1章 アパレル女性 絞殺事件-14
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
その後、滝美野あずさは以下のことを洗いざらい全てを話したそうである。
・姫田のことは、心の底から憎かった。職場ではイビられ、しかも山上を奪っていった。相当ショックだった、職場いじめだけでなく、山上まで奪っていくのかと。しかし滝美野本人は噂でしか知らなかった。姫田も一応悟られないように配慮はしていたのだろうか。
・だが事件当日、雨が降る前にとコンビニから帰ってきたときに滝美野は見てしまった。山上が姫田の部屋から出てくるのを。山上を奪ったという噂は本当だったんだ、あの女だけは許せない。そう思いカーッとなってしまった。
・インターホンを鳴らし、自分だと分かると姫田は無防備にドアを開けた。話があります、というと姫田も何か察したのだろう、じゃあ中へ入ってと背中を向けた。今だ!と思い襲い掛かった…。
・姫田の玄関にあったビニール紐を伸ばし、両手に構え首に巻き付けた。夢中だった、私の何もかもを壊していくこの女を、今こそ私の手で壊してやる。そう思った。
・ハッと我に返ったとき、目の前に姫田が倒れていた。自分のポケットに偶然眉毛切り用の小さなハサミが入っていたのに気づき、素早くビニール紐を使った分だけ切った。そして自室に戻り通報した。
・最初は自首しようと思っていたらしい。しかし他の住人が特に悲鳴や物音を聞いておらず、さらに靴棚の上に男物のイヤリングがあったのを思い出し、自分から他の人に疑いを逸らすことができるかもしれない。そう思って咄嗟にウソをついてしまったという。
「なるほどね~、考えてみれば滝美野さんって結構かわいそうよね。職場でいじめられて、頼りにしてた上司も取られて…。」
のり子が忠司の横で呟く。
「そうだな、だからって人殺しはダメだけどな。」
会計と事件資料のまとめは、忠司の役割だ。手早くパソコンにタイピングしながらのり子に相槌を打つ。警部にお手柄だと褒められた雅樹は上機嫌で会話に入る。
「でものり子さんの女のカンってやつもなかなかですね、犯人こそ外れていたけど痴情のもつれって線は外れてなかったですし?」
「でしょ、女のカンは舐めちゃダメよ?それにしてもあの山上ってクズ男、なんとかできないかしら?ホント、許せないわ!」
のり子の山上への怒りは再燃している、そんなのり子に忠司はパソコンへの視線と打ち込みは維持ながら答える。
「山上さんな、今までは社員の人たちが噂程度で見て見ぬフリのいわゆる"公然の秘密"だったみたいだ。しかし今回の件でさすがに上層部の方にまで話が通ってしまい、会社に居づらくなって依頼退職したそうだ。」
「あらー、じゃあ名古屋へ帰ったらもう一つ修羅場が残ってるわね。奥さんに何で辞めたのってまず聞かれるでしょうから。ざまぁみなさいよ!」
のり子はなぜか自分のことのように喜んでいる。
忠司がボソッと呟く。
「それにしても、雅樹が途中からずーっとピースしてたのは笑ったけどな。」
雅樹が恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「しょうがないでしょ、緊張してたんだから。真犯人はお前だーなんて言って、間違えたら名誉棄損で訴えられかねないし。ドラマや映画の探偵のように堂々となんてできませんよ。」
3人合わせればなんとやら、こうしてH・M・Oはやっているのである。
1章を読んでいただき、まことにありがとうございました。日付や時間をアバウトに決めて書き始めてしまったため、設定が甘かったところは反省しております。一応今回の事件は「犯行は昼過ぎ」「警部がやってくるのはメンバーに連絡をしてから17時以降」「8月半ば~下旬」ら辺は書き始める前に予め設定してあったのですが。
まぁ設定の甘さは裏を返せば読者が自由に"考察"する余地があるということで、一つ見逃していただけたらと思います。"絞殺"だけに。(スミマセン)
感想・評価・ご意見など投稿していただけますと幸いです。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後を改行)