1章 アパレル女性 絞殺事件-9
※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
ここで一度状況を整理してみよう。玄関と靴棚周辺の情報を図にするとこうなる。
【現場の状況】
・玄関には鍵もドアロックもかけられていなかった。そのため見知った誰かが訪ねてきて、ドアを開けたところを襲われたと思われる。(見知らぬ人ならドアロックをして対応するだろう)
・死因はビニール紐で首を絞められたことによる窒息死。首のひもを緩めようともがいたときに、爪にビニール片がついていた。スーパーなどに市販されているもので、恐らく首を絞めたものはもう処分されている。
・第一発見者の前に27cmの足跡がついていたがこれは山上のものであり本人も認めている。
・玄関から部屋の方へ侵入した痕跡はなく、財布なども特になくなっていない。
【被害者と各人の関係】
滝美野あずさ…被害者の下の階101号室に住む第一発見者。事件発生の1か月ほど前まで山上と不倫関係にあった。被害者とは会社の先輩後輩の関係だが、特にプライベートで親しかったわけではない。自身の容姿をよく分かっているのか男性をドギマギさせる服装をするため、聴取は女性が担当。事件発生時は雑誌を読んでおり、被害者の悲鳴を聞いたため部屋を訪ね事件が発覚。
伊達幹久…被害者の横202号室に住む男性。独り身で職場からのアクセスが良いため、たまに職場仲間を連れ自室で飲み会を開く。被害者からは直接クレームを言われるほどで、そのため普段はテレビやゲームもヘッドホンをつけている。仕事仲間が結構過激派。事件当時もヘッドホンをしてゲームしており警官が部屋を訪ねるまで事件に気づかなかった。
梶原祐樹…被害者と同じ階203号室に住んでおり、小型犬も飼っている。被害者と事件の1か月ほど前まで交際しており、互いの部屋を行き来していたこともある。被害者から別れを告げられた後も、近隣住民への聞き込みでは特に目立ったトラブルを見かけたことはないという。事件発生時は自室で犬をなだめるのに夢中で、悲鳴や怪しい物音には気づかなかったという。
山上武夫…被害者のアパートから徒歩2分のマンションに住む。既婚者でありながら滝美野あずさと被害者の姫田やよいと不倫をしていた、いわゆる「女の敵」である。事件発生の1時間ほど前に被害者に会っていたことを認めたが、殺害は否認。別れを迫られ痴話げんかになり、頭を冷やすため被害者の部屋から自室に帰ってきていた。
「こんなところかしら?」
簡単な図をまたまたのり子がササッと描きながらまとめると、雅樹がそれを見ながら調子よく口を挟む。
「さすがデキる女は違いますねーのり子さん。警部がパチンコ好きってのも書き足しといてくださいよ!」
「それは関係ないでしょ!事実だけど。」
のり子が飽きれながら反論した。忠司は二人の会話を聞きながらも、のり子が描いたいくつかの図も含めジッと資料と格闘していた。彼の場合、情報を整理して1から組み立てたいタイプなのである。
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後を改行)
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