13章 男と女の違い-4
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
「男女で明確に違うと言われていて一番有名なのは、"相談"だな。」
「あら八重島さん、でもそれアタシも知ってるわよ?男は解決策を求め、女は共感を求めるってやつでしょ?」
「そうだ、だからこそカップルや夫婦喧嘩にもつながりやすい。例えば男性が『車がパンクしてしまって』と相談してきたとする。そのとき女性は共感重視だから『そうなんだ~』とか『大変だね~』と言うだろう。しかし男性としては共感されたところでパンクは直らないからイラッとするわけだな。」
「心当たりがあるような…そういうときはどうしたらいいのよ?」
「近くのガソリンスタンドに電話してあげるとか、"パンクを直すことに繋がる"行動をすると男性は喜ぶぞ。逆に女性からの『彼氏がひどくって~』という話を男性がされたとしよう。男性は解決策を出したがるから、安易にじゃあ別れればいいじゃんと言いがちだ。ところが女性は別れたいわけではない、"ただ私が大変だってことを分かってほしい"から愚痴ってきたわけだから、あの人は分かってくれないと解釈されイライラさせてしまう。」
「男同士、女同士で居心地がいいのはやっぱり理由があるってことよね。」
妻は日記を書き始めた。仕事中のとき同僚に忘れられないことがあってと相談したとき、同僚にそういうことはノートなんかに書くと心も整理されて良いよとアドバイスを受けたのだ。それは女児のことだったがさすがに全部は言えなかった。さっそく帰りに近くのコンビニで大学ノートを購入した。
妻は家に着くと、早速思いのたけをノートにぶつけた。女児のことは、安易に人に話せるものではない。だがノートにぶつける分には自分一人で解決できるではないか。他にもその日の出来事や、空いたスペースに献立なども書くようにした。
書き出した頃は転落事故のことばかり書いていたが、次第にその割合も少なくなっていった。同時に今日はどんな客とこんな会話をしたとか、次のお休みの日はビーフシチューをルゥを使わずに作ってみようとかそういう日常の内容が増えて行った。
だがそれでも、妻は毎朝と毎晩寝る前に女児の遺影に手を合わせるのを忘れなかった。その遺影の前には女児が好きだった風船の、膨らませる前のものがいつもパッケージに入ったまま置いてあった。
-物心ついたころから、あの子は風船が好きだった。ボンボン振り回したり、割れた音でびっくりして泣き出したり。懐かしいなぁ…。そういえばあの日の風船、あれもその前の週あの人が買ってきたものだっけ。俺があやすときはこれに頼ろうって。
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