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死神と死を見る青年  作者: 火神ツバメ
3/5

死神と死を見る青年 第3話 野坂英梨編

私「ふっふっふーふー。」


男の子「???折り紙折ってるのか?」


私「うん。」


男の子「何折ってるんだ?」


私「うんとねー。鶴!」


男の子「???鶴なんて折れるのか!凄いな!俺は飛行機しか折れないや。」


私「じゃあ、教えてあげようか?」


男の子「うーん。また今度な!俺、遊ぶ約束してるから。そんじゃあな!」


私「あっ行っちゃった。」


ピピッピ。ピピッピ。


目覚まし時計のアラームで目が覚めた。


孝太郎の家で寝るようになって時々同じ男の子と女の子の夢を見る。

あの男の子と女の子は誰なんだろうか?

どうして、懐かしいと思うのだろうか?

いつかわかる日が来るのだろうか。

そんなことを想いながら朝食の準備を始めた。

最近では私の方が孝太郎よりも早く起きることが多いため、私が朝食を作るようになった。


孝太郎「おはよう。」


ネム「おはよう。今、朝食作るから。少し待ってて。」


孝太郎「ふぁーい。」


そう言うと、孝太郎は顔を洗いに行った。


さて、今日も1日が始まる。


里夏「あっ。お二人さん。おはよう!」


孝太郎「あっ。里夏さん。おはようございます。」


ネム「おはようございます。」


通学途中に里夏さんにあった。

まぁ同じマンションだし、同じ学校だから、通学路も自ずと同じになり、会うのも多い。


里夏「二人は本当に仲良しだね。本当に付き合ってないの~。」


孝太郎「付き合ってません。ネムとは本当にただの友達です。」


ネム「…。」


里夏「ふーん。まぁそこまで言うなら別にいいけどね。」


里夏「あっ野坂さん。おはようございます。」


野坂「あら、里夏ちゃん。おはよう。今から学校?」


里夏「はい。野坂さんは…娘さんの所ですか?」


野坂「えぇ。今日は起きてる日だからね。えっと、そちらの二人はお友達?」


里夏「はい。同じマンションに住んでる杉並君と杉並君の友達のネムちゃんです。」


孝太郎「杉並孝太郎です。はじめまして。」


ネム「はじめまして。」


野坂「はじめまして。野坂麻衣子です。里夏ちゃんとはボランティアで知り合いになったのよね。」


里夏「はい。あっすみません。足を止めてしまって。英梨ちゃんによろしく伝えて下さい。」


野坂「えぇ。ありがとう。学校頑張ってね。それじゃ。」


里夏「野坂さんの娘さんは病気で中学ぐらいからずっと病院にいるの。野坂さんも毎日大変よね。」


孝太郎「さっき、今日は起きてる日だって言ってましたけど。」


里夏「私も詳しくは知らないけど、珍しい病気らしくて、1日おきに目が覚めるんだって。だから、起きて、次の日はずっと寝てるらしいよ。」


孝太郎「そうなんですか。」


その頃、病院


コンコン。


英梨「はーい。」


野坂母「入るわよ。」


英梨「ママ。おはよう。」


野坂母「おはよう。気分はどう?」


英梨「全然大丈夫だよ。それよりもあれ買ってきてくれた?」


野坂母「はい。これ。月刊クルジャンで良かったわよね。」


英梨「そうそう。これこれ。ありがとう。ママ。」


英梨は母から漫画雑誌を受けとると、ある漫画を読み始めた。


しばらくして。


英梨「ふー。やっぱり栗崎先生の明日に咲く花は面白いなー。早く続きが読みたい。」


英梨が読んでいる「明日に咲く花」は月刊クルジャンで連載されている原作栗崎アイ、脚本栗崎ケイが書いている、少女漫画である。

現在は上巻が単行本として出ている。


最近ネムは本を読むことが増えた。

その中でも、明日に咲く花はお気に入りでよく読んでいる。

俺も気になって読んでみたが、少女漫画なのだが、男の俺が読んでも面白かった。

そのせいもあって、最近放課後は図書室に行くことが増えた。


放課後の図書室はほとんど人がいない。


ただし、一人を除いてだが。


毎回俺達が図書室に行くと同じ席に同じ女の子が座って本を読んでいる。


その子の名前は真倉香織。


何故名前を知っているのかと言うと、クラスメイトだからである。


彼女は教室でも基本的に読書をしている。


それだけ、本が好きなんだろう。


しかし、彼女は少し変わっていて、1日おきに学校を休むのである。


だから、月曜日来たら火曜日と木曜日は休むのである。


身体が弱いのか詳しい理由は誰も知らない。


そもそも彼女には誰も話し掛けようとしない。


まぁ無理もない。


常に休み時間は読書をしていて、人と話をしているのをほとんど見たことがない。


まぁ俺も他人の心配をしている場合ではないが。


ネムが本を探してきて読んでいる間、俺は宿題を済ませている。


ネムが読み終わってからいつも俺達が先に帰るのだが、その日は珍しく真倉さんが先に帰った。


真倉さんが帰った後、しばらくしてネムが読み終わったみたいなので、帰ることにした。


ネム「孝太郎。」


孝太郎「ん?どうした?」


ネム「あれ。」


ネムが指を指した先には一冊の本が椅子に置いてあった。


手に取ろうとした時に間違って落としてしまい、拾おうとしたら、カバーがとれてしまった。


孝太郎「あっ。これ。」


ネム「明日に咲く花。」


孝太郎「本当だ。」


その時、図書室の扉が開いた。


入ってきたのはさっき出ていった真倉さんだった。


入ってきてこちらを見てびっくりした顔をしていた。


孝太郎「えっと、これ真倉さんの本かな?」


俺はそっとカバーを戻して真倉さんに見せた。


真倉「あっ、その、うん。」


孝太郎「良かった~。はい。」


真倉「あの、ありがとう。」


ネム「真倉さんもその漫画好きなのか?」


真倉「えっ。」


ネム「明日に咲く花。」


真倉「えっと。」


孝太郎「明日に咲く花。面白いよね!ネムさんが好きで、その影響で俺も読んだんだけど、男の俺が読んでも面白かった。うん。」


真倉「そうなんですか。あの。私も好きです。それじゃあ、私はこれで。」


孝太郎「うん。さようなら。」


真倉「さようなら。」


そう言うと、彼女は帰っていった。


孝太郎「ふぅ。なんとか返せて良かったな。」


でも、真倉さんも少女漫画とか読むんだな。小説を読んでるイメージだったから意外だった。


孝太郎「俺達も帰ろうか。」


ネム「うん。」


真倉香織の自宅にて


香織「杉並君とネムさんに私が読んでる本のことがバレちゃった。恥ずかしい。」


香織「でも、二人とも明日に咲く花を読んでくれてるって言ってた。嬉しいなー。」


香織「あっ、日記書かなきゃ。」


香織は毎日その日あったことを日記に書いている。


香織「ケイは驚くかな。ふふっ。」


それからしばらくして、ある日の休日。


ネム「孝太郎。孝太郎。」


孝太郎「どうしたんだ?そんなにあわてて。」


ネム「明日に咲く花の作者の栗崎ケイさんのサイン会が今日、隣町の本屋でやるみたいなんだ!」


孝太郎「えっ。そうなんだ。」


ネム「だから、行こう!」


孝太郎「うっうん。」


ネムの迫力に圧されてサイン会に行くことにした。


本屋につくと少しだが、列ができていた。


並ぼうとしたら、前に知っている人が並んでいた。


孝太郎「野坂さんですよね?」


野坂母「えっ。あっ、杉並君とネムさん。こんな所で会うなんて奇遇ね。二人もサインを貰いに来たの?」


孝太郎「あっはい。野坂さんも?」


野坂母「えぇ。娘が大好きで、サイン貰ってきてって。ふふっ。」


孝太郎「そうなんですか。」


スタッフ「お待たせしました。今からサイン会の方を始めたいと思います。」


サイン会が始まった。次々とサインを貰って嬉しそうにしている。


ネム「なんだか、緊張してきた。孝太郎。私、変じゃないか?」


孝太郎「えっ。いつも通りだと思うけど。」


ネム「いつも通りじゃ駄目だ!今から新しい服を買ってくる!」


孝太郎「ちょっ。そんな時間無いから。」


ネム「う~。」


そして、野坂さんの番まで来た。


栗崎ケイ「どうも。はじめまして。本を読んでくれてありがとうございます!それじゃあ、お名前を教えて下さい。」


野坂母「はい。野坂英梨でお願いします。」


栗崎ケイ「野坂英梨…。あっごめんなさい。どこかで聞いたことがあるような気がしたので、すみません。はい。書けました!」


野坂母「ありがとうございます。娘も喜ぶと思います。」


スタッフ「では、次の方。」


孝太郎「はい。」


栗崎ケイ「どうも。はじめまして。本を読んでくれてありがとうございます。それじゃあ、お名前を教えて下さい。」


孝太郎「杉並孝太郎です。」


栗崎ケイ「孝太郎君ね。孝太郎君。孝太郎君?!」


孝太郎「はい。どうかしましたか?」


栗崎ケイ「あ~。えっと、ちょっと質問なんだけど、孝太郎君って○○高校に通ってる?」


孝太郎「えっ。はい。どうして知ってるんですか?」


栗崎ケイ「はっはーん。なるほど、なるほど。貴方が杉並孝太郎君か。あっ、ごめんなさいね。はい。サイン。それと、これ私のスマホのメールアドレスね。何かあったら、連絡してね。あっでも忙しいから、火曜日と木曜日と土曜日だけにしてくれる?絶対メールしてね?約束だからね。」


孝太郎「えっ。えっ。」


栗崎ケイ「はーい。じゃあ次の方どうぞ!」


ネム「ネムです。大ファンです!」


栗崎ケイ「あっ、ありがとうございます!」


こうしてサイン会は終わった。


サイン会が終わった後、俺はこっそり栗崎ケイ先生にメールを送った。


返事はすぐに帰ってきた。

メールありがとう。

これからよろしくね。


栗崎ケイ



それからしばらくして、ある日の平日。

栗崎ケイ先生からメールが来た。


緊急事態発生


今週の日曜日空いてる?


空いてたら○○喫茶店に来てくれないかな?


栗崎ケイ


孝太郎「どうしたんだろう?」


ネム「どうした?」


孝太郎「いや、栗崎ケイ先生からこんなメールが来たんだけど。」


ネム「ちょっと待て。なんで、栗崎ケイ先生のメールアドレスを知っているんだ?」


孝太郎「えっ。サイン会の時に教えてもらったんだけど。」


ネム「私は教えてもらってないぞ。」


孝太郎「えっ。なんでだろう。それより、このメールどう思う?」


ネム「…。緊急事態!今すぐ行こう!」


孝太郎「いや、日曜日だから、今行ってもしょうがないから。」


まぁ特に用事もなかったし、大丈夫ですと返信した。


そして、当日。


俺とネムは指定された喫茶店に来ていた。


しばらく待っていると、知らない大人の女の人から声をかけられた。


女の人「失礼ですが、杉並孝太郎さんとネムさんでよろしかったですか?」


孝太郎「はい。そうですけど。」


女の人「どうも。はじめまして。わたくし栗崎アイ先生と栗崎ケイ先生の担当をしています。月刊クルジャンの編集の渡部紀子と申します。」


渡部「今日はお忙しい中、わざわざお越し頂きありがとうございます。栗崎先生に代わりお礼申し上げます。」


孝太郎「いえいえ、それで、先生は?」


渡部「先生はただいま、忙しく外に出られない状態ですので、代わりにわたくしがお二人の案内を承りました。」


孝太郎「案内?どこにですか?」


渡部「栗崎先生のお部屋です。」


ネム「栗崎先生の部屋!行きます!」


渡部「わかりました。それでは行きましょう。先生がお待ちです。」


俺達は渡部さんに連れられて、栗崎先生達がいるマンションまで連れてこられた。


渡部さんがチャイムを鳴らす。


?「はい。渡部さんですか?」


渡部「はい。渡部です。先生、お待たせしました。お二人をお連れしました。」


?「えっ。二人って。えっ。杉並君とネムさん。どうして?」


孝太郎「えっ。真倉さん?先生ってあー。栗崎ケイ先生を見た時に誰かに似てると思ったら、真倉だったのか!眼鏡をかけていなかったからわからなかったよ。」


真倉香織「眼鏡…。あっ。それは多分ケイのことかな。ケイは私の双子の妹なの。」


孝太郎「そうだったんだ。」


ネム「真倉が栗崎先生だったなんて。私は栗崎先生に対してなんて生意気なことを。恥ずかしい。死にたい。」


死神の口から死にたいって言葉が出るとは。


渡部「えー。こほん。栗崎先生。それではわたくしは失礼しますね。今週分の原稿は遅れないようにお願いします。杉並さんとネムさんも失礼します。」


孝太郎「あっどうも。」


香織「えっと、そのとりあえず、入いりますか?」


孝太郎「あっうん。お邪魔します。」


ネム「失礼します。」


部屋に入ると机が二つあり一つは漫画家さんが作画するように使う感じの机でもう1つは普通の机に原稿用紙が並んでいる。


棚には漫画や小説が置いてあった。


香織「今日はわざわざ来てもらってごめんなさい。多分、ケイに言われたんですよね?」


孝太郎「あっうん。メールで緊急事態だって言ってたからどうしたのかなって思って。」


香織「ごめんなさい。」


孝太郎「いや、俺達は別に大丈夫なんだけど、改めて確認なんだけど、真倉さんが栗崎アイ先生で双子の妹さんが栗崎ケイ先生で二人で漫画を書いてるんだよね。」


香織「はい。私が物語を考えてケイが作画してます。」


孝太郎「そうなんだ。ところで、ケイ先生は?」


香織「えっと、ごめんなさい。今日は用事があるらしくて出かけちゃったのごめんなさい。」


孝太郎「そうなんだ。緊急事態ってなんだったんだろう。」


香織「そのことなんだけど、もし良かったら二人に協力してほしいことがあるの。」


孝太郎「何をすればいいの?」


ネム「なんでもやります!」


香織「漫画を描くのを手伝ってほしいんです。締め切りが今日中で、大体はできてるんだけど、あと細々した作業が残っていて。本当はケイがやる予定だったんだけど、終わらなかったみたいで。」


俺はふとテレビに繋がっているゲーム機に目がいってしまった。


疑うのはよくないよな~。


孝太郎「俺達なんかで大丈夫かな?」


香織「大丈夫だと思います。簡単な作業だから、私も一緒にやるから。」


ネム「了解しました!」


孝太郎「わかったよ。皆で頑張ろう!」


香織「ありがとうございます。」


真倉さんに教わりながら作業を始めた。


黙々と作業をして夕方。


孝太郎「これで終わりかな?」


香織「はい。ありがとうございました。」


ネム「疲れた。」


なんとか作業を終えることが出来た。


孝太郎「漫画を描くのは大変だね。」


香織「はい。でも、読者の方がいるから頑張れます。それに、ケイもいるから。」


孝太郎「そっか。真倉さん達は二人でここに住んでるの?」


香織「はい。田舎から引っ越してきました。」


孝太郎「そうなんだ。俺もそうだから、少しだけど、気持ちがわかるよ。」


香織「そうなんですね。」


孝太郎「また何かあったら、連絡してくれればまた来るから。」


ネム「いつでも呼んで下さい。」


香織「二人とも本当にありがとう。」


孝太郎「それじゃあ、そろそろ帰るよ。」


ネム「さようなら。」


香織「はい。さようなら。」


香織「ふぅ。まったくケイったらいつの間に杉並君と連絡とってたんだろう。サイン会のことも知らなかったし。また注意しないと。」


香織は日記に今日あったことを書いた。




それからしばらくして、ある日の平日。


今日も普通に学校に通学すると今日はいつもと違うことが起きた。


それは、


真倉「すみません。遅れましたー。」


先生「おぉ。真倉。珍しいなお前が遅刻とは。早く席に着きなさい。」


真倉「はい。えっと、私の席はー。あそこか。」


他の人はあまり気にしていなかったが、俺には違和感しかなかった。


だって今日は火曜日で火曜日と木曜日は真倉さんはいつも休んでいたからだ。


だが、今日は来た。


そして、いつもと雰囲気が違う。


まるで、別人だ。


まさか、ケイさん?まさかな。


昼休み


真倉「孝太郎君。一緒にお昼食べない?」


孝太郎「えっ。あっ。いいよ。学食でいい?」


真倉「うん。」


ネム「珍しいな。いつも弁当なのに。」


真倉「あー。今日は寝坊しちゃって。」


孝太郎「まぁそういう時もあるよね。それじゃあ、行こうか。」


真倉「へー。ここが学食。」


ネム「来たことなかったのか?」


真倉「あー。うん。多分。」


ネム「ここのB定食がオススメだな。」


真倉「へー。孝太郎君はどうするの?」


孝太郎「うーん。俺は日替わりランチかな。」


真倉「じゃあ、私もそれで!」


三人でご飯を食べることに


孝太郎「最近は漫画の方はどう?大丈夫?」


真倉「うん。今はアイの方がメインだからねー。」


ネム「ん?アイ先生って自分じゃないのか?」


真倉「えっ。あっ。そう。だから、大変で大変で。あはは。」


孝太郎「…。」


里夏「あっいた。探したわよ!」


孝太郎「あっ。里夏さん。どうしたんですか?」


里夏「いやー。お食事中にごめんね。実はちょっとお願いがあってさ。」


ネム「私達にか?」


里夏「そう。野坂さん覚えてる?」


孝太郎「はい。」


里夏「その野坂さんの娘さんが入院してる病院で何か子供達に出来ないかって話があって。私、野坂さんに任せて下さいって言っちゃったんだよね。」


孝太郎「はぁ。それで、俺達にも協力してほしいって感じですか。」


里夏「さっすが孝太郎君。察しがいいね。その通り。何かないかな?」


孝太郎「うーん。何かですか。それはいつなんですか?」


里夏「来週の日曜日なんだよね。」


孝太郎「もうあまり時間がないですね。」


ネム「劇なんてどうだ?」


里夏「うーん。悪くないけど、時間がないからなー。」


孝太郎「じゃあ、紙芝居はどうかな?」


里夏「おぉ。いいんじゃない!でも、私、絵とか描けないよ。それに、ありものじゃ満足してくれないかも。」


孝太郎「うーん。絵が描けて、物語を考えられる人。」


真倉「ふっふっふ。いるじゃないか!ここに!」


里夏「えっと、誰?」


孝太郎「えっと、俺のクラスメイトの真倉香織さんです。確かに真倉さんなら申し分ないけど、大丈夫?」


真倉「大丈夫!そのくらいなら多分大丈夫。」


孝太郎「でも、ケイさんにも聞いてみないと。」


真倉「私じゃなかった。ケイなら大丈夫。私が説得するから。」


孝太郎「そうですか。じゃあ、とりあえず、そんな感じで。放課後にどこかに集まって考えますか。」


里夏「なんだかよくわからないけど、頑張ろう!」


ネム「おー。」


こうして俺達は紙芝居をやることになった。


ケイ「さて、アイに説明しないとな。」


ケイはその日のことを日記に書いた。


そして次の日の放課後。


孝太郎「えっと、真倉さん。そろそろ行こうか。」


真倉「はい。えっと、紙芝居の件ですよね。」


孝太郎「うん。ごめんね。忙しいのに。」


真倉「いえ。大丈夫です。」


放課後、俺の家で紙芝居について話し合いをすることになった。


里夏「まずはどんなお話にするかだよね。」


孝太郎「病院にいる子供達に病気に負けない子供達になって欲しいですよね。」


ネム「バトルものか」


真倉「あの。」


里夏「バトルものよりお笑いがいいんじゃない?」


孝太郎「ギャグですか?」


真倉「あのー。」


ネム「いや、バトルだろう!」


里夏「ギャグ!」


真倉「あの!」


孝太郎「あっ。ごめん。真倉さん。どうぞ。」


真倉「私、いくつか考えてきました。」


里夏「へ~。どれどれ。」


孝太郎「えっ。1日でこんなに考えてきたの?」


ネム「流石です。」


真倉「物語を考えるの好きだから。」


里夏「うん。いいんじゃない?この中から決めよう!」


孝太郎「賛成です。」


ネム「異議なし。」


皆で真倉さんが書いてきたシナリオを読んでみることに


真倉「まだ入り口の部分だけですけど。」


皆で読んで1つに絞った。


里夏「うん。じゃあ、これで進めよう。基本的には真倉さんがシナリオを考え私達が各々意見を言いあう感じでどうかな?」


孝太郎「それでいいと思います。」


里夏「あとは絵だな。」


真倉「絵は私の妹が書けます。」


里夏「妹さんが?」


孝太郎「真倉さんの妹さんはめちゃくちゃ絵が上手いから大丈夫です。」


里夏「そうなの?まぁそういうんなら任せようかな。背景とか私達も協力して描こう。」


孝太郎「はい。」


ネム「了解。」


次の日の放課後


里夏「えっと、貴方が真倉香織さんの妹さん?」


ケイ「うん。香織の妹のケイです。」


里夏「お姉さんにそっくりね。眼鏡を外しただけって感じ。」


ケイ「あはは。よく言われます。」


里夏「えっと、お姉さんの方は?」


ケイ「すみません。姉は今日は来れません。」


孝太郎「えっと、真倉さんの家の事情で二人一緒には来れないんだよね?」


ケイ「そう。そうなんですよ。」


里夏「そうなんだ。いろいろあるのね。それじゃあ、作業を始めましょうか。」


孝太郎「ケイさん。大体事情は聞いてますか?」


ケイ「うん。全部聞いてるから大丈夫だよ。」


孝太郎「それなら良かったです。」


ケイ「さっきは助けてくれてありがとうね。」


孝太郎「いえいえ。」


こうして皆で協力して作業を行った。


当日


里夏「さて、ついにこの日が来たわね。皆のおかげで、なんとか紙芝居を完成させることができました!あとは役になりきって演じるだけね。真倉さんの妹さんが来れないのは残念だけど。」


香織「すみません。妹も来たがってたんですけど。」


孝太郎「仕方がないですね。ケイさんの分も頑張りましょう。」


皆「おー。」


病院の一室にはたくさんの子供達がいたその中には野坂さんもいた。

側にいる車椅子に座っている女の子が娘さんかな?


里夏「え~。始めまして。今日は皆に紙芝居を見せたいと思います。

それじゃあ、始めますね。ドラゴン勇者の冒険。」


里夏「ある島に一匹のドラゴンがいました。そのドラゴンは普通のドラゴンよりも臆病で弱虫で仲間外れにされてしまい。この島で一匹で暮らしていました。」


里夏「ある日ドラゴンは散歩をしているとそこに一匹の子供のツバメがいました。ツバメはまだ小さく空を飛ぶことが出来ません。」


里夏「そこにヘビがやってきました。」


ネム(ヘビ)「へっへっへ。あそこに旨そうなツバメの子供がいるじゃないか。食べてしまおう。」


里夏「ヘビはツバメの子供に近づいていきます。このままでは食べられてしまいます。しかし、ドラゴンには立ち向かう勇気がありません。さぁどうする。」


里夏「皆ドラゴンに勇気を分けてあげて。」


子供達「ドラゴン頑張れ~。」


里夏「皆に応援されてドラゴンは勇気を絞ってヘビの前に立ちふさがりました。」


香織(ドラゴン)「まっ待て。」


ネム(ヘビ)「お前は臆病者のドラゴンじゃないか。邪魔だどけ!」


香織(ドラゴン)「ひぃ。嫌、逃げないぞ。」


里夏「ドラゴンはその場で大きく足を上げて下ろして威嚇しました。ドスン!」


香織(ドラゴン)「こっここから立ち去れ!じゃないと次は踏んでしまうぞ!」


ネム(ヘビ)「くっ。仕方ない。今日のところは勘弁してやる。」


里夏「そういうとヘビは立ち去っていきました。ドラゴンはツバメの子供を巣に戻してあげました。」


香織(ドラゴン)「もう落ちたら駄目だよ。」


ネム「ドラゴンはまた散歩を始めました。すると、どこからか助けを呼ぶ声がします。ドラゴンはその声がする方に飛んで行きました。」


ネム「すると、そこには一匹の母親の猿がいました。」


里夏(猿)「あっ。ドラゴンさん。息子が息子が川に落ちて流されてしまって。お願いです。助けて下さい。この先には大きな滝があってそのまま流されたら。」


香織(ドラゴン)「うん。わかったよ。」


ネム「ドラゴンは空を飛び上から猿の子供を探しました。」


香織(ドラゴン)「見つけた。」


ネム「猿の子供は滝のすぐ側まで流されていました。ドラゴンは間に合うのか?皆でドラゴンを応援してあげよう!」


子供達「ドラゴン頑張れ~。」


ネム「ドラゴンはギリギリ助けることができました。」


香織(ドラゴン)「はい。どうぞ。」


里夏(猿母)「ありがとうございます。ありがとうございます。このご恩はいつかお返しいたします。」


香織(ドラゴン)「いえいえ。気にしないで下さい。」


ネム「ドラゴンは少しずつですが臆病を克服していきました。」


里夏「そんなある日。島に一匹のドラゴンがやってきました。」


孝太郎(悪ドラゴン)「ガハハ。こんな島、俺様が燃やしてやる。」


里夏「悪いドラゴンは島の森を燃やし始めました。島にいる動物達は必死に逃げていました。」


香織(ドラゴン)「どうしよう。僕なんかが敵う相手じゃない。今のうちに逃げるしかないよな。」


里夏「ドラゴンは逃げようか悩んでいました。」


香織(ドラゴン)「いや、逃げないぞ。ここにはたくさんの動物達がいるんだ。僕は逃げれば助かるかもしれないけど、彼らの居場所はここしかないんだ。」


里夏「ドラゴンに戦う勇気を皆であげよう!」


子供達「ドラゴン頑張れ~。負けるな~。」


香織(ドラゴン)「そこまでだ!」


孝太郎(悪ドラゴン)「ん?貴様は臆病者のドラゴンじゃないか。なんだ、こんな島にいたのか。俺に何かようか?」


香織(ドラゴン)「この島は僕達の島だ!これ以上好きにはさせないぞ。」


孝太郎(悪ドラゴン)「ほう。俺様と戦おうってか。いいだろう。相手をしてやる。」


里夏「ドラゴンと悪ドラゴンの戦いが始まりました。しかし、悪ドラゴンの方が強い。このままでは負けてしまう。その時。」


ネム(ヘビ)「頑張れドラゴン!負けるな!」


里夏(猿)「ドラゴンさん負けないで~。」


里夏「島中の動物達がドラゴンを応援しました。」


孝太郎(悪ドラゴン)「なんだ。なんだ。」


香織(ドラゴン)「うぉぉ。これでもくらえ!」


里夏「ドラゴンはブレスをはいて悪ドラゴンに攻撃しました。」


孝太郎(悪ドラゴン)「くそっ。覚えてろよ。」


里夏「悪ドラゴンは島から去っていきました。これからもこの島にはいろんなことが起きるでしょう。でも、大丈夫!皆で協力すればきっと乗り越えられる。おしまい。」


里夏「えー。以上で紙芝居を終わります。」


皆「ありがとうございました。」


パチパチパチ。


里夏「ふぅ。皆お疲れ様。」


孝太郎「緊張しましたけど、なんとかなりましたね。」


ネム「香織。ドラゴン良かったぞ。」


香織「ありがとう。」


野坂母「皆さん。お疲れ様です。今日はありがとうございました。」


里夏「あんな感じで大丈夫でしたか?」


野坂母「はい。皆喜んでくれたみたいだったわ。それと、ほら、英梨。」


英梨「あの。紙芝居とっても面白かったです!ありがとうございました。」


孝太郎「いえ。楽しんでくれて良かったです。」


英梨「話も面白かったし、絵も上手でビックリしました。」


里夏「あの話と絵はここにいる真倉香織と妹のケイが書いたのよ。」


香織「あっ。いや、私達だけじゃなくて、この紙芝居は皆で作ったものだから。」


英梨「私、将来漫画家になりたいんです。だから、私も病気と戦おうと思います。」


孝太郎「なれるといいね!応援してるよ。」


英梨「はい。」


それからしばらくして、ある日。


ネム「うーん。」


孝太郎「どうしたんだ?」


ネム「今月の月刊クルジャンに明日に咲く花が掲載されてない。」


孝太郎「忙しかったのかな?」


ネム「今までそんなことなかったのに。」


孝太郎「たしか、次が最終話じゃなかったっけ?」


ネム「うん。だからすごく楽しみだったのに。」


孝太郎「最終話だから、悩んでるんじゃないかな。」


そんなことがあってから学校でも少し変わったことがある。

真倉さんの様子が少し変わった。

紙芝居をするようになった少し前から真倉さんは毎日学校に来るようにはなっていたが、今までは月曜日が今までの真倉さんで火曜日と木曜日が明るい真倉さんだったのが、毎日明るい真倉さんになっていた。

もちろん明るくなったのはとてもいいことだと思うけど、前のような真倉さんも真倉さんらしくて良かったと思う。

ある日の登校中に里夏さんから嫌なことを聞いた。

孝太郎「英梨さんが目を覚まさない?」


里夏「うん。野坂さんが言うには少し前からずっと眠ったままなんだって。今までは1日おきに起きてたんだけど、今はずっと眠ったまま。」


里夏「お医者さんが言うにはかなり危険な状態らしいよ。」


孝太郎「そんな。」


俺はあまり考えないようにしていた。俺の気のせい。たまたまだってでも考えてしまう。


どうしても結びつけてしまう。


真倉香織ちゃんと真倉ケイちゃん、そして、野坂英梨ちゃん。


この三人のことを。


野坂英梨ちゃん。

1日おきに起きたり寝たりを繰り返す女の子。

現在は寝たきりの状態。


真倉香織ちゃんと真倉ケイちゃん。

双子の姉妹だが、二人を同時に見かけたことはない。

最初は香織ちゃんが1日おきに学校に来ていたが、途中から毎日来るようになった。

けど、1日おきにまるで別人が真倉香織を演じているようにいや、正確には香織ちゃんとケイちゃんが順番に学校に来ているんじゃないのか?


そんなことを思ってしまう。


二人のことを知れば知るほどそう見えてくる。


そして、現在は明るい真倉香織ちゃんだけが毎日学校に来ている。


じゃあ、前の香織ちゃんは何処にいったのか。


そんなことを考えてしまう。


考えないようにしようと思っていた。


けど、そうも言ってられない状況になってしまった。


今朝真倉さんに出会ってから。


真倉「おはよう!孝太郎君。ネムちゃん。今日も1日頑張ろう。」


ネム「香織は今日も元気だな。」


真倉「うん。元気、元気!」


そう。真倉さんの首の死の首輪を見てしまったんだ。


その日の放課後。

俺は真倉さんを図書室に呼んだ。


真倉「孝太郎君。話って何かな?」


孝太郎「ふぅ。香織さんいや、今はケイさんですよね?」


真倉「えっ。何を言ってるのかな。私は香織だよ?確かに似てるけど、ほら眼鏡だってしてるし。」


孝太郎「なら、俺がここで香織さんの本を拾ったことがありましたよね?その本のタイトルを教えて下さい。」


真倉「えっと、忘れちゃった。ごめん。」


孝太郎「香織さんなら忘れるわけありません。だって、自分がいや、自分達が書いた漫画なんだから。」


孝太郎「本当のことを教えて下さい。俺は真倉香織さんとケイさんの力になりたいんです。」


真倉「ふぅ。いつかはバレると思ったけどね。そうだよ。私は香織じゃない。ケイだよ。」


孝太郎「どうして、香織さんに成り済ましてるんですか?」


ケイ「成り済ましてるか。確かにそうだね。今から話すことは全て事実だよ。信じるかは孝太郎君次第だけどね。」


孝太郎「はい。」


ケイ「私は本当は香織の双子の妹じゃないの。」


孝太郎「えっ。」


ケイ「中学のときに初めて私は真倉香織になったの。

私は自分が何者なのかもわからずにいたわ。

しばらくして、香織も違和感を覚えたみたいで、その日のことを日記に書くようになったの。

それを見て私じゃないこの身体の持ち主がやっぱりいるんだと思った。」


ケイ「申し訳なくて、でも出ていくこともできなくて。私は香織に謝った。日記にありのままの気持ちを書いた。

そしたら香織はそれじゃあ、これからは貴方も私だねって書いてくれた。」


ケイ「それからは毎日日記でやり取りをするようになった。

ある日、香織が小説を書いてるノートを見つけた。

その小説はとても面白くて私は香織に将来小説家になったらって書いた。

そしたら、香織が私の絵を褒めてくれて、じゃあ二人でなれる漫画家になろうよって書いてくれた。」


ケイ「香織が物語を考えて私が絵を書く。そうして、練習して漫画雑誌に応募したら、まさか本当に漫画家になれるチャンスが来るなんて、今でも夢なんじゃないかと思う。」


ケイ「それから、東京の高校に通いたいって親に言って東京に引っ越してきたけど、本当は漫画家になるためだった。

漫画家になるうえでペンネームを考えるときに香織はじゃあ私達は姉妹でやってることにしようって書いてくれた。」


ケイ「そして、私に栗崎ケイという名前をくれた。嬉しかった。私にもようやく名前が出来た。

そして、少ないけど、私の存在を知ってくれる人が現れた。私は存在していていいんだと思えた。」


ケイ「それからは、孝太郎君も知っての通りだよ。」


孝太郎「それじゃあ、香織さんは今は何処にいるの?」


ケイ「わからない。ある日から1日たっても香織と入れ替わらなくなった。

その日はそんな日もあるかと思ってそのまま過ごしたけど、それからも香織と入れ替わることはなかった。」


ケイ「こんなこと誰にも言えることじゃないし、だから孝太郎君が聞いてくれて今は少しだけ気持ちが落ち着いた。ありがとう。」


孝太郎「本当のことを話してくれてありがとう。」


孝太郎「ケイさんがどうして香織さんの身体に入ってしまったのか。

そして、香織さんが今何処にいるのかはまだわからないけど、1つ可能性があることがある。」


俺の考えが正しければだけど、今はもう確認している時間がない。


孝太郎「ケイさんに会ってもらいたい人がいるんだ。俺の考えが正しければ、おそらくその人はケイさんと香織さんの入れ替わりに深く関係してるんじゃないかと思うんだ。」


ケイ「うん。わかった。」


俺はケイさんを連れて病院に向かった。


孝太郎「あっ。野坂さん。すみません。こんな時に。」


野坂母「いえ。君達なら娘も会いたいと思うし。娘に会ってあげて。私はしばらく席を外してるわね。」


孝太郎「すみません。失礼します。」


ケイ「…。」


病室に入るとそこには英梨ちゃんが眠っていた。


孝太郎「この子は野坂英梨さん。さっきの野坂さんの娘さん。」


ケイ「野坂英梨ちゃん。そうか、この子が。」


孝太郎「知ってるの?」


ケイ「会うのは初めてかな。今名前を聞いて納得したわ。サイン会の時にお母さんが来ていたのを思いだした。」


孝太郎「この子は俺達がこの病院で紙芝居をした時に見に来てくれた子なんだ。

その時に病気と戦って将来は漫画家になりたいって明るく言ってたんだ。」


孝太郎「それを見た時に俺は誰かに似てるなって思ったんだ。そう。ケイさんにね。」


ケイ「私?」


孝太郎「この子はある病気で前までは1日おきに起きて寝るを繰り返していたらしいんだ。そう。真倉さん達と似ているって思ったんだ。」


孝太郎「ケイさんの話を聞いてこの子がケイさんの元の身体なんじゃないかと思ってる。」


ケイ「この子が、私。」


ケイ「でも、もしそうだとしても、どうして私は目を覚まさなくなったの?」


孝太郎「わからない。でも、もしかすると、彼女の中で生きたいと思う気持ちが強くなったことが何か関係してるのかもしれない。」


ケイ「生きたい。」


孝太郎「そして、逆に香織さんはケイさんに身体を譲ってもいいと考えていたなら。」


ケイ「私と香織が入れ替わってしまっているっていうの?」


孝太郎「あくまでも憶測だけど。」


ケイ「だとしても、私はどうすれば。」


孝太郎「…。」


ネム「取り込み中失礼する。」


ケイ「ネムちゃん?」


孝太郎「ネム。ふーこと話は出来た?」


ネム「あぁ。なんとか。おーい。ふーこ。」


ふーこ「もう。本当に私は知りませんからね。」


ケイ「えっと、さっきから何の話?ふーこって誰のこと?」


孝太郎「今から話すことは信じてくれなくてもいいけど、本当のことなんだ。」


ケイ「うん。」


孝太郎「今ここに、死神がいるんだ。俺には特殊な力があってその姿が見えるんだけど、その死神の力を借りて二人の魂を入れ換える。」


孝太郎「そうすれば、香織ちゃんは元の身体に戻るはずだよ。」


孝太郎「ただ、野坂英梨ちゃんは今危険な状態で、今戻るとその。」


ケイ「死んじゃうんだよね。」


孝太郎「…。」


ケイ「大丈夫。じゃないけど、私が戻らなかったら香織が死んじゃうかもしれないんだよね。そんなの絶対嫌だから、だから、私は元の身体に戻る。」


ネム「いいんだな?」


ケイ「うん。お願い。」


ネム「それじゃあ、英梨の隣に横になって目を閉じて。」


そう言われると、ケイさんは英梨ちゃんの横になった。


ネム「それじゃあ、始める。ふーこ。」


ふーこ「はーい。それじゃあ、やるよ!」


ふーこは死神の鎌で二人の魂をとりだしそれを元の身体に戻した。


ふーこ「はい。終了ー。」


ネム「ありがとうね。」


ふーこ「先輩。変わりましたね。前なら絶対こんなことしないのに。」


ネム「そうかもね。」


ふーこ「それじゃあ、ふーこは一旦離脱しますねー。」


そして、香織さんが目を覚ました。


香織「あれっ。私。どうして。」


孝太郎「えっと、香織さんだよね?」


香織「えっ。孝太郎君にネムちゃん?どうして。」


英梨「うーん。」


香織「えっと、英梨さん?どうして。私、ここに。」


英梨「ふー。こうして会うのは初めてかな。香織。」


香織「えっ。いや、前に一度会ってますよ?」


英梨「あー。そうだったね。でも、ケイとして会うのは初めてだね。まぁもうケイじゃないけどね。」


香織「ケイじゃないって。何を言ってるの?」


英梨「私は野坂英梨。

そして、今まで真倉香織の中で栗崎ケイとして生活していました。

今までいろいろ助けてくれて本当にありがとう。私に名前をくれて、居場所をくれてありがとう。香織。」


香織「そんな。どうして。ケイ。今までみたいに私の中にいればいいのに、どうして?私、貴方がいないと駄目だよ。」


英梨「香織は優しいからそう言ってくれると思ってた。

でも、駄目なの、いつまでもその優しさに甘えてたら、私は前に進めない。

だから、私は今日をもって栗崎ケイを卒業します。」


香織「いやだよ。出ていかないでよ。ケイ。私。ケイがいないと。」


英梨「大丈夫。香織なら大丈夫だよ。香織はもう一人じゃないでしょ?友達が出来たじゃん。」


香織「うん。そうだね。ごめん。ケイ。じゃない。英梨も頑張ろうとしてるんだもんね。

なら、私も頑張らなくっちゃ。私、お姉ちゃんだもんね。」


英梨「そうだよ。私も頑張って病気と戦うから香織も頑張って。」


香織「うん。」


英梨「とりあえず、明日に咲く花の最終話を書こうか。」


香織「うん。そうだね。ペンとかとって来なくちゃ。」


孝太郎「それなら、今とってくるよ。鍵貸してもらってもいいかな?」


香織「あっ。ごめんなさい。」


孝太郎「こういう時はありがとうの方がいいかな。」


香織「ありがとう。」


英梨「孝太郎君。ネムちゃん。ありがとう。」


ネム「うん。最終話楽しみにしてる。」


孝太郎「行ってくるね。」


俺とネムは香織さんの部屋から道具を病院に運び渡してあとは二人に任せた。


次の日、野坂英梨さんはそのまま息をひきとった。


それからしばらくして。


明日に咲く花の最終話が公開された。


その後、下巻が発売され、その時に栗崎アイと栗崎ケイは引退を発表した。


それからさらに時は流れた


ネムは最近ある小説にはまっている。


孝太郎「何読んでるんだ?」


ネム「ん?最近出た小説なんだけど、かなり面白い。なんでも、新人らしい。」


孝太郎「どれどれ。野坂香織ってまさか。」


香織「孝太郎君。ネムちゃん。おはようございます!今日も1日頑張りましょう。」


そういうと彼女は満面の笑顔で挨拶をしてくれた。


その笑顔が誰かとダブったのは内緒だ。


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