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四十三話 快進撃です!

 ミヤビが不機嫌なまま二回戦が始まってしまった。


「どうするんですか?」


「身を隠す時間を俺が稼ぐから、二人ともその間に『隠密』を使ってくれ。」


「分かりました!」


「…………。」


二人とも俺の後ろに下がってから、それぞれ『隠密』で身を隠した。怒っていても、言うことは聞いてくれるらしい。


 二回戦の相手は、武闘家三人に僧侶一人という、不思議なパーティーだった。


「私さえいればいつでも回復できるから、安心して行ってきて!」


相手の僧侶が司令塔になっている。なるほど、あの僧侶が回復役にまわって、武闘家たちが倒れてしまわないようにしているのか。


 しかし、それは愚策だろう。こちらは火力全振りなんだぞ? もしも最初に武闘家を狙ったとしても簡単に崩せるだろう。まあ、実際はあの僧侶から狙うのだけども。


 俺たちの見た目が盗賊だから、持久戦に持ち込めると思っているのだろうが、それは無理な話だ。むしろ逆だ。超短期決着にしてやる。


 ミヤビがすでに相手の僧侶のもとまでたどり着いていた。


「!!」


「バキン!」


怒っているので、掛け声もなしに杖を振り抜いた。今度は相手の腹に当てた。体が飛んでいくこともなく、僧侶はその場で倒れ込んでしまった。


 まったく、人間相手だとエグいことになるな。それにしても杖の頑丈さには驚かされる。ゲームだからと言ってしまえばそれまでなのだが、あのコブラの装飾が壊れないのがなんとも不思議だ。


 

 僧侶は一撃で倒れてしまった。前に出ていた武闘家三人は後ろを振り返った。


「なに!」


「どういうことだ?」


 そこでさらに隙が生まれる。今度は右にいた武闘家が突然上に殴り上げられた。


「ドゴン!!」


こちらはリングアウトだ。


 残った後二人は、俺がまたまた吹き飛ばした。今度はミヤビとトルクを巻き込まないように、横向きに竜巻を起こした。


 そして相手はリングアウトで全滅。今度は苦もなく勝つことができた。


「おいおい、またあいつらやったぞ。」


「この感じじゃ優勝するんじゃないのか?」


「いや、でも三人しかいないぞ。数的に不利じゃないのか?」


ギャラリーの声も聞こえて来る。


 二回も完封して勝ったのだから、騒がれるのも自然なことだ。悪い気分じゃないな。


 俺たちは三人とも控室に戻った。


「順調ですね。」


「そうだね、三人だから不利かもと思ったけど、上手くいくもんだね。」


「あ! あれ見てくださいよ!」


へそを曲げていたはずのミヤビが高めの声を出して、控室の奥を指さした。


 彼女が指した先には、色とりどりの料理の山が並んでいた。


「ええ! さっきまでこんなのありませんでしたよ?」


「いつのまに? これ食べてもいいのかな?」


ゲームの中での飲食にもう疑問を持たなくなってしまっている。


 これは、いわゆるケータリングというやつだろう。勝ち進むにつれて時間が経っていってしまっているので、軽食を食べられるようにという計らいだろう。


 本来は不要なのかもしれないが、こういうところが粋というか、このゲームのおもしろいところでもある。


 さあ、次はいよいよ準々決勝だ。


「次に勝てば、次のエリアへの進出権を獲得できるんですよね?」


「そうだよ、あと一つ。大事に戦って確実に勝ちに行こう!」


「え、何言ってるんですか?」


ミヤビが肉まんを頬張りながら振り向いた。


「ロータスさんたち目標が低すぎますよ? 」


「え?」


「『え?』じゃないですよ。トーナメントですよ? 優勝狙うしかないじゃないですか! 最低ラインが見えてきたからって、そっちに気を取られてちゃダメです!」


 ミヤビは、ケータリングのおかげで機嫌を直していた。いや、前よりむしろ元気になっている。


「さあさあ、これの勝った方とやるんですよ。」


肉まんをもう二つ持ってからモニターの前に座り込んだ。


 二回戦も俺たちの試合のあとに六試合あったので、中々に時間がかかっていた。


「一回戦のときからそうですけど、特に見映えのするパーティーはありませんね。」


「前の優勝パーティーが気になりますよね。」


二人は、アクシズのことを話題に出した。


 アクシズは前回大会、昨日開かれたアリーナトーナメントで優勝して早くも次のエリアに進んだらしい。


「どんな戦い方をするんだろうね?」


「私は会ったことありませんから。ロータスさんのほうが分かるんじゃないですか? 会ったことあるんでしょ?」


「リーダーにだけだよ。実際パーティーの構成がどうなっているかなんて分からない。」


リーダーをやっているリーチはどうやら戦士のようだった。


 そのような、他と一線を画するような強さのパーティーはこの大会にはいなかった。


「なんか、みんな同じ戦い方をしますよね。」


「まだ初心者って呼んでもいいくらいのプレイヤーばっかだからな。」


テンプレのような戦い方なのだろう。


 その点、俺たちの戦い方は特殊の極みである。搦め手、その末に火力押しという不思議な作戦だ。


 ただ、それが意外とウケているようだ。その後あった準々決勝でも、相手を思いっきり吹き飛ばしたのだが、ギャラリーからは一際大きく歓声が上がっていた。





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