13章 男と女の違い-2
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
「小さい頃に遊ぶおもちゃだって、違いが出るものですよね。そりゃ例外はあるかもしれないけど、大体男の子はヒーローの変身ベルトとか電車の模型とかで遊ぶじゃないですか?」
「そうね。言われてみればアタシはミカさん人形の着せ替えセットとか、ちょっと高い駄菓子についてるネックレスとか集めていたわね。今時は小さい女の子でも本当にお化粧できちゃうセットなんかも売ってるみたいよ?」
「最近は小学生でもマセてる子は化粧してたりしますからね、100均とかでも手軽に買えるしクオリティもなかなかよってオレの妹も言ってましたね。」
妻が疑問に思ったのは、我が子を失って半年もしない頃からだった。夫が新築で家を建てると言い、もう業者とも契約して工事が始まっていると言い出したのだ。
妻は直感した、きっとあの子の保険金を使ったんだと…同時に夫に不信感を抱くようになった。子供を失ってまだ私は傷心状態なのに、嬉しそうに新しい広い家に住めるぞと喜ぶ夫の姿がどうしても信じられなかった。所詮自分の子じゃないから?
実は亡くなった女児は妻の連れ子だったのだ。出会ったのは妻がテレビの修理を依頼し、自宅に当時作業員だった夫が訪問してきたときだった。二人はその後連絡先を交換しすぐ食事などに行く関係になった。そのとき妻は考えた、女児も懐いているし小学校に上がるこの子にも父親がいた方がいいだろう。そう思って事故の1年前に再婚したのだ。
思い返せばあの子の転落死は不審なところが多かった。事故が起こったのは冬だ、寒いからベランダへの窓は普通締まっているはずだ。それを6歳の子が開けたのか?そして偶然風船がベランダの手すりに絡まるのか?まるで足場にして登ってくださいと言わんばかりに、室外機の真横に置かれたバケツも怪しかった。
しかし警察が事故として処理したのだ、素人の私に何ができようか。そもそも夫があの子を殺したとして、どうやって?あの子が転落したとき、玄関には鍵がかかっていたし夫は確かにコンビニにいたことは監視カメラにもバッチリ映っている。もちろん室内からベランダに至るまでの足跡や指紋もすべて捜査されたが、不審な形跡は何一つ見られなかった。
妻はそこで考えるのをやめた。夫に対するモヤモヤとくすぶった想いは消えなかったが、警察が事故として処理した以上その不幸な顛末をただ信じようと思った。そして幼くして亡くなったかわいい我が子の冥福をただ祈るため、新築に喜ぶ夫を尻目に我が子の遺影へただ手を合わせた。
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