14章 生配信中の殺人事件-15
「スタッフの扱いが雑っていうのは、あながち間違いじゃないみたいですよ。ほら別の掲示板には去年までたまに出演していた編集スタッフの寿々林鈴が、最近出演しないからニリポンが嫌で辞めたんじゃないかと噂が出てるみたいです。」
「それはアタシも把握しているわよ、だからその真鍋って子が今年から新人編集者として新しく入っているのかなって。鈴って子がいた頃の方が楽しかったってコメントは今でも多くて、辞めちゃったの惜しいなって大半の視聴者は思ってるはずよ。」
「なんにせよ被害者が生配信中に殺されている点から見ても、ネット上の噂はまんざらでもなさそうだな。現にスタッフの交代もあったようだし、その辺が動機に繋がるかどうかは警部に詳しく聞いてみよう。」
17:45 事務所
もう一度来るよ、の言葉通り片手にかばんを持った警部が現れた。彼は毎回訪れる度に律義に名前を書く。もちろん何かあっても一応言い訳できるよう、私的な用事で利用していることにしている。その間にのり子が警部用にお茶を淹れるのがいつものパターンである。
「うーん、やっぱりのり子君が淹れたお茶の方がおいしいな。」
来客用ソファに座ってお茶を飲んだ警部の素直な心の声だ、それを聞いてごきげんなのり子と不貞腐れる雅樹の態度が対照的である。
「警部~、のり子さんってばお得意の直感で犯人が分かったみたいですよー。」
文字通りの棒読みで、仕返しとばかりに警部に告げ口する雅樹。対するのり子はそんな雅樹の行動などお見通しだったかのように3人分のコーヒーを淹れている。
「直感が根拠というのが少々気になるが、それは本当かのり子くん?捜査の参考にぜひ聞いてみたいものだ。実のところ、黒い服装の人物の謎が解けなくてな。」
応接スペースの警部の向かい側にのり子が3人分のコーヒーを置くと、自然と忠司と雅樹がソファに座る。のり子は自分用のお茶菓子を取りにもう一度キッチンスペースへ向かいながら答える。
「ええ、もちろんいいですよ。でも雅樹くんが言ったようにアタシの考えはあくまで直感の範囲なんです。だから確証を得るためにも、まず容疑者達の動機になりそうな情報をいただけませんか?あと念のため、現場になったスタジオの他の階についても教えていただきたいです。」
そう言いながらおいしそうな個包装の水ようかんを、警部と自分の前に一つずつ置くのり子。雅樹が手を出そうとしたが、アンタはダイエット中でしょとのり子の鋭い一声を受け苦笑いでごまかし手を引っ込めた。
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