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三十二話 やっぱり盗賊は盗賊らしく!

 ペガサスレースは競馬とは全く違っていた。俺は次こそは、次こそはと意気込んで何レースも勝負したのだけど、結果はボロボロ。200ゴールドを残して、残りは全部すってしまった。


 ミヤビはずっと冷たい目で見てきている。


「ロータスさん、あなただって人のこと言えないじゃないですか! この体たらく、全然勝ててないじゃないですか。」


これはぐうの音も出ない。こんなはずじゃなかったのに。


 ミヤビはもう開き直っていた。


「そもそも、私たちがギャンブルで儲けようなんてのがおかしかったんですよ。私たちは盗賊です。盗賊なら盗賊らしく、盗みでゴールドを稼ぐべきなんです! 」


「でも、盗みなんて、どうするのさ? またクエストでも受けるのかい? 」


このまえ、初めてのクエストがちょうど盗みのクエストだったが、あれはさんざんな結果だった。スケルトンの討伐報酬があったからよかったものの、クエスト自体は大失敗である。正直向いていないと思う。


 ただ、ミヤビは自信ありげだった。


「いやいや、違いますよ。今回は、私が新しく覚えたスキルを使って盗みを働きます。」


スキルか、そういえばスキルポイントがたくさん貯まっているのに、割り振るのを忘れていたな。


「盗賊スキルの『カットスティール』です。ロータスさんはまだ覚えていないんですか?」


「ああうん。まだ覚えていないな。スキルポイントを振り分けるのを忘れていた。」


スキル欄のところを見れば、獲得可能スキルの中にその名前があった。


「早速どんなもんか試したいので、リゾートの外に出ましょうよ。」


 俺たち二人は外に出た。リゾートが喧騒に包まれていただけに、外はしんと静かだ。原っぱの上には俺たち以外のプレイヤーは数人しか見えない。


 このエリアは敵の数が少ないので、遭遇するまでには時間がかかった。その間、ミヤビはずっとむずむずしていた。


 ようやく現れた敵は……


「なにこれ? 狛犬? 」


「シーサーですよ! 一番間違えちゃいけないやつ! 」


表示名は「ストーンシーザー」。名前どうり、体が石でできていた。


 ミヤビはやる気満々、さっそく杖を抜き出した。


「あまり適任のモンスターとは思えませんが、お試しですしね。」


ミヤビは杖を振りかぶると、


「『カットスティール』! 」


と杖を振り下ろし一撃。


 当然の様にストーンシーザーは倒れてしまったのだが、驚くべきことが起きた。


「チャリーン! 」


ミヤビの杖がストーンシーザーに命中した瞬間、シーザーからゴールドがはじけて出てきたのだ。正真正銘、本物のゴールドである。


 ミヤビはその散らばったゴールドをかき集めた。


「見てくださいよ。本当にゴールドがドロップしましたよ! 」


「すごいな、このスキル。攻撃するだけでゴールドが出てくるのか。」


まるで打ち出の小槌だ。出てきたゴールドは少額だったが、なにより、何もないところから出てくるのが驚くべきことなのだ。


 そのすごさを目の当たりにして、俺もすぐに『カットスティール』を獲得した。


「敵を見つけ次第、どんどん倒していきましょう! 」


 俺たち二人は、フィールド上で雑魚狩りを始めた。敵と遭遇次第、『カットスティール』を使って敵を倒していく。一回敵を倒すたびに、ドロップするのは平均で150ゴールド。ついさっきまで数万ゴールドを持っていた身からしてみれば、かなりの少額ではあるが、今はありがたい限りだ。


 しかし、ミヤビはイライラし始めていた。またさっきの不機嫌が戻ってきたのかとも思ったが、どうやら今度は違うらしい。


「どうしたのさ? 」


「いえ、ただですね。」


「ただ? 」


「モンスター少なすぎるでしょう! 」


ああそういうこと。このエリアはモンスターがそもそも少ないから、なかなか遭遇しないのは当たり前の話だ。


 俺はユルくやるのも嫌いじゃないから、それでもよかったんだけれど、ミヤビにはちょっと暇だったらしい。


 俺は彼女に提案した。


「なあ、敵との遭遇を増やしたいんなら、前のエリアに戻らないか? 」


「ええ、ロータスさんってば、あの砂漠に戻りたいんですか? 」


「それは俺もやだな。だから、一番最初のエリアまで戻ればいいんじゃない? 」


一番最初のエリアは初心者のレベル上げのために敵が多くいる。俺達でもそこに戻ることはできるわけだから、そこで相応の稼ぎが期待できる。


 ただまだミヤビには引っかかることがあるようだ。


「でも、最初のエリアの敵って弱いですよね? そんな敵を攻撃しても全然ゴールド出てこないんじゃないですか? 」


「そこは心配ご無用。出てくるゴールドの金額は、敵の強さには関係してない。俺たちの攻撃力にだけ依存しているようだよ。」


スキルの説明にはそう書かれてあった。つまりは、俺たちがここのW4にいる多少強い敵を攻撃しようが、最初のW6にいる初心者向けの弱いモンスターを攻撃しようが、ドロップするゴールドの金額は全く変わらないということである。


 俺の説明にミヤビは納得してくれたので、二人でW4を抜けて、最初のエリアを目指した。途中W5の砂漠をまた通っていかなければならないのは億劫だけど。

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