死神と死を見る青年 第4話 飯島亜樹編
僕の名前は飯島亜樹。
僕は人見知りで人と話すのが苦手で、学校ではいじめられていた。
小学生A「お前とろいんだよ!」
小学生B「なんとか言ってみろ」
亜樹「うー。」
?「コラー。亜樹をいじめるなー。」
小学生A「うわっ。亜樹の姉ちゃんだ。逃げろー。」
亜樹のお姉ちゃんが来ると小学生達は逃げて行った。
飯島希。
亜樹の一つ上の姉で勉強も運動もできる。
希「亜樹。大丈夫?ケガしてない?」
亜樹「うん。ごめん。お姉ちゃん。」
希「どうして、亜樹があやまるの?亜樹は何も悪いことはしてないでしょ?」
亜樹「うん。でも、いつもお姉ちゃんに心配かけちゃうから。」
希「いいんだよ。お姉ちゃんは亜樹のお姉ちゃんなんだから、亜樹の心配をするのは当然なの。だから、そんなこと、心配しなくていいんだよ。」
そういうと、お姉ちゃんは僕の手をとり。
希「さぁ帰ろう?今日のご飯は何かな?」
亜樹「僕、カレーがいいな。」
希「カレーだったらいいね。」
亜樹「うん。」
僕はお姉ちゃんが大好きだった。
勉強もできて、運動もできて、友達もたくさんいて、優しくて、いつも僕を守ってくれる。
僕もいつかお姉ちゃんみたいになりないなってずっと思ってた。
中学に入ってから僕は塾に通うようになった。
少しでもお姉ちゃんに近づけるように。
その帰り道で僕は交通事故にあった。
運転手がお酒を飲んでいたらしい。
幸いにもそこまでたいした怪我をせずにすんだ。
しばらく入院して、無事に退院をした。
久しぶりに病院で検査してもらった時に僕はお医者さんから信じられないことを言われた。
事故の影響で脳にある異常がおきてしまっていると言われた。
それは、現在の医療では手を施すことができず、僕は余命5年だと言われた。
僕はあまりに急なことだったのとあと5年だと言われても実感が持てなかった。
その時は両親が一緒に話を聞いていてくれて、両親は凄く悲しんでいた。
僕はまた親を悲しませてしまったんだなと、思った。
それと同時に僕はお姉ちゃんの顔が頭によぎった。
このことをお姉ちゃんが知ったら、きっと悲しむだろうと思った。
僕はもうお姉ちゃんに心配をかけたくない。悲しませたくない。そう考えた僕は両親にこのことはお姉ちゃんには内緒にしてほしいとお願いした。
そして、これまで通りに接してほしいとお願いをした。
両親は少しだけ考えてから了承してくれた。
それから僕は5年後に死ぬのなら、死んだ時にお姉ちゃんを少しでも悲しませないようにお姉ちゃんが僕のことを嫌いになるように少しずつお姉ちゃんを避けるようになった。
勉強もせずに部活にもいかずいわゆる不良になっていった。
そして、現在高校2年になっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
孝太郎「ネム。ちょっと相談したいことがあるんだけど。」
ネム「何?」
孝太郎「実は里夏さんがバイトしてる喫茶店に短い間だけ手伝いに来れないかって頼まれたんだけど、いいかな?」
ネム「別にいいんじゃないか?それなら私も行く必要があるな。」
孝太郎「悪いね。」
ネム「孝太郎は気にしすぎだ。私のことは気にせずに過ごせばいいのに。」
孝太郎「そういうわけにもいかないだろ。じゃあ、里夏さんには大丈夫だって返事しとくよ。」
ネム「それで、いつからなんだ?」
孝太郎「多分、来週からかな。週末だけらしいから。」
ネム「わかった。」
そして、週末。
里夏「あっ孝太郎君とネムちゃん。いらっしゃい。これからよろしくね。店長。この子達です。」
尼音「はじめまして。この喫茶店の店長をしている。尼音涼香です。今日からしばらくよろしくね。」
孝太郎「杉並孝太郎です。よろしくお願いします。」
ネム「よろしくお願いします。」
尼音「あともう一人来るはずなんだけど、あいつ遅いな。」
亜樹「涼香さん。用ってなんですか?」
尼音「おっきたきた。こいつはあたしの姉の息子の飯島亜樹。あんた達の同僚だから仲良くしてやってね。」
亜樹「はぁ?何言ってんだよ。俺は大事な用があるって言うから。」
尼音「だったら、今までここで使った分を今すぐ払ってもらおうか?それにもうギター教えてやらないぞ。」
亜樹「あっ。きたねー。わかったよ。手伝えばいいんだろ。」
尼音「わかればよろしい。それじゃあ、あとは里夏ちゃん。よろしく!」
里夏「あっ。はい。えっと、それじゃあ、一つずつ教えていくから。わからないことがあったら遠慮なく聞いてね。」
孝太郎「わかりました。」
ネム「了解。」
亜樹「…。」
尼音「ギター。」
亜樹「わかりました。」
こうして俺達は喫茶店で働くことになった。
ネム「いらっしゃいませ。」
尼音「いやー。皆のおかげで助かるわー。」
里夏「ネムちゃん目当てで来るお客さんも増えましたね。」
尼音「そうね。まぁ可愛いいもんね。私の若い頃にそっくりだわ。」
亜樹「ぶっ。」
尼音「今笑ったのは誰かな?」
亜樹「接客行ってくるわ。」
尼音「あっ。逃げんな。」
里夏「私は食器でも洗ってこようかな。」
ネムの効果もありお客さんは確かに増えていた。
ネム「お待たせしました。コーヒーです。」
お客A「ありがとう。ネムちゃん。」
ネム「失礼します。」
一人のお客さんがスマホのカメラでネムのスカートの中を撮ろうとしていた。
俺はそれに気づいて注意しに行こうとした時。
亜樹「おい。お前今写真撮っただろ?」
飯島さんがそのお客さんの所に行っていた。
お客A「なんだ、君は。失礼だぞ。」
亜樹「いいから、写真消せよ。」
ヤバい、なんとかしなきゃ。
その時。
尼音「どうかなさいましたか?」
お客A「どうもこうもないよ。このお兄さんがいちゃもんをつけてきたんだよ。」
亜樹「いちゃもんだと?」
尼音「申し訳ございませんでした。ほら、あんたも。」
そういうと、尼音さんは飯島さんの頭を下げさせた。
お客A「まっまぁそこまでするんなら、許してやってもいいかな。」
尼音「ありがとうございます。お詫びとして、今回のお代は頂きませんので。」
お客A「あっそう。そこまでしてもらって悪いね。」
尼音「それでは、失礼いたします。」
飯島さんは尼音さんに裏に連れていかれた。
亜樹「なんで俺が謝らないといけないんだよ!」
尼音「ここはお店で私達は従業員で向こうはお客なんだから、お客さんに迷惑をかけたのなら謝るのが当然だろ。」
亜樹「だけど、あのまま黙ってたら。」
尼音「だからといってあんなやり方はないだろ?」
亜樹「まぁ確かにそうかもしれないけど。」
尼音「あんたがネムちゃんのことを思ってやってくれたことは皆わかってるから。それに、あの客も多分もうしないよ。」
亜樹「わかったよ。今度からは気をつけるよ。」
尼音「わかればよろしい。」
そういうと、飯島さんの頭をわしゃわしゃ撫でた。
亜樹「やめろ!もう行くからな。」
孝太郎「あっ。飯島さん。」
亜樹「あ?なんだ?」
孝太郎「さっきはありがとうございます。」
亜樹「なんでお前が礼言うんだよ?」
孝太郎「いや、ネムは俺の友達だから。俺も助けようと思ったんだけど、足が動かなくて、だから、飯島さんは凄いなと思いました。」
亜樹「別にたいしたことじゃねぇよ。それと、その飯島さんっていうのやめろ。」
孝太郎「えっ。じゃあなんて呼べば?」
亜樹「下の名前で呼べばいいだろ。」
孝太郎「それじゃあ、亜樹さんで。」
亜樹「おう。仕事戻るぞ。孝太郎。」
孝太郎「はい。」
そんな感じでバイトをしていたある日。
孝太郎「それじゃあ、お先に失礼します。」
ネム「お先です。」
里夏「お疲れ様。」
孝太郎「あれっ。亜樹さんは?」
里夏「あ~。多分。あそこじゃないかな。」
そう言われて喫茶店の裏小屋みたいな所に案内された。
中に入ると亜樹さんがギターを弾いていた。
亜樹「あっ。孝太郎とネムさん。なんでここに。」
孝太郎「すみません。勝手に入ってきて。里夏さんに多分ここだろうって。」
亜樹「里夏のやつ。まぁいいか。ここを使わせてもらってんだよ。」
孝太郎「亜樹さん。ギター弾けるんですね。」
亜樹「まぁまだまだだけどな。」
孝太郎「いや、カッコいいですよ。」
亜樹「尼音さんの影響で始めたんだよ。あの人喫茶店やる前はバンドやっててさ。それが、カッコよくて俺も始めたんだよ。」
孝太郎「そうだったんですね。だから、ギター教えてやらないぞって。」
亜樹「このことは尼音さんには内緒な。」
孝太郎「わかりました。」
ネム「なんで内緒なんだ?」
亜樹「えっ。いや、その、尼音さん。あまり昔の話すると怒るから。」
ネム「なるほど、了解。」
孝太郎「それじゃあ、俺達は先に帰りますね。」
ネム「お先です。」
亜樹「あー。孝太郎。少しだけいいか?話がある。」
孝太郎「わかりました。ネム悪いけど、少し待っててもらっていいか?」
ネム「別にかまわないぞ。」
そういうとネムだけ部屋から出ていった。
孝太郎「それで、話ってなんですか?」
亜樹「単刀直入に聞くぞ。お前達は付き合ってるのか?」
孝太郎「へっ?」
亜樹「どうなんだ?」
孝太郎「えっと、付き合ってません。」
亜樹「そうか~。」
孝太郎「亜樹さんもしかしてネムのことが。」
亜樹「好きになっちまったみたいだ。」
孝太郎「そうですか。」
亜樹「ネムさんは今付き合ってる人はいるのか?」
孝太郎「いや、いないと思います。」
亜樹「そうか~。よし。なら、やるしかないな。」
孝太郎「何をですか?」
亜樹「告白に決まってるだろ。ただ、今の段階で告白しても可能性は低い。だから、お前にも協力してほしい。」
孝太郎「うーん。わかりました。」
亜樹「本当か?助かる。そこで、まず何をすればいい?」
孝太郎「うーん。」
尼音「そんなもん。ライブに決まってんだろ。」
亜樹、孝太郎「?!」
亜樹「なっ。いつ。」
尼音「今さっきな。心配するな。ネムちゃんなら店にいる。」
亜樹「なら良かった。そんで、ライブって言ってもどこで?」
尼音「学園祭しかないだろ。学園祭でライブしたら絶対大丈夫だって。」
亜樹「学園祭か、でも、俺あまり学校で評判よく無いしな。」
尼音「そんなもん。祭なんだから気にすんなよ。祭は楽しんだもん勝ちだ。」
亜樹「つってもメンバーがな。」
尼音「そんなもん。自分で探しな。」
孝太郎「俺でできることなら、協力しますよ。」
亜樹「孝太郎、何か楽器できんのか?」
孝太郎「いえ、何も。」
亜樹「なら、ドラムかな。」
尼音「楽器はここにあるの使えばいいからな。私も基礎ぐらいなら教えてやるよ。」
孝太郎「ありがとうございます。」
尼音「まぁせいぜい頑張んな。若いうちにやれることはやっときな。」
亜樹「なんかわりぃな。」
孝太郎「気にしないで下さい。頑張りましょう。」
亜樹「あぁ。」
こうして学園祭に向けて練習が始まった。
バイトが無い日も集まって練習するようになった。
そのおかげでだいぶ出来るようになってきたが、肝心な問題が残っていた。
亜樹「残りのメンバーをどうするかだな。」
孝太郎「そうですね。」
亜樹「誰か知り合いとかいないのか?」
孝太郎「すみません。」
亜樹「どうするかな~。」
ネム「失礼します。」
亜樹「えっ。」
孝太郎「あっ。」
ネム「孝太郎。最近バイトでもないのに何をしてるのかと思えば、楽器を練習していたのか。」
里夏「本当だね。まさか孝太郎君まで練習してたとは、これは何かありそうだね。」
ネム「孝太郎。説明して。」
孝太郎「亜樹さん。」
亜樹「はぁ。わかったよ。」
亜樹さんは二人に学園祭でライブをすることを話した。
里夏「なるほどねぇ。それで、あと何人必要なの?」
亜樹「二人。」
里夏「じゃあ、問題解決だね。」
亜樹「問題解決ってまさか。」
里夏「そう。私とネムちゃんが加われば万事OKでしょ?ねっネムちゃん。」
ネム「OK。」
亜樹「はぁ。しょうがねぇな。」
尼音「おっ。メンバー揃ったみたいだな。それじゃあ、本格的にバンド活動開始だな。」
里夏「バンド名はどうしようか?」
亜樹「バンド名?そんなもんいるのか?」
里夏「学園祭でやるんならいるでしょ。」
亜樹「うーん。俺はそういうのは苦手だからお前らに任せる。」
里夏「うーん。何がいいかな。ネムちゃん何かない?」
ネム「猫。」
里夏「猫かぁ。」
孝太郎「猫。猫の喫茶店なんてどうですか?」
里夏「安直だけど、それでいいか。」
ネム「いい。」
亜樹「猫の喫茶店って。まぁいいか。」
尼音「それじゃあ、練習始めようか。学園祭に向けて頑張るぞー」
皆「おー。」
こうして学園祭に向けて本格的に練習が始まった。
里夏さんがキーボード。ネムがベース。俺がドラムで亜樹さんがギターとボーカル。
里夏さんはピアノを習っていたので、そこまで問題なく、ネムも驚異のスピードで上達していった。
学園祭の日に近づいてきたある日
里夏「ところで、学園祭でライブするって申請は出したの?」
亜樹「いや、まだだ。」
里夏「早めに申請だした方がいいかもね。」
亜樹「わかったよ。孝太郎。明日の放課後一緒に来てくれないか?」
孝太郎「わかりました。」
次の日の放課後
俺は亜樹さんと生徒会室まで来ていた。
コンコン
生徒会長「どうぞ。」
孝太郎「失礼します。」
生徒会室には生徒会長しかいなかった。
亜樹「っ。」
亜樹さんがいやな顔をした。
そういえば、生徒会長の飯島希さんも亜樹さんと同じ名字だな。
まさか、お姉さん?
孝太郎「あの学園祭でライブをやりたいんですけど。」
希「申請書を見せてもらってもいいかしら。」
俺は生徒会長に申請書を渡した。
希「なるほど、このバンドのリーダーは飯島君でいいのよね?」
孝太郎「はい。」
希「そう。うーん。正直難しいかもしれないわね。」
亜樹「なっ。なんで、ですか。」
希「君たちは正式なうちの部活ではないし、外で活動をしている実績もない。そうなってくると、そのバンドの学生がどのような学生なのかが重要になってくる。特にリーダーの飯島君。」
亜樹「何が言いたいんだよ。」
孝太郎「亜樹さん。」
すると、生徒会長はいいのって感じで手をだした。
希「これはあくまでも私個人の意見ではなくて世間一般的な考えからだけど、素行が悪い生徒が率いているバンドをうちの学園祭のライブで使うのは厳しいという判断になってしまう。」
亜樹「くっ。結局そこか。ようは俺だから、駄目なんだろ。」
希「そうね。今のままでは駄目ね。だから、今度の期末テストで半分よりも上の順位になりなさい。そうしたら、その頑張りを見て判断してくれるはずよ。」
亜樹「わかったよ。期末でいい点をとればいいんだな。やってやるよ。行くぞ、孝太郎。」
そういうと亜樹さんは生徒会室から出て行った。
孝太郎「すみません。失礼します。」
希「あっ。ちょっと待ってくれる?」
孝太郎「はい?」
希「あの子に付き合ってくれてありがとうね。あの子あんなだけど、根はいい子だから。これからもよろしくね。」
孝太郎「はい。」
そういうと俺も生徒会室からでて行った。
それから、バンドの練習をしながら亜樹さんは勉強もするようになった。
正直亜樹さんの現在の成績で学年順位を半分より上回るのはとても厳しいと思う。
それでも、亜樹さんは諦めずに勉強をした。
そして、期末テスト当日
亜樹「大丈夫だ。あれだけやったんだからな。」
先生「はじめっ。」
テストが始まった。
テストも残すところ一教科。
その休み時間
不良A「おっ。飯島じゃねぇか。」
不良B「本当だ。珍しいな。お前が学校に来るなんてな。」
亜樹「悪いが、今はお前らの相手をしてる余裕がない。どっか行ってくれ。」
不良A「なんだと!」
不良Aが亜樹の胸ぐらを掴んだ。
先生「お前達何をしてるんだ。」
不良A「うるせぇな。」
先生「先生に向かってなんだ!その態度は。三人ともこっちに来なさい。」
亜樹「なっ。俺は関係ないって。」
先生「いいから来なさい。」
そういうと先生に三人とも連れていかれた。
テストが終わり放課後
孝太郎「あっ。亜樹さん。遅かったですね。」
亜樹「あぁ。悪いな。」
孝太郎「それじゃあ、行きましょう。」
俺達は尼音さんの喫茶店でテストお疲れ様会をやる予定だった。
喫茶店について皆が集まりお疲れ様会を始めようとした時に亜樹さんが喋り始めた。
亜樹「皆、その。すまない。」
孝太郎「えっ。どうしたんですか?」
亜樹「実はテスト一教科だけ受けられなかったんだ。」
孝太郎「えっ。」
亜樹「先生に頼んだんだけど、駄目だって言われて、だから、すまない。」
里夏「まぁでも生徒会長って飯島君のお姉さんなんだよね?なら、少しぐらいなんとかしてくれるんじゃない?」
亜樹「俺は姉とはあまりいや、全然話してないから、多分嫌われてると思う。まぁ無理もないわな。片方は生徒会長で片方は不良だからな。」
孝太郎「それでも、亜樹さんの頑張りはきっと生徒会長や先生方に伝わってると思います。」
ネム「あとは結果を待つしかないな。」
それからしばらくして、学園祭での会議中。
希「それでは、ステージイベントについてですが、ライブをしたいという申請がありました。」
先生A「ふむ。飯島亜樹が率いているバンドか。」
先生B「飯島は最近学校にも来ていて授業にも積極的に取り組んでいたみたいだが。」
先生A「だが、期末テストの結果は順位だけ見ると前とあまり変わらんな。」
先生B「最後の教科のテストの時に他の生徒と揉み合いになっていたらしいですね。それで、テストを受けられなかったと。」
生徒A「まぁ自業自得だな。よってこのバンドもライブをさせるわけにはいかないな。」
希「少し待ってもらってもよろしいですか?」
先生A「何かな?」
希「揉み合いの件ですが、同じクラスの子が飯島君は絡まれただけで、彼は何も悪くないと証言していました。」
先生B「なるほど、だが、先ほども言ったがそれも彼の今までの行いの結果にすぎない。学園祭当日もそのせいでライブ中止になったらどうするつもりだ?」
希「ライブのセキュリティの問題は私達生徒会の問題でもあります。ライブだけでなく、学園祭が上手くいくために最善をつくします。」
希「ですから、ライブをさせてあげられないでしょうか。これは私個人の見解ではなく、生徒会全員の見解です。」
先生A「お前達がそこまで言うのなら任せよう。」
希「ありがとうございます。」
次の日生徒会のメンバーの方からライブが出来ることが知らされた。
亜樹さんは驚いていたが、これで何の心配もなく本番を迎えることが出来る。
本番まであとわずか、皆でライブの練習に励んだ。
喫茶店でもチラシを配り準備は万端だ。
そう誰もが思っていた。
俺は練習している時に亜樹さんの演奏を聞くことが多い。
演奏事態には問題はない。
ただ、亜樹さんは何かを隠そうとしていた。
それが逆に俺には違和感を覚えた。
亜樹さんの様子がおかしい。
そんなことを思いながらも言い出せずについに学園祭当日。
その嫌な予感が的中してしまう。
俺は亜樹さんの首に死の首輪を見つけてしまった。
何故。どうして。俺はわからなかった。あの亜樹さんが死ぬ?
亜樹「孝太郎。」
孝太郎「…。」
亜樹「孝太郎!」
孝太郎「あっはい。すみません。考えごとをしていました。」
亜樹「俺はこのライブが終わったらネムちゃんに告白する。」
孝太郎「はい。」
亜樹「ありがとうな。孝太郎。」
孝太郎「えっ。」
亜樹「こんな俺に付き合ってくれて、俺は今まで人と接するのが苦手で、避けてきた。それで誰にも迷惑をかけないのなら、それでいいと思っていた。」
亜樹「なのに、気づいたらお前達とこうしてバンドを組んでいる。それでも、今は後悔していない。一人じゃ決して立てない場所に立てる。人は誰かと繋がっていないと思っていても繋がっているもんなんだよな。」
孝太郎「そうですね。こちらこそ、ありがとうございます!」
そうだ。今はライブに集中しよう。
例えこれが最初で最後でも
里夏「やっほー。緊張してきたね。」
ネム「いよいよだな。」
亜樹「よしっ。お前ら行くぞ!」
皆「おー。」
ステージに出ると観客は満員だった。
客席を見渡すと席には両親と姉の希、尼音さんがいた。
俺はいや俺達は力いっぱい演奏した。
今までで最高の気分だった。
最後の曲が終わって俺は気を失いそうになったが、堪えた。
ライブが終わった。
正直内容はあまり覚えてない。
ただ、ただ、最高に気持ち良かった。
俺は小さな声で孝太郎を呼んだ。
孝太郎「なんですか、亜樹さん。」
亜樹「悪い。少し疲れちまった。横になりたい。」
孝太郎「わかりました。保健室まで送ります。」
里夏「オイオイリーダー大丈夫か?」
ネム「大丈夫か?」
亜樹「大丈夫だ。少しだけ寝かせてくれ。悪いな。」
里夏「この後喫茶店で飲み会だからなー。」
亜樹「あぁ。」
孝太郎「それじゃあ、亜樹さん行きましょう。」
俺は亜樹さんの肩を支えながら保健室まで連れていった。
保健室のベッドで横になる。
亜樹「悪いな。少しだけ寝るわ。」
孝太郎「わかりました。俺は外で待ってるんで、何かあったら呼んで下さい。」
亜樹「あぁ。わかった。」
俺は保健室から出た。
しばらくして保健室の扉が開いた。
亜樹「孝太郎か?」
希「私。ここで寝てるって聞いたから、大丈夫?」
亜樹「あぁ。大丈夫だ。少し疲れただけだ。」
希「そう。それならいいけど。」
亜樹「…。」
希「…。」
希「ライブ。凄かったわ。」
亜樹「あぁ。皆のおかげだな。」
希「亜樹もよく頑張ったわね。バイトに勉強も尼音さんに聞いたわ。」
亜樹「あぁ。まったくあの人は。」
亜樹「その、ごめん。いろいろ迷惑かけて。」
希「バカね。私は亜樹の姉なんだから、心配して当然なんだから。だから、そんなこと気にしなくていいのよ。」
亜樹「そうか。そうだったな。」
亜樹「姉ちゃん。俺そろそろ寝るわ。」
希「うん。おやすみなさい。」
亜樹「おやすみ。ありがとう。」
しばらくして保健室から希さんが出てきた。
孝太郎「亜樹さんは?」
希「寝たわ。悪いわね。付き添わせてしまって。私もまだやらないといけないことがあるから。」
孝太郎「大丈夫ですよ。気にしないで下さい。」
希「それじゃあ、亜樹のことよろしくね。」
孝太郎「はい。」
それから、亜樹さんが目を覚ますことはなかった。
亜樹さんが余命を宣告されていたことは後でわかったことだった。
それを聞いた希さんはずっと泣いていたらしい。
希「私は姉失格ね。亜樹には苦しい思いをさせてしまった。」
孝太郎「亜樹さんはとても優しい人でした。常に他の人のことを考えていて、他の人が傷つくぐらいなら自分が傷つくことを選ぶ。そんな人でした。」
希「私はあの子の苦しみを何も理解できなかった。あの子の優しさに甘えていた。あの子が私を避け始めた時に男の子だからしょうがないと思っていた。それからも段々と状態は悪化していったけど、あなた達と出会って変われたみたいだった。」
希「あの子と亜樹と最後まで付き合ってくれてありがとう。」
孝太郎「それは、違います。俺達は付き合ってたとかじゃありません。ただ一緒にいただけなんです。俺も感謝してます。最高の時間をありがとうと。」
俺は目を閉じるとあの時の光景が皆で演奏した曲が亜樹さんの歌声が流れてくる。
でも、もう二度とあの瞬間は訪れないのだと思った。