13章 男と女の違い-33
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
「愛情表現と言えば、ホラよく言うじゃないですか。男は態度で示し、女は言葉を欲しがるってやつをよく聞きますよね。」
「男は好きだからそばにいるわけで一々好きだと伝える必要はないと思っている。だが女は逐一好きだ、愛していると言われたいというアレか。」
「あらいいじゃない。大体日本の男って"言わぬが花"みたいな謎の文化を持ち出すけど、ようはただ照れくさいだけでしょ。西欧の文化を見習ってほしいわよね、あっちはちゃんと言葉やスキンシップで愛を表現するのよ?羨ましいわ。」
「でも普段言わないからこそ、日本人男性の言葉には深みが出るんじゃないですか?チャラチャラと好きだの愛してるだの言う男こそ、女たらしなイメージもありますけどね。」
「う、確かにそうね…。」
「そうだな。良くも悪くも日本の文化だが、女性の方から"私はハッキリ言葉で言ってくれた方が分かりやすいし嬉しいわ"とアピールしておくのも大切かもな。」
ある日、妻は死んだ。
遺体が見つかったのは夫の自宅で、マフラーを使った首吊り自殺と見られた。2階の階段の手すりに細くロープのようにねじられたマフラーが結ばれており、そこに首をくくるようにして自死を図ったと見られた。
第一発見者は夫で、通報は明け方だった。夫は前日の21時頃から近所の居酒屋へ飲みに行っており、古くからの顧客Aと二人で飲んでいた。このことは店の人間も、そこに設置してある監視カメラにもバッチリ記録されており、2時頃まで飲んでいたようである。夫とAは今後の事業展開について語り合う内に話に熱が入り、つい酒が進んでしまったとのことだった。
夫は2度ほど、妻に帰りが遅くなるとメールをしたが返信が帰ってこなかったという。だが酔った夫の頭では、どうせ早めに寝てしまったんだろうくらいにしか思わなかった。その証言通り、妻の携帯電話に22時05分と23時15分に夫からのメールを受信しているのが確認されている。
そして酒を飲んでいなかったAが夫を送っていくと言い自分の車に乗せた。夫は歩いても10分の距離だからと断ったが、夜遅いしどうせ通り道だからと言われお言葉に甘えることにし送ってもらった。
Aは夫を送り届けると、そのまま車から降りることなく立ち去った。そして夫が自宅に入ると、やけにシーンとした雰囲気を感じたと言う。そして風呂に入ろうと2階の自室へ着替えを取りに行こうと階段の方へ向かい電気をつけ、妻の遺体に気づいたそうだ。
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