10章 出題者のり子、その景品は?-9
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
22/12/05 12:15 事務所
「ピンポーン!さっすが八重島さんね、元刑事だけに刑事事件は強いわねー。」
(ぶっちゃけ雅樹くんが先に解答権使ったときはかなりヒヤヒヤしたけど、お手付きしてくれて助かったわ。)
二人に見えないよう、後ろ手に背中へ回した手で小さくガッツポーズを作りながら満足そうなのり子。忠司も正解できて満足そうだ。
「まぁ雅樹のお手付きに救われたのも事実だな。俺も最初は死体の温度を下げて死亡推定時刻を狂わそうとしたって考えたからな。それは死亡推定時刻を早めることで、遅く帰ってきた奥さんには無理だと思わせるためのアリバイ工作だと。だがそれでは毛布が掛かっていたことが決定的に矛盾する。それで途中で考え方を変えたんだ、『毛布を掛ける必要があったのはなぜか』。できるだけ温かい状態で死体温度を保存させ、死体発見時は空調を切り寒かった部屋に放置されていたと思わせることで死亡推定時刻を狂わせる。そのアリバイ工作が必要なのは早く帰っていて、かつ一見完璧なアリバイのあるリンダだ。」
「ちぇ、合コン行きたかったなー。」
負けてしまった上に合コン参加権も取られ、不貞腐れている雅樹。
「言っただろ、正解できたのは雅樹のおかげでもあると。だから合コンは雅樹が行くといいぞ。」
忠司がそう言うと、途端にパッと笑顔を浮かべ声も大きくなる雅樹。
「マジ!やったー、のり子さんオレが合コン行ってもいいですか?」
「いいわよ別に、アタシは『男性を一人』って頼まれただけで指名はされてないからね。」
のり子はそう言いながら、早速スマホを取り出して西城へメールを打ちだした。
そのメールを打ち終わったとき、のり子が思い出したように二人にスマホを見せた。
「そうだ、来週あたり警部からまた事件の相談が来るわよ?ほら。『のり子君、また君たちに相談があるからよろしく頼むよ』ってメール。昨日受信したんだけど言うの忘れてたわ。」
忠司がほぉ、と言いながら眉を動かす。
「なんだろうな、まぁ警部は難しい事件ばかり回されてストレス溜まっていそうだな。逆を言えばそれだけ上から信頼されているんだろうが…。俺たちにアシストを頼むということは、またややこしい事件なのかもな。」
忠司がそう言うと、合コンに参加できることになった雅樹が大喜びで続ける。
「いやー難しい事件の方が解き甲斐があるってもんですよ!ところでのり子さん、その合コンっていつなんですか?」
「あ、言ってなかったわね。クリスマスイヴよ?独身同士集まってパーッと楽しむのがコンセプトらしいわね。雅樹くん、24日大丈夫よね?」
雅樹は一瞬オレだって…と言おうとしたが、強がっても仕方ないと思ったのか黙ってうなづいた。
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22/12/19 凶器について記載を忘れていました、補足。リンダが隣町へ行く途中で途中の川へ車の窓から投げ捨てていた。警察にトリックを暴かれ自供し、のちの供述から川の捜索→発見されています。