだったかな。もちろん風をシャットアウトするやつ、年末ごっつ寒かったからな。あとブルーと白のストライプ柄のマフラーと、耳まで隠れる黒いニット帽。」
「黒のニット帽ですか…犯人の袖口も黒かったんですよね確か。」
「でもそれじゃごまかせんよな?両手をニット帽で黒くするには2つ必要だろうし、てっぺんに穴でも開けないと腕が通せないやん。しかも腕が通せるほどの穴が開いたニット帽なんか被ってたら誰かツッコむやろ。」
「そうですね、エレベーターの監視カメラを見るにあなたはスタジオを出入りするとき必ずそのマフラーもニット帽も身につけていたみたいですし。」
「当たり前やん、ニュースでもやってたやろ。『年末に寒波到来!』って。おかげで焼きそば探して歩き回ってる間ずーっと寒かったわ。暖かいコーンスープ、自販機で3つも買ったわ。」
「では次に当日の所持品の方を…この3つの写真のどれが豊島さんの荷物ですか?」
「これやで、この白いナップザック。」
「ポケットの物と合わせると…。スマホ・財布・鍵が2つ・ハンカチ・黄色いフェイスタオル・ティッシュ・充電器・筆記用具・手帳が2冊・メイクポーチ・ポケット辞書・飲料水・板チョコが2枚・ホッカイロが3つ。」
「それやな。」
「この中で気になるのは、まずポケット辞書。」
「ウチな、こう見えてもアウトドア派やねん。ピクニックとか好きでな、それ植物辞典や。地域ごとに咲いている花の傾向とかも載っていて便利やねん。ちょっと待ってな、スマホのサイトで…。ホラこの辞書、表紙一緒やろ。暇なときに目通すのに持ち歩いてんねん、スマホばっか見てたら目悪くなるし?」
「確かに中身は植物辞典のようですね。では板チョコというのは?」
「ウチはいつもお菓子持ち歩いてるねん、別に変ちゃうやろ?クッキーだったりマシュマロだったり気分で変えるけど。ニリポンも甘いの好きでな、マネージャーや新人ちゃんにも分けられるようにいつも何個か持ってんねん。優しいやろ?」
「そうですね…本日聞きたいことは以上ですが、何かお気づきの点などあればいつでも我々にご相談ください。」
「あ、1つだけええか?」
「なんでしょう?」
「やっぱウチらの中に犯人がおるん?」
「それはまだわかりませんが、監視カメラの映像や犯人の行動を踏まえると外部犯の線は限りなく低いですね。ゼロではないのでそちらも視野に入れて捜査しておりますが。」
「怖いな~まったく、ほなね。」
これが豊島の事情聴取での様子であった。
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