13章 事件と事故-41
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
「単独犯と複数犯だったら、どっちが完全犯罪に向いてるんですか?」
「どちらとも言い難いな。単独犯は完璧主義者なら手ごわいだろうが、『完璧な人間はいない』と言うように必ずどこかに痕跡が残ってしまうだろう。どちらかと言えば目撃者が少なかったり、捜査をうまくミスリードできるかと言った運の要素が少なからず入るだろうな。」
「時効目前に逮捕されたっていう有名な事件も、警察はここを捜査するだろうってところに偽の証拠品置いたりしてうまく警察の目を欺き続けたっていうのがあったわね。」
「複数犯の場合は、うまく口裏を合わせられていると手ごわいだろう。複数人で同じアリバイ証言をしたりすれば警察側にも強い印象を与えることができる。だがデメリットとしては誰か一人でも証拠から足がついたり自白した場合、芋づる式に他の連中も捕まるという点だ。どうせ捕まるなら一緒に悪いことしたアイツも…という心理が働くわけだ。『共犯の名前を出せばお前の罪だけは多少軽くしてやるぞ』なんて言われたらなおのことだな。仲間意識や絆、と言えば聞こえは良いが人間最後はやっぱり自分自身がかわいいもんさ。」
さらに警察はCに事情帳を続けた。編み棒先の血痕はやはり妻を襲ったときに抵抗されたときのもので、そのとき腕の内側を切ってしまったのだ。恐らくそれを力任せに払いのけたときにタンスの裏側に入ってしまったのだろう。
Cの証言では、夫が飲み屋でアリバイを作っている間にBと二人で自宅を訪ねた。前日にも夫を送ってきていたから、足跡などがついていても別に不審ではなかった。妻はそれまで編み物をしていたのかマフラーを片手に玄関先でBとCを迎えたが夫の姿がなく、また二人が押し入るように家に入ってきたことに危機感を感じとっさに通報しようと自分の部屋に向かった。そこへBとCが追ってきて自室で殺されてしまったのだった。
Cが妻を抑えこみ、Bが妻の首を絞めたという。だがここで小さなミスが生じた、夫からは自殺に見えるように首の前のほうだけ絞めろと言われたが横の方まで少し柵条痕が残ってしまった。またCは自分を傷つけた編み棒を回収して家を出ようとしたが、1本が見つからなかった。
だがぐずぐずしていられない、すぐに吊り下げなくては絞め跡が2本残ったりして他殺だとバレてしまう。Cは妻の遺体を自殺に見えるように階段に吊るしたあとで探そうと思い、Bと二人で妻の遺体を階段に吊るした。だがもう無我夢中で殺人計画をなぞることしか頭になく、結局編み棒のことを忘れたまま帰宅してしまった。
実際Cは、しばらく警察がすぐ編み棒を見つけ自分を捕まえるのではないかと怯えていたいう。しかし数度の事情聴取でもそのことを聞かれないので、きっと夫が見つけて処分してくれたのだと思い混んでいたという。怪しまれないよう、夫やBとは最低限の連絡しか取っていなかったのだ。
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※2/23 更新分です。