11章 小さな二人の依頼人Ⅱ-5
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
22/12/16 19:25 雅樹 自宅
一方の雅樹も、のり子と同じ番組を見ていた。こちらはもともとゲーム好きなだけあり、のり子とは反対に食い入るようにテレビを見ている。
「人間でもAIに勝てるんだなぁ!次はチェスかぁ~。スマホやパソコンでもできる時代って便利だよなぁ。」
番組がちょうどCMに入ったところでふと、星野姉妹のおばあさんはスマホを使いこなしていることを思い出す。
(前回みたいに、またスマホの操作やアプリなんかと掛け合わせたなぞなぞだったりして?)
そう思い立ち、自分のスマホを取り出しフリック入力でいろいろ試してみる…。がダメである。そもそもこれは事務所で忠司がパソコンのかな入力と共に実験済みであった。
(ダメか。うーん、テーブルゲーム・おじいさん・スマホ…分かんねえよなぁ。)
テレビではCM明けと主にチェスを舞台に人間とAIの対決が始まっていた。
22/12/16 19:30 忠司 自宅
事務所から自宅へ帰ってきた忠司は、手馴れた手つきで晩御飯を用意すると食べ始めた。一人暮らし歴が長く、最初は暇つぶし程度に始めた料理だったが今では簡単な料理なら手際よく作れるくらいになっていた。しかし彼は揚げ物だけはしない。一人暮らしの揚げ物は、油の処理の方が面倒くさいことが分かっているからである。
今日は一人分のカレーを作って簡単なサラダと一緒にテーブルに並べ、食べながら考える。
(あの数字だけの暗号では成り立つわけがない。おばあさんがよほどイジワルでない限り、姉妹になにかしらヒントを与えているはずなんだがな。)
何気なくつけているテレビから、チェスの試合開始!と司会者の張り切った声が聞こえてくる。3人とも同じ番組を見ているのだ、しかし忠司の場合2人と違いただテレビを点けているというのが正しい。要するに"点いていれば見る"程度なのだ。
テレビではAI側が人間では取らない大胆な作戦に出ていることに、会場も実況者も白熱しているようだ。忠司はカレーを食べながら何気なく聞いているだけだが、クイーンの駒で縦横無尽に人間側を攻めているようである。
(チェスって動きは将棋っぽいな。クイーンやキングって呼び方はトランプと通じるところがあるし、盤面はオセロみたいに縦横に線が引いてあるんだな…。雅樹辺りは詳しいだろうが。)
カレーを口に入れながら、そんなことを考えていた。
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