11章 小さな二人の依頼人Ⅱ-1
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
22/12/16 15:30
ピンポーン、事務所のインターホンが鳴る。いつものようにのり子が出向くと、見たことのある姉妹が立っていた。
「あらゆいちゃんとかなちゃん、どうしたの?久しぶりね。」
『こんにちは。』
二人そろってお行儀よく頭を下げる、寒いだろうからさぁ入ってとのり子が中に入れる。早速ソファに座るよう促し、一応名簿を書いてもらう。その間にのり子は二人分のココアとお菓子を用意する。忠司がやってきて対面のソファの左端に座りながら、二人に声をかける。
「こんにちは、この前はどうも。おばあちゃんと旅行楽しかったかい?」
「はい、あのあと温泉旅行に行きました!おばあちゃんったら久しぶりの旅行だってすごくうれしそうでした!」
妹のかなが名前を書いている間、姉のゆいが元気いっぱいに答えている。そこへお盆に2人分のココアとお茶を乗せてのり子が運んできた。二人はきちんとありがとうと言って受け取る。
「あら、いいわねー。温泉って目いっぱい足伸ばせるし、何も考えずボーと疲れを癒せるからアタシも好きよ。」
「おや?今度はどうしたんだい、またなぞなぞかい?」
そこにトイレから出てきた雅樹が近づいてきながら、姉妹の対面のソファ真ん中に座る。そんな雅樹のすぐ右横にすかさず座り目を光らせるのり子、前回姉妹のお菓子を横取りした前科があるからである。
「はい、またおばあちゃんからです。期限はクリスマスイヴまで、これに正解できたら素敵な夢が叶うって言ってました。」
「素敵な夢…ねぇ。」
のり子の視線を痛いほど感じながら、雅樹がつぶやくとのり子が引き継ぐ。
「それでどんな依頼かしら?前回のお礼も多すぎたくらいだし、お姉さんたちに言ってみて。」
「えーじゃあのり子さん受けてあげてくださいよ。俺は来週合コンも入ってることですし今からいろいろ整えないと。」
そう言いながら、立ち上がって事務所に持ち込んだエアロビバイクの方へ向かう雅樹。先日忠司が雅樹にだだをこねられて、使っていないものを譲ったのである。実はたまにのり子も使っている。
「あのお兄ちゃんは、一緒にやってくれないの?」
悲しそうに妹のかなが言うのを見て怒りそうになったのり子だが、ここで良い案を思いつく。一際大きな声で雅樹に聞こえるように言い放った。
「そうみたいねー、まぁお姉さんに任せないよ。『あんな三流男』いなくったって、アタシと八重島さんですぐ解決よ♪もしかしたらあのお兄ちゃんは自信がないから、逃げただけだったりしてね?」
(なにィー?言わせておけば…)
のり子の計算通り、この挑発が雅樹の負けず嫌いに火をつけた。忠司はいつものことだという顔で黙っていたが、雅樹は速攻でソファの空いた真ん中の席に戻ってきた。
「よーし星野姉妹ちゃん、そのなぞなぞを是非『デキる男』に聞かせてくれたまえ!」
いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。