13章 事件と事故-27
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
「忠司さんって元々は警察組織にいたんですよね?」
「それがどうした?」
「世の中には一口に事件と言っても、大きく二つに分かれるじゃないですか?すぐに解決する事件と、何年もかかってようやく解決する事件が。中には時効スレスレだったり、時効が切れて迷宮入り~なんてものも。なぜでしょうか?」
「よく言われるのは、"駆けつけた警官の初動"だな。特に不慣れな警官だと現場の状態保存をおろそかにしたり、警察組織へ伝えるべきことを見落としたりしてしまうことが多い。よくあるだろう、普段平和な村で起きた事件が迷宮入りしてしまう…そんな事件が。」
「よく刑事ドラマなんかで『全員動くな!鑑識が写真を撮るまで現場のものに触るのもダメだ』なんてセリフがあるけど、あれって結構大切なことなのね。」
「そうだな。現場はいろんな人に踏み荒らされるほど足跡なんかは判別しづらくなるし、証拠品などを紛失してしまうことにもつながる。迷宮入りした事件の多くは初動捜査ミスなのではないか…と言う人もいるほどだ。」
いくら洗濯物や夫の仕事カバン、車の中を覗こうにもそれらしい証拠は出てこない。スマートフォンを除くにはパスワードが必要だ、仕事でも使っているから情報セキュリティ上仕方ないのだろうが。
そこで妻は直接聞こうと思い立った。だが夫にではない、いつも一緒にゴルフや旅行に連れられていく部下のCだ。
案の定、とある週末いつものように酔った夫をCが送ってきた。玄関先で夫を引き取ると、そのまま風呂に入ると言ってフラフラと風呂場へ向かって行った。それじゃあ失礼しますと去ろうとするCを、妻は呼び止めた。玄関の扉を後ろ手に閉めながら、玄関先で小声で尋ねる。
最近あの人、帰るのが遅かったりどこかに泊まったりが多いのよ…Cさん何か知ってたら教えてほしいの。
だがCはキッパリと首を振った。そんな事実はありません、顧客にも女性のお客様は確かにいます。しかしあなたの旦那様は必ず私かもう一人の部下Bを一緒に連れて行き、女性と二人きりになることはありません。私が保証します。
あまりにもハッキリと言われたため、妻は返す言葉も出なかった。そのままCは頭を下げると、自分の車に乗り帰っていった。
-あの人に言われて隠している可能性もあるけれど、あんなにハッキリ言うんだから信用してもいいのかしら?それにいくらごまかしてるにしても、これだけ何も出てこないのはやっぱり浮気はしてないってこと?じゃああの頻繁な旅行や外泊は、いったい何のためかしら…?
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※2/10更新分です