12章 あけましておめでとう-山本町子の証言
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
私は亡くなった松村さんとは親しくありません、なんなら今日初めて顔を合わせたくらいです。SNS上では彼と私の恋人の小田切がゴルフ関連のコミュニティに入っているから、お互いのページにアクセスしたことくらいはありますけど。
小田切が彼に金を借りていたことは知らなかったです、さっき警察の方から約400万円だと聞かされて驚いたくらいです。それに小田切が松村さんに借金していたところで、私には関係ないでしょ?結婚してるわけじゃないんだから。
あの高橋さんって人と私はそんなに親しくないんです、彼女とも今日初めて顔を合わせました。ゴルフのコミュニティにいることは知っていましたけど、もしかして彼女が…とはちょっと思いました。何がって、実は町子ちゃんから相談を受けていたんですよ。松村さんが浮気しているんじゃないかって…。あの高橋さんのことでしょうね、だっておかしいでしょ?昔の同級生だか知らないけど、それだけで一緒についてきます?しかも異性なのに。
松村さんの彼女、町子ちゃんとは仲良くしてますよ。昨日も先にお土産屋を買っておこうって町子ちゃんと買い物に行きましたし、今回せっかくだから4人で一緒に帰ろうって持ち出したのも私なんです。ただ私は彼と松村さん、私と町子ちゃんが隣同士ってことを想定して席を取ったんです。でも松村さんが私と小田切さんはカップルなんだから隣同士がいいだろうって気を使ってくれて。ほら新幹線の切符って座席は決まっているけど誰が座るという指定はないでしょ?
それで車内販売のカートを押して町子ちゃんが前から私たちの車両に入ってきたのが見えたので、私が声をかけました。通路側にいた小田切は自分のスマホでゲームをしていたみたいで。それでちょっと他愛もない話をして、お弁当と飲み物とおまんじゅうを頼みました。会話の内容ですか?いつまで帰ってるの、とか帰りの車両も町子ちゃんが車内販売を担当する車両に合わせるからねとかそんな感じでしたよ。
そのあと町子ちゃんがお釣りを間違えているからって後ろのデッキへ松村くんが追いかけて行って、私の彼と高橋さんがほぼ同時にトイレへ。私は自分の席にずっと座っていましたよ、他の客に聞くなりすればすぐ分かると思いますけど。だから私に彼を殺すことは無理ですよ、だって斜め前の席に座っていた私がどうやってお茶をすり替えるの?そんなことしたら嫌でも目立つでしょ。
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