序章
長い目で見てください。※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。
ゴキブリ駆除から引っ越しの荷造り、お部屋のクリーニングまで!何でも屋 トライアングルにお問い合わせください。
「ねぇこのビラ、もうそろそろ更新しない?1年近くコレじゃない。皆見飽きてるわよ、それに私ゴキブリ退治とかしたくないし、力仕事もイヤだって言ってるでしょ!」
事務所の受付を兼務している川島田のり子が二人に言った。
「まぁまぁ。どんなことも引き受けますってことにしておいた方が、依頼する側も気が楽じゃないですか!それにこの前なんて親の結婚責めがうるさいから、彼氏のフリしてくれ~なんてオイシイ依頼もあったことですし。俺的にはやりたかったけど。」
諏訪野雅樹がのり子をなだめるように言う。うまいことやったんですよね?とそのままもう一人のメンバー八重島忠司に話を振る。
「まぁな。依頼者の父親の方がどこまで真剣なんだね?とかしつこかったがな。」
パソコンで会計帳簿を入力ながら忠司は適当に返事する。
「依頼者の気持ちも分かるわよ~、アタシの親も実家に顔出すたびに職場や友人に良い人はいないのかって聞いてくるんだから。恋愛くらい自由にさせてよねって感じ。」
のり子は自分のことのようにウンザリだ。
「のり子さん、最近は合コンも全敗だって言ってましたもんね。」
と雅樹が軽口を叩いた瞬間、それはアンタもでしょっとのり子の鋭いツッコミが飛ぶ。そうなんスけどねーとおどけながら、雅樹が引き続き口を開く。
「そろそろ約束の17時ですね、警部からの"相談"が来る頃だ。」
事務所トライアングルは表向き3人のメンバーで何でも屋として営業しているが、実は裏では警視庁捜査一課のヘルプを行っているのだ。もちろん、公式に依頼されているわけではない。会計役を兼務している忠司は以前警視庁の捜査員として勤務していた過去があり、その頃の上司だった日之出警部が一筋縄ではいかない事件を"相談"しに来るのだ。もちろん警視庁として依頼しているわけではないので報酬は出ないが、その代わりさりげなくこの事務所トライアングルを斡旋しているのだ。わかりやすく例えれば、病院と薬局のような関係なのである。
「しっかし日之出警部、難事件ばっかでストレスすごそうだよな。唯一ストレス発散って言ってたパチンコ通い、行く頻度上がっちゃうんじゃねーの?」
雅樹が再び軽口を叩く。
「あら?噂をすれば。警部からいつもの『もうすぐ着く、情報だけは漏らさぬように』って連絡よ。お湯でも沸かしておこうかしら。」
椅子から立ち上がりながら、スマホを片手に立ち上がるのり子。さぁ今回はどんな事件かな、と3人は口には出さなくとも同じ思いだった。
22/9/14 読みやすいよう改行を増やしました。(これはネット小説ならでは)
22/12/02 全体的に体裁を修正。(会話文の後を改行)
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