13章 事件と事故-15
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
「小説とかでは『○○殺人事件』ってタイトル多いですけど、現実では結構立証が難しいと言いますよね?」
「あぁ、特に一番肝心な"殺意"の部分がな。ありがちなのが、車のブレーキとアクセルを間違えてひき殺してしまったとする。この場合"人を殺そうとわざとアクセルを踏んだ"場合は殺人だが、"踏み間違えた"場合は過失運転致死となる。あくまでも、踏み間違えた結果殺してしまっただけで殺してやるって気はなかったというわけだ。」
「その手のニュースもよく見るわよね、標識見間違えて横断歩道に突っ込んだりとか…。痛ましい事故や事件が多いわよね、ホントに。」
「殺意は主に本人の自白が参考にされる。だが何回も執拗に刃物で刺したり必要以上の力で首を絞めたりしたことが発覚した場合、本人が否定しても殺意があったと見なされる場合がある。」
「逆説的に言えば殺す気もないのにしつこく攻撃する必要はないですもんね。」
翌朝、妻が夫に会社の火災のことを励まそうと話しかけると夫は存外平気そうだった。聞けば燃えてしまったプレハブ小屋には作ったときに保険をかけてあったのだという。パソコンなどの重要な備品も燃えてしまったため、せっかくだから最新式のを導入しようかな等と言ってインターネットで価格を調べたりし始めた。妻にはそれが空元気のようにも見え、かえって心配になった。
妻は美容室でそのことを同僚に相談すると、妻を心配させまいと夫は気丈に振舞っているのではないか?そう返ってきた。夫本人が大丈夫だと言っている以上、深入りせずにしばらく見守っていたほうがいいと妻は自分を納得させ、あまり火災のことには触れないよう心に決めた。
そんな妻の心配をよそに、夫は早速パソコンを始めとした備品を買い揃えた。嘆いていても仕事にならない、保険が入ったら補填すればいいさと本人はいたって前向きな姿勢のようだ。妻は今度こそ安心した、そしてあんまり私が口出ししない方がいいわねと思いそっとしておくことにした。
後日、保険会社の人が夫の仕事場に現れきちんと支払いが行われたという。
-今日は保険がきちんと支払われたって聞いて、一安心。私の美容室での収入もあって、少しは家計に余裕ができている。でも将来また子供ほしいし、自分の店を持つ夢だって叶えたいから油断しないで頑張って貯金しなければ。
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※1/29 更新分です。