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八話 忍びこんだのはガイコツ屋敷でした! 

 スケルトンに青ざめた俺たちはすぐに台所から逃げ出そうとした。が、出れない! どうして! 


「ロータスさん! 後ろ! 後ろ! 引っかかってます! 」


言われて自分の背中を見てみると、入り口に大剣が引っかかっていた。


「まったくもう! 不便なもんだ。」


焦ってしまってなかなか外れない。スケルトンには俺たちは見えていないが、入り口に向かって歩いてくる。外に用事があるよう。


 このままじゃぶつかってしまう。


「ヤバいですよ! 流石に触られたらいるのがバレちゃいます! 」


「そんなこと言ったって! 外れないんだよ! 」


もうあと五歩くらいのところまでスケルトンは来ている。


「もう! どうにでもなれ! 」


「ちょ! 何を……。」


「えい! 」


フルスイング! ミヤビは得体の知れないスケルトンを全力で殴り飛ばしてしまった。


 殴り飛ばされたスケルトンは台所の端まで飛んでいき、流し台の中に落ちた。


「おいおい、大丈夫なのか? 殴っちゃって。」


「だって、敵なのには違いないでしょう! 殴ったって怒られませんよ。」


 しかし、さすがは洋館の魔物だ。一撃では倒れなかった。

いくらクリティカルとはいえ、初期装備の杖じゃ火力不足だったようだ。


「オマエラ、ナニモノ。」


しゃべった!! こいつ喋れるのか。というか攻撃したせいで姿が見えるようになってしまったのか。


「喋ったー!! 」


ミヤビは驚いた勢いでもう一発フルスイング! パニックになりつつも、スケルトンのこめかみを正確に打ち抜いた。


そこでようやくスケルトンは倒れた。同時に台所はぐちゃぐちゃになっていたけれど。


「ホントは倒すようなやつじゃないだろ、これ。」


「倒しちゃったんだから仕方ないでしょう。」


 それより気になったのは、『隠密』の仕様だ。攻撃をしたミヤビが見えるようになるのは当然だ。しかしあのスケルトンには、俺のことも見えていた。


 これってもしかして、一人でも攻撃すればパーティー全員が見えるようになってしまうのか!


 だとすれば少し不便だな。攻撃するときは互いに気を使わなければならない。


 俺たちは今度こそ落ち着いて台所から出た。


「しかし、どこにあるんでしょうね? 指輪。」


「しらみつぶしに一つ一つの部屋を見ていくしかないな。」


面倒だけど、それしかないだろう。


「そんな悠長なことしてて大丈夫なんですかね? 」


「え、どういうこと? 」


「いや、さっきの台所って、結構脆かったじゃないですか? 」


言われてみれば、戦闘後の台所の壁には、ヒビが入っていた。直接叩いたわけでもないのに。


「この洋館、かなり古いみたいだしな。」


「なので、いちいち探してもしまた見つかったら、洋館が持ちませんよ。」


「じゃあどうするの? 」


「ボスだけを狙い撃ちにして倒しちゃいましょう。」


「おいおい、大胆すぎるだろ。」


「だって、もう私たちの存在は気づかれちゃってるじゃないですか。」


実際もうすでに洋館のなかはバタバタし始めていた。台所の異変を住民たちが察知したらしい。


「隠れてもいいですけど、むしろもう倒しちゃったほうが早いです。」


めちゃくちゃバイオレンスな提案だが、実際その方が早そう。問題はそもそも勝てるかどうかの話なのだが、そこはどうにかなるだろ。知らんけど。


 ミヤビに考えがあるというので、俺たちは階段をのぼって二階に上がった。


「家主が一番強いだろうし、ボスでしょう? どうせ二階の奥の方にいるんだし、先に倒しときましょう。」


ズンズン進んでいくけれど、家主とかいるのか? 


 そんな心配はする必要がなかった。二階の一番奥、あからさまに大きな目立つ扉があった。


「絶対ここでしょ。」


「うん、そうだね。」


俺たちは『隠密』を使ってから扉をそっと開けた。部屋の中は大きめの書斎のような雰囲気だった。


 部屋の奥にはスケルトンがいた。もう二度目だから驚かない。


「さっきのとは違うみたいです。ボスだからですかね。」


右上の表示には「メイジスケルトン」とあった。メイジ……ということは魔法使うのか、こいつ。


 「あいつ、何かは分からないけど多分魔法使うよ。」


「へえ、それはちょっと危ないですね。」


言葉と裏腹にミヤビはどんどんスケルトンに近づいた。全く躊躇がないな。


「まあ、魔法使われるまえに倒しちゃえばいいんですよ。」


そう言って彼女はまた木の杖をフルスイング。メイジスケルトンの頭を後ろからぶん殴った。


 スケルトンはかなり驚いていた。


「エ? ナニ? ドウイウコト? 」


魔物がそんなに喋っちゃ雰囲気出ないだろ。しかしさすがはボス。タフだ。


「ナンナンダ、キミタチ。」


「盗賊です」と言うのもおかしいので、さらに攻撃してやろうと詰め寄ると、メイジスケルトンは逃げ出した。


 スケルトンは部屋から飛び出すと、廊下を駆けていった。


「まずいですよ、逃すと面倒です。」


「分かってるさ。」


俺たちもすぐに後を追った。


 ミヤビはソフトボールをやっていただけのことはある。めちゃくちゃ足が速い。すぐにスケルトンの背後までたどり着いた。


「もらったよ。」


メイジスケルトンの後頭部めがけてバットもとい木の杖を振り抜いた。


 が、スケルトンは身をかがめて杖を避けた。あたりどころを失った杖はそのまま壁にぶち当たった。


「メキメキメキ!! 」


壁に亀裂が入り、嫌な音を立て始めた。


「ちょいちょい、ヤバいって! 建物ぶっ壊れるって! 」


「そんなこと言ったってやめられませんよ! 逃げちゃうでしょ! 」


 ミヤビは俊足で再びスケルトンに追いつくと、今度は足のあたりを杖で払った。けれども今度はスケルトンが優れた反射神経で飛び越えてしまった。


 また杖は壁に激突。轟音を立てた。


「ドシャ!! 」


ちょうど俺の目の前に、梁が一本丸ごと落ちてきた。


「おいおい、もうそろそろ崩れるぞ! 」


しかしミヤビには俺の声なんてもう聞こえてないみたいだ。


 






 




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