十三話 計画性が無いせいでまさかのピンチです!
ゴールデンフィストはすぐに俺たちに気づいた。
「来ますよ! けれどこれがあるから大丈夫ですね! 『隠密』! 」
いつものようにミヤビは『隠密』を使おうとした。
「隠密! 」
しかし、ゴールデンフィストは彼女を見失わなかった。真っ直ぐこちらへと近づいてくる。
「あれ? なんで? 」
僕たちは『隠密』を使ってもお互いのことは見えたままだ。だから、『隠密』が発動しているのかどうかは相手の反応を見ないとわからない。
ゴールデンフィストがなおもミヤビめがけて突っ込んでくるということは、つまり『隠密』は発動していないのである!
ゴールデンフィストはそのまま彼女めがけて拳を振り抜いてきた。間一髪俺が間に入って大剣でガードしたが、五メートルほど下がらされてしまった。地面が少しえぐれている。
しかし問題は、『隠密』が発動しなかったことだ。このスキルがなければ俺たちの作戦は機能しない。
「どうしてだ? なんで使えない? 」
俺も使えなくなっていた。
原因は、体勢を立て直してからステータスを確認したときに判明した。
「おい! もうMPが底をついているぞ! 」
「ホントだ! だからつかえないんだ! 」
そう、俺たちはRPGにはお約束のMPのことを完全に忘れてしまっていたのである。
盗賊のMPなど、たかだか知れている。さっきまでの戦闘で調子に乗って『隠密』のスキルを使いまくったせいで、MPを全て使い果たしてしまったのだ。
「かなりヤバいですよ、これ。」
「あれ、俺が使えないのはともかく、ミヤビちゃんは杖じゃないか? 」
杖は直接攻撃すると、MPがわずかに回復するという特性がある。
しかし、ミヤビのMPは2しか残っていなかった。
「それにしても使いすぎました。『隠密』の使用MPは5もあります。それなのに一撃あたりの吸収MPは2くらいですから。」
「全然ダメじゃないか!」
ゴールデンフィストは再び俺たちの方に突っ込んできた。
「俺の後ろに! 」
「ありがとうございます! 」
俺がが前、ミヤビが後ろという布陣でゴールデンフィストを迎えうつ。
これは防御手段のないミヤビを守るためもあるが、それだけではない。
ゴールデンフィストは俺めがけて渾身の右ストレートを打ち込んできた。
ガードをしたものの、やはり吹き飛ばされてしまう。だが、俺はこれでいいのだ!
「今だ! ミヤビちゃん! 」
「はい! 」
ミヤビはいつも通りの綺麗なフォームで打ち終わりのゴールデンフィストの右腕にフルスイングをかました。
やはりクリティカルが出た。かなりのダメージが入り、ゴールデンフィストは悶えた。
がしかし、ボスはやっぱり強いしタフだ。一撃なんかで倒れるわけがない。
だけどそれだけがこの作戦の目的ではない。
「どう、MPは? 」
「まだ4です。足りません! 」
杖による打撃で5までMPを回復させることができれば、ミヤビはもう一度『隠密』を使えるようになるのだ。
「じゃあもう一度やるしかないな! 」
「すいません、頼みました! 」
ゴールデンフィストはまたまた俺の方に近づいてくると、今度は巻き込むような左フックをぶん回してきた。
これはさっきのより重たかった。横に吹っ飛ばされてバランスを崩してしまった。
「ありがとうございます! 」
ミヤビはもう一度杖をゴールデンフィストの左腕に打ち込んだ。
「グオオオオ!! 」
ゴールデンフィストは大きく唸り声をあげた。
「こいつ、声出すんだ。」
「ゴーレムだし、何も言わないと勝手に思っちゃってましたね。」
さて、目的は達成された。
「MP7です。『隠密』が使えます! 」
「オーケイ! 頼んだよ。」
「隠密! 」
ミヤビは『隠密』を使い、相手から見えなくなってしまった。
その間、ゴールデンフィストからは俺しか見えてない。つまるところ、俺だけが狙われてしまうのだ。
「よくよく考えたらヤバいな、この状況。」
ゴールデンフィストはまたまた俺の方に向かってきている。
「右か? 左か? 」
大剣を向けて待ち構えていると、敵は右の腕を振り上げた。
「正面か! 」
と、思った次の瞬間だった。
「ふごぉっ!」
俺の体は下から凄い衝撃を受けて、飛び上がってしまった。
ゴールデンフィストの攻撃は、アッパーだった。
「これは……強烈だな。」
そのまま俺の体は宙を舞って下に落ちてしまった。
だが、これは無駄な犠牲じゃない。死んでないけど。
「今だよ! 」
ミヤビは大胆にも、攻撃後のゴールデンフィストの真正面に出てきた。
「食らえ!! 」
彼女はまるでフライでも打つように、杖を真上に振り上げた。俺がアッパー打たれたのに対する意趣返しか?
ともかく、人間もゴーレムも、アゴは弱点だったらしい。ゴールデンフィストは膝から崩れ落ちてしまった。
ミヤビの一撃はまさにトドメだった。
「我ながらアゴ先を正確に捉えましたね。」
「本当の意味でクリティカルだよ! 」
ゴールデンフィストの体はそのまま電子になって崩れていくように消えてしまった。
体は少しも残らなかった。
「あれ、こいつは特別指定じゃないのか。」
「もともと倒されることは想定されてませんからね。この金鉱山のオブジェみたいなものなんですよ。なので懸賞金もかけられていません。」
「それは残念だな。」
「そんなこともないですよ。 ほら、これ! 」
ミヤビの指さした先には、今まで見てきたものよりも一回りも二回りも巨大な金塊が転がっていた。




