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何でも屋 H・M・Oの依頼簿  作者: ゆうき
10章 景品は合コン
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番外編➤忠司の内心-2

 ※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。

 結局、日之出警部補は嘘はついていなかった。麻薬組織と繋がっているという警部が長期休暇を取るタイミングがあった。その少し前から麻薬関係の捜査の人出を意図的に薄くし、警部が休暇に入ったのを機に密売組織の一つを一網打尽にしたのだ。その組織のメンバーに司法取引を持ち掛けると、あっさり警部とのやり取りが残ったスマホを提出したのだ。そしてその警部は依頼退職すると同時に逮捕され、日之出警部補が警部へ昇進したのだった。皮肉にも、内部通報制度を利用した忠司が抜けたあとに全てが解決してしまったのだ。


 だが忠司は、組織を抜けたことを後悔はしていない。このことはきっと氷山の一角であり、また同じことが起きていたら、果たして自分は耐えられていただろうか?大きな組織に属し続けるということは、それだけ自分を隠し組織の色に染まらなくてはならない。日之出警部は、当時の立場上なにも言えなかったのだろう。だが忠司のことを今でも気にかけており、今でも連絡を取り合っている。


 最初は忠司が一人で何でも屋を運営していた、と言ってもほとんど日之出警部の手伝いをしたり彼の紹介者の家へ赴いて力仕事などを手伝うくらいだった。だがそれが快適でもあった、安定した収入とはほど遠い生活になったが、その分自由があったからだ。


 そしてその後のり子が日之出警部に紹介されたと言って事務所へやってきた。面倒を見てやってくれという警部の言葉で、この川島田のり子という女性に何か事情があるんだろうということは察して受け入れた。こうして、事務所はのり子と忠司二人で運営することになった。

 当初はのり子の方も、忠司が一人になりたがっていることをすぐに見抜き挨拶と業務上の会話位しか交わさなかった。昨年のこの時期も内装をクリスマス仕様にデコレーションするなんてことはなく、二人は棒読みのメリークリスマスを言い合っただけだった。


 だが今年はどうだ。事務所の内装を雰囲気だけでもとのり子と雅樹が入口に小さなリースを下げたりおもちゃの小さなツリーを置いたりしただけだが、なんとなく事務所の中が温かく感じた。のり子や雅樹とのおしゃべりも慣れてしまったからなのか、一人で事務所や自宅にいるときは物足りなく感じることもある。少し前は一人の時間を最も大切にしていたはずなのに、その頃の自分とは何かが変わっているのを感じている忠司だった。


 「今年のクリスマスは、こんな気持ちで過ごすのかもな。世の中の人々がなぜクリスマス前は恋人を作ろうと躍起になったり、家族や友達と集まって騒ぐのか、少し分かるような気がするな。」

 小さく独り言をつぶやくと、シャワーを浴びにソファーを立った。


 いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。


 ※司法取引…被疑者が(自身以外の事件や容疑者の)情報提供をする代わりに、刑を軽くするよう要求したりできる制度。

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