2章 行き過ぎた好意は困りもの-1
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
2022/9/9 AM11時。
事務所のインターホンがなり、川島田のり子が応対する。
「はい、どちら様でしょう?」
「あの私、チラシを見てお願いがあってきたのですが…。」
女性の声だ、どうぞーと通すのり子。
失礼しますと入ってきたのは20台半ばくらいで、綺麗なロングの黒髪に白のロングワンピースの清楚な雰囲気の女性だ。入り口の名簿に名前を記入してもらう。"白川ゆり"というらしい。
他に客もいないので早速来客用のソファに通し、熱いから気を付けてとお茶を出すのり子。
「ありがとうございます、あの…なんでも屋さんってなんでもやってくれるんでしょうか?」
白川は不安そうに口を開く。
「まぁそうね、でも内容によりますよ?殺人とか強盗とか、そういうのは無理ね。子供やペットの面倒を見てほしいとか合コンの穴埋めとか、そんな感じです。とりあえず何がご希望か仰っていただくとはできますか?」冗談を交えつつ、
やわらかい笑顔で対応するのり子、普段男性陣には見せない顔である。
「あの、男性スタッフの方はいるんですよね?」
と白川が聞くともちろんよ、とのり子が返答。今日は朝から引っ越しの荷造りを手伝いってほしいという依頼があったため、男2人は出払っている。それを説明するのり子。
「あの…それじゃその男性スタッフの方に、一日私の彼氏のフリをしてほしいんです。」
と言いにくそうに打ち明ける白川。一方のり子はなんだそんなことか、と拍子抜けだ。
「大丈夫ですよ、そういう依頼けっこうあるんです。」
ニッコリしながらのり子が微笑むと白川は承諾してもらってホッとした様子である。詳しく話してもらうとこういう事情らしい。
・白川ゆり、25歳女性。証券サービス系会社に勤めている。
・最近、会社にくる顧客の24歳男性の"町出啓介"からしつこくアピールされて困っている。会社の上司に相談しても恋愛は当人同士の問題だし、どちらも独身同士で不倫や浮気にも当たらないので強くも言えないとのこと。
・一度彼氏がいるので、と言ったら引き下がった。しかし最近どうやらそれが嘘だとバレたのかまたアピールが始まった。
・Aから週末の16日(金)に合コンへ来ないかと誘われたので、あえて引き受けた。そこで自分に実際に彼氏がいることを実際目撃させれば諦めてくれるだろうというのが狙い。
・レンタル彼氏などではホームページなどを見られるとバレてしまうため、何でも屋に来た。
パソコンは苦手なため手書きであらかた概要を書き、こういう感じで間違いないですね?と確認するとハイと頷く白川。
「そうね、ここらでキッパリ諦めてもらわないとストーカー化されたりしたら怖いものね。メンバー二人のスケジュールもあるから本人たちに確認してみますね。」
のり子は同じ女性としてちょっと同情しながら言った。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後を改行)
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