1章 アパレル女性 絞殺事件-10
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
雅樹が忠司に声をかける。
「どうですか忠司さんは、考えまとまりました?」
ジッと資料とにらめっこしているところを見ると、未だ考えあぐねているようだ。
「うーん、個人的にこういうのは苦手だな。どの人が犯人でもあり得てしまう。動機についても、被害者と犯人の間にしか分からないトラブルがあったとしたら…せめて犯人が直接殺しに使ったビニール紐が、容疑者の家や服のポケットから出てきたら話は早いんだが。他の者にも犯行が可能な以上、このまま誰かに的を絞って追及しても『じゃあ他の人はどうなんですか?』とでも言い逃れされたら終わりだ。」
のり子がそれを聞いて雅樹に聞く。
「雅樹くんはどうなのよ、アタシは変わらず山上犯人説。八重島さんは絞り込めていない…で一応自分たちの考えは発表したわよ?」
「オレは…なんとなくだけど分かっちゃいましたよ、犯人。そしてオレの考えが正しければ、直接本人の前で判明させることができるはずです。」
忠司が静かに質問する。
「ほぉ、誰なのか教えてほしいな。俺は正直お手上げだな。」
のり子はそんな雅樹になんとなくおもしろくなさそうだ。
「何よ、私の山上犯人説に同調しないってことは他の人ってことかしら?」
雅樹は二人の質問には答えず、話題を逸らすように言う。
「確か現場にあった物の鑑定結果が出る2日後に、また関係者一同で集まるって言ってましたよね?オレそこに連れて行ってもらいます。このセクシーな滝美野さんって女性にも、会ってみたいですし。」
のり子が眉を吊り上げる。
「動機が不純すぎるわね。でも雅樹くんが推理を外して恥かいたらアタシ達の評判も落ちちゃうし、どう?八重島さん。アタシ達もフォロー役として一緒についていくっていうのは。」
忠司はそんなのり子の考えを見透かしたように答える。
「どうせ元部下の俺が頼んだ方がOKもらいやすいとかそんなところだろ。まぁ俺も興味あるし、警部に電話してみよう。」
「さっすが八重島さんね!話が早いわ。アタシは真相解明と、雅樹くんが外して皆に醜態さらすところ見たいのと半々ね。」
のり子はいじわるそうに笑うと、雅樹はそんなのり子を見ながら苦笑する。
「いや同じ事務所のメンバーなんだから、応援してくださいよ。」
そんな二人を置いてさっそく警部に電話する忠司。
「警部、どうやら雅樹のやつが真相を閃いたそうです。自分たちも2日後の現場、お邪魔してよろしいですか?」
~それから2日後 事件現場~
警部が現場アパート前に関係者を集めた。
「紹介しよう、こちらいつも捜査協力をしてもらっている八重島君たちだ。彼らが真相を明らかにするというので、ついてきてもらった。」
組織として正式に依頼しているわけではないため他の警官の前で堂々と紹介するわけにもいかず、簡単にH・M・Oの3人を紹介してすぐ事件の説明に入る警部だった。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後を改行)
いつも閲覧ありがとうございます。感想・評価・指摘などありましたらよろしくお願いいたします。