14章 生配信中の殺人事件-6
「食事中の中毒死と聞いたら食べ物に毒物が混入されていたと考えたくなるのは分かる、実際警察も最初はそう睨んでいたからな。だが鑑識の調べで箸からそれぞれのそばや薬味まで調べてもらったが毒物の付着はなかった。」
警部の説明に雅樹が相槌を打ちつつ答える。
「確かに、いわゆる思い込みってやつですね。でもそれならなぜ毒殺なのでしょう?」
「被害者は体型がちょっとぽっちゃりしているだろう、それを気にして食事前に飲むことで脂肪の吸収を抑える"脂肪サヨナーラ"というサプリメントを飲んでいたそうなんだ。」
雅樹がそういえば、という顔をしながら答える。
「それ、今女性の間で話題のサプリですよ。のり子さんとその話題になったとき、なんだか某ネコ型ロボットが出しそうな名前だよねって妙に盛り上がりましたから。」
警部が資料写真を見せると、雅樹がこれですよこれと指をさす。どうやら脂肪と吸着する有効成分を配合しており、体に吸収されるのを妨害しつつそのまま排泄の方へ促してくれるらしい。なんだか説明だけを読むと魔法の痩せ薬のようである。
「オレもこれ飲んだら、好きなもの食べまくっても痩せますかね?」
「それで本当に痩せるなら、今頃みんなスリムだな。」
意気込む雅樹に対し冷静に突っ込む忠司、その通りである。
警部が続ける。
「検死の結果、被害者がこのサプリメントを飲んでいたのは間違いない。被害者が亡くなっていた撮影場所でもカメラの死角となる位置にこのサプリメントが置かれていたし、胃の内容物の資料にこのサプリメントに使われているカプセルがでてきた。だがサプリメントの成分は検出されていない、一度カプセルを開けて中身を毒に入れ替えたものを被害者に飲ませたんだろう。」
「なるほど。食事前に必ずサプリを飲むという被害者の習性を知っていれば、確実に毒を飲ませることができますね。わざわざカメラの死角に置くんだから、視聴者には内緒だったというわけですか。」
「そうだ。つまり容疑者は彼女がそのサプリを必ず飲むことを知っている、近しい人間に絞られるわけだ。」
「そういえば動画の冒頭で『撮影を手伝ってくれている人が何人か来てる』とか言っていましたね、じゃあ容疑者はその人達…。」
「そういえば、なんだか前にもこんな事件があったような…。」
「飛行機のやつだな、あれは毒ではなかったが。」
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
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