13章 事件と事故-28
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
「でもやっぱり迷宮入りする事件って、犯人の能力による部分が大きいと思うのよ。」
「そうだな、頭の回転が速かったり行動力に優れていたり…そういう能力は犯罪ではなくもっと人の役に立つようなことに使ってほしいものだが。」
「行動力に優れるタイプと言われて思いつくのは、全国逃げ回ったりする犯人ですかね?整形したり偽名を使ったり…。良心の呵責や警察に捕まるかもという恐怖におびえながら逃げ続けるくらいなら、いっそ出頭して罪を償う道を選ぶ方が楽な気もしますがね。」
「その犯罪者にとって捕まりたくない理由があるのかもね。幼い子供がいてできる限り成長を見守りたい、とか自分には逃げ切る自信があるとか。まれにいるサイコパスと呼ばれる人たちは、罪の意識なんて無いって聞くし…恐ろしいわね。」
「そのサイコパスって類の犯罪者は頭が良いと聞きますよ?」
その数日後、妻が美容院の休みの日。いつものように両親の家へ赴き代理買い物などを済ませて昼過ぎに自宅へ戻ると、地元の銀行員を名乗る男が訪ねて来ていた。用事を聞くと、夫の会社に融資している件で話があるという。妻は私ではよくわからないからと断って、週末に出直してもらうように頼むと銀行員の男は帰っていった。
その夜、夫にそのことを告げると明日自分で銀行へ行ってくるからとだけ返ってきた。またCから話を聞いたらしく、俺は浮気なんてこれっぽっちも考えてないからと笑って一蹴した。その様子から妻は夫に対する浮気疑惑を払拭することにした。ただ将来のことも考えて、もう少し夫婦の時間を取りたいことや節約の協力をお願いした。
この頃は秋も深まってくる頃だったが、妻は夫に自分で縫い上げた手袋をプレゼントした。夫はこれから寒くなるから、助かるよと喜んで受け取ってくれた。また次はマフラーを頼もうかなとリクエストももらった。確かにマフラーなら仕事・プライベートでも使えるし、ゴルフ中でも垂れた部分は上着の中に締まってしまうなどすれば邪魔にもならない。妻はさっそく、次の実家へ帰るタイミングで母親にマフラーの編み方を習おうと意気込んだ。
-そうよね、2~3か月様子を見ても浮気の証拠なんて一つも出てこなかったし。それにこんな片田舎で浮気しても、誰かの目について噂になって流れてくるわよね。客商売しているあの人の顔なんてみんな知っているわけだし。一つモヤモヤした不安が無くなってよかった、本格的に寒くなる前にマフラーの編み方をお母さんに習わなきゃ!
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※2/11 更新分です