13章 男と女の違い-6
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
「男女の違いと言えば、おもしろい話があるぞ。家の外でどんなことを言っているかで、その夫婦が上手くいっているか図ることができるそうだ。」
「何よそれ、八重島さん!もったいぶらないで教えてよ!」
「うん、男は"夫婦関係がうまく行っているときはよそで妻を褒める"傾向にあるそうだ。対して女は"夫婦関係がうまく行っているとよそで旦那を貶める"傾向にあるらしい。」
「男はともかく、なんで女はうまく行ってるのに悪口を言うのかしら?」
「女性同士のコミュニティのせいじゃないか?ほら、女同士は嫉妬を買いやすいから。露骨に私の家は夫婦円満ですと言うと反感を買うだろう、だから『うちの旦那は○○がダメでさ~やんなっちゃうわよね』という苦労話に持っていく。前の話でも出したように、女性は共感の生き物だからなおさらそちらの方がお互い大変ね~という方向で穏便に世間話ができる。」
「なるほどね~女同士は面倒くさいって昔からよく言ったもんよね。」
「逆に"自分の妻を貶める旦那"は夫婦関係がうまく行っていない可能性がある。"自分の旦那をやたらと褒める妻"も同じで、夫婦関係の危機を他人に悟られたくないためうまく行ってるよう装うことがあるようだ。あくまで可能性の話だがな。」
夫の帰りは客が増える度に遅くなっていった。従業員を雇っているとはいえ、小さな会社だ。会計処理や受注なども行わなければならない。夫の仕事が軌道に乗ったのは嬉しいことだが、反面妻は寂しかった。もう一人ほしいねって約束したのに。でもいい女っていうのは、縁の下の力持ち!ここでわがまま言って困らせたらダメよね…そう日記に綴っていた。
あるとき妻が働いている美容院に、とある居酒屋の女将が現れた。そこで女将がなにやら不穏なことを妻に耳打ちした。
「ねぇ、最近あなたの旦那さん。Aさんとよくウチに飲みに来るのよ。ホラAさんって、ここらじゃちょっと要注意人物っていうか…いろいろ良くない噂がある人じゃない?大丈夫かしらって思ってね、私の勘違いならいいんだけどさ。」
どうせいつものテレビの修理のお礼にごちそうでもしてもらったんですよ、よくあるみたいなんですよご飯いただいて帰ってくること。おかげで食費が浮くので助かりますけど…そう笑顔で言って受け流した妻だったが、一応夫に確認してみようと思った。
-思えばあの子は高いところが好きだった。物心ついたころに観覧車に乗せたことがあったけど、その時の景色によほど感動したのかしら?もう少し室外機の位置をズラしておくとか、ベランダには出るなと言い聞かせておくとか、今さらいくつかの対策を思いつくのが悔しい。
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