13章 事件と事故-46
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
「昔から、自白を強要したり厳しい取り締まりを受けた人が精神的に追い詰められて…とかっていうニュースは聞きますよね。」
「そうだな。ひと昔前までは、悪いことしたやつには厳しい事情聴取をしてもいいという謎の風潮があったな。だがそれで冤罪になったり精神を病んで自傷行為に走る人がいるということが明らかになり、昨今ではそういう事情聴取の雰囲気にも気を配られるようになってはいるな。」
「今時は小型のボイスレコーダーとかオンラインショップで買えたりするものね。そういうのを使って事情聴取で自白強要されているところを録音してメディアに暴露、なんてニュースもあったわね。」
「そもそも被疑者というだけではまだ疑いが掛かっているだけで、犯人と決まってるわけじゃない。それに悪者相手なら何をしてもいいのか、と言ったらそうではないしな。最近はDNA鑑定の精度向上や監視カメラの普及などもあり、警察側も冤罪にならないよう一層気を付けているみたいだが。」
「犯人と背格好や年齢が似てるってだけで冤罪にされた人も過去にはいるようだし、本人にしてみたらとんでもないわよね。何もしてないのに悪者扱いされて、周りからも白い目で見られて。晴れて冤罪が証明されても、なかなか信じてもらえなかったり白い目で見続ける人もいるっていうから。」
夫が自殺したのは警察により公式発表された。ただし自殺の詳細などは他に真似る者も出るかもしれない、といった懸念があり簡潔なものとなった。そのときの見張り番の証言と通路に設置された監視カメラの映像などから、夫が自殺したのは確定だった。
BとCはその後殺人の実行役とその共犯で殺人罪が確定し、懲役が決まった。そして2人の話から、関係者や警察は驚くことになる。『あの男の犯罪は他にもある』というのだ。
実は以前会社の敷地にあったプレハブ小屋が火事になって火災保険を受け取ったとき、夫が妙に済ましていたというのだ。まるで火事になるのを知っていたかのように、そしてどこか慣れた風な雰囲気だったことに。
BとCはそのときに直感したという、この男は前もって自分で念入りに計画を練っていたか、あるいは…。
ただそれ以上のことは知らないの一点張りだった。その話をするときの2人はどちらも狼狽した様子を隠しきれていなかった、それを警察は不審に思った。こいつらはまだ何か隠している?
それでも何度聞いても絶対に口を割らなかった、まるで言ってしまったら釈放されたあとの未来が閉ざされることを予期しているかのように。
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※2/28 更新分です。