13章 事件と事故-43
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
「あと許せないのがアレよ、いたずらとか好奇心で動物殺しちゃう人!」
「最近もありましたね、猫のバラバラ死体でしたっけ?」
「そうよ!餌で釣って近づいて捕まえて…。餌をもらって喜んで着いてきた動物がかわいそうじゃない。ひどいことするわよね、できることならアタシが同じ目に合わせてやりたいわ!」
「のり子さん、過激派ですね。気持ちは分かりますけど。」
「大体動機が『やってみたかった』とかなんだよな。そういう意欲をもっと勉強して解剖医になろうとか、獣医になって助ける方に役立てようとかそっちに向けばいいのだが…。悲しいことに、ペットや動物は法律上"物"扱いだからな。器物損害や動物愛護法違反で裁くのが現状だ。」
「生き物に優しくできないなんて、サイテーよ!」
警察は殺害を実行したBとそれに協力したCが続けて自白したことで、夫の逮捕も目前だと思っていた。夫からの依頼殺人でもなければ、送り迎えの際に少し顔を合わせるだけのBとCには殺す動機が見つからないからであった。また二人とも金銭的な面で夫に負い目があることもその線での疑いを強める要因だった。
だが夫は警察の予想に反し事情聴取に呼ばれても、BやCと違って一貫して否定していた。しかも必死に否定していたBやCとは違い、余裕の態度で。夫の言い分はこうだった。
「仮に俺が妻の殺害を依頼したとして、その証拠はあるのか?録音でもしてあるのか?」
たしかに夫が妻を殺すように命令した録音テープでもあれば、殺人を依頼した何よりの証拠だ。だが裏を返せばそんなものがない限り、明確に命令したという証拠もなかった。
しかし夫の余裕の態度が、逆に警察側に確信を与えた。BとCが自白し、しかもその自白内容がほとんど一致しているのだ。そんな状況で呼び出されているのに夫が余裕の態度を取っているのが、警察には返って怪しく見えたのである。警察はそこで妻の母親が言っていた、あることを質問した。
なぜ深夜に首吊り遺体を発見したのに、通報したのは早朝なんですか?あまりにも時間が空きすぎていて不自然だ。警察とご遺族の全員が納得のいく説明を、あなたはできますか?
そう、遺体発見から通報まで3時間ほど経過していたのだ。いくら首吊り遺体を見つけ動転し、一人で降ろそうと奮闘したにしても長すぎる。また降ろそうとしたならマフラーをハサミなどで切断すればよかったはずだ、わざと首吊り状態のまま警察に発見させたのは自殺を印象付けたかったからだと警察は踏んでいた。その空白の時間は証拠の隠滅などに費やしていたのだろう。
夫は余裕の態度を一転、下を向いたまま黙った。そのまま拘留所に入れられた。
いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。
※2/25 更新分です。