13章 事件と事故-39
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
「人を殺すように命令するのも、もちろんダメですよね?」
「それは殺人教唆という行為だな、殺すように仕向けることを指している。直接殺せと命令しなくても、『~が死んでくれたらなぁ』などとほのめかして第3者がそれを真に受けて殺人を犯してしまった場合も該当したりする。罪は殺人を実行した者と同等か、計画性や残忍性などを考慮されればそれ以上ということもあり得る。」
「そういう計画を立てられる頭の良い人は、もっと世のため人のためにその頭脳を使ってほしいものよね。」
「毎年何件かありますよね、そういう事件。計画役の○○と実行役の□□を逮捕~みたいな。」
「金で雇った相手に、自分の手は汚さずターゲットを殺させるというやつだな。金に目がくらんで殺人計画に乗る方も乗る方だが…。」
「お金は本当に怖いわね、生きていく上で絶対に必要だからこそ余計に。」
「『金の切れ目が縁の切れ目』など、お金にまつわることわざや教訓も多いからな。それだけ今も昔も金の魔力は人を狂わせるんだろうな。」
妻の発言を受けて警察が編み棒を探したところ、妻の部屋にあるタンスの後ろから1本だけ見つかった。そこはわずかな隙間しか空いておらず、タンスを動かしてようやく様子が分かったくらいである。しかもマフラーは普通2本で編むのに、もう1本が見つからない。妻の母親によれば教えた時もその後一緒に編み物したときも、あの子は必ず2本使っていたと言った。もう1本はどこへ…?
また見つかった1本はほこりなどでひどく汚れていたが、確かに先のとがった方に血痕がついていた。よく見ると血痕と一緒に固まったほこりも見られる。どうやら編み棒についた血が乾く前にここに落ちてしまったようである。
さらに見つけたのは深夜なのに、通報したのはなぜ早朝なのかと警官が夫に問いただしたが彼は口を閉じるばかりだった。この夫の反応から、警察側はこの事件が依頼殺人であるという線を確信した。
結局家中を捜索したがもう片方の編み棒が見つかることはなく、夫も知らないの1点張りだった。また司法解剖結果を見直しても妻の体には首の柵条痕と身体の圧迫痕以外に特別な外傷は見られなかった。警察はこの編み棒の血痕は妻を押さえつけた時、抵抗された際犯人がケガを負ったのではないか?そしてその犯人の血なのではないか?そう考えて早速鑑識に調べてもらうことになった。
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※2/21 更新分です。