14章 生配信中の殺人事件-12
「随分な自信だな、川島田。」
忠司が声をかけるとまぁね、と軽い返事をするのり子。そんなのり子に雅樹が不満そうだ。
「オレらが普段ニリポンの動画見てないからその分アドバンテージがあるとか?言っておきますけどニリポンのクセとかの情報ならちょっとネットで検索したら出てきますからね、配信者としてかなりのチャンネル登録者数みたいですし!」
ムキになる雅樹をなだめつつ、どういうことか俺にも教えてくれないかと頼む忠司。
「そうねぇ…ま、アタシが有利と言っても"ニリポンの関係者が犯人なら"だけど。外部犯だったらさすがにお手上げよ?」
「さっきも説明した通り、それはないだろうな。監視カメラの死角を利用したとしても、そもそも監視カメラの位置とその死角を事前に確認しておかなければ無理だ。だから容疑者は基本的にエレベーター前のカメラに映ったニリポンの関係者だろう、サプリの件もあるし。」
忠司が説明する。
「そう、それならなぜアタシが有利なのかヒントを上げるわ。八重島さんと雅樹くんがやっていなくて、アタシがやってることがあるからよ。」
「えーのり子さんのケチ!そんなんじゃなく答えを教えてくださいよー。」
スネる雅樹と対照的に、得意気なのり子は答える。
「甘いわね、だいたいそれじゃおもしろくないでしょ。それにこのことを教えたら、事件はスムーズに解決するはずよ。ついでにアタシの考えが正しければ殺害方法も、袖口が黒いロングTシャツのような服装の人物が関係者にいないことも説明がつくのよ。」
のり子の説明でますます混乱してくる忠司と雅樹。とくに忠司は情報をじっくり組み立てたいタイプなので、矢継ぎ早にヒントや謎を繰り出してくるのり子のやり口は苦手なのだ。
雅樹がふと引っかかったことを尋ねる。
「殺害方法も今回の事件の謎なんですか?」
「そうよ、だって考えてみなさいよ。殺したいだけなら包丁で刺すとか、もっと手っ取り早いやり方があるでしょ?それをわざわざカプセルに毒を仕込んで、楽屋に忍び込んで…やたら手が込んでると思わない?現場には監視カメラだって守衛だっているんだから、関係者は当然容疑者として疑われやすくなるのよ?」
考えてみればそうである。殺したいだけならカメラのない野外にでも呼び出して襲って殺し、アリバイ工作なり偽の証拠をでっちあげるなりしておけばいいのだ。
裏を返せば犯人の行動にはそこまでの理由がある、のり子はそう言いたいのだろう。肝心ののり子本人は猫を撫でるかのようにバスタオルをさすり続けていた。
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
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※4/16 更新分です




