1章 アパレル女性 絞殺事件-11
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
ヒソヒソ…。
「忠司さん、見てくださいよ。滝美野さんってあの女の人ですよね、スゲースタイルいいしあのドレスばっちり似合ってますね!あんな素敵な人を捨てるなんて山上もサイテーっすよね?」
「ねぇちょっとあの梶原さんって人、カッコよくない?ジャーニーズの東山田に似てるわ。あの人は絶対シロね!」
「まぁ予想はしていたが、キミたちは何しにきたんだ…」
オホン!警部が咳払いする。
「さぁて、今日は真相を明らかにしてくれるそうだが?」
雅樹が一歩前に出つつ、背筋を伸ばす。
「はい、警部さん。でもその前に鑑識の方に確認したいことがあります。玄関に置いてあった物のことで…鑑識の方、いますか?」
鑑識と少し話した雅樹はH・M・O2人の元に戻ると、はっきり言った。
「分かりました、姫田やよいさんを殺した犯人が!まず関係者の証言を洗っていきましょう、一人目は被害者の隣の部屋である202号室の伊達さん。あなたはオンラインゲームをやっていた、ヘッドホンをつけて。間違いないですね?」
「はい、先週買ったばかりのオンラインゲームでチームプレイに夢中になっていました。ヘッドホンはやよいさんからクレームが来るので、必ずつけています」
警部が口を挟む。
「まさか彼が犯人なのか?」
雅樹はすぐに返答する。
「いえ、彼はシロです。彼はチームプレイしていると言った、長時間操作しなければ必ず彼のネット仲間がメッセージなどでクレームするでしょうし、その辺はゲーム機本体やネットワークを捜査すればすぐに分かります。」
ネットゲームに疎いのり子や警部の頭の中はハテナマークばかりだ。チームプレイ?ネット仲間?雅樹が続ける。
「要するに、インターネットを介して友達と一緒に遊べるってことです。想像してみてください、それまで一緒に遊んでいたお友達がいきなり動かなくなったら、誰だって不審がるでしょ?それにネット上にはログという記録も残ります。もしウソならリスクが大きすぎる、そんな証言で事情聴取を無理矢理切り抜けても後で捜査されたらすぐバレてしまう。」
まぁそうだな、と警部がうなずくのを見て雅樹は続ける。
「次に、被害者の元恋人の梶原さん。彼も犯人ではありません。」
「なぜだね?犬と一緒にいた~ではアリバイにならんぞ。」
警部の質問に雅樹は答える。
「実際にペットを飼っている人はよくわかると思いますが、犬や猫の毛は飼い主の知らないうちに服などについてしまうんです。ホラ、今日の梶原さんの服にもいくつか白い毛が。つまり首を絞めようと体を近づけたときや襲った現場の玄関に、意図せず犬の毛が付着してしまうことが考えられます。元交際相手ということでお互いの部屋を行き来していたそうですがそれもフラれた先月までのことだから、さすがに1か月以上経って遺体のそばから犬の毛が見つかれば絶対に疑われます。それに警察や関係者が集まるってときにも犬の毛がついた服で来る人だ。彼が殺人犯なら、事前に計画を練りに練って犬の毛を落とさないように裸で殺人を犯すくらいのことをしないと無理でしょう。この代々木の住宅街で誰にも見られない、という条件つきでね。」
警部がボソッと言う。
「ふーむ、まぁスジは通っているか。残りは山上と滝美野さんだが…」
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後を改行)
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