脱色
布団の上で目が覚める
もう日付は変わっている
明日が来るんじゃなくて
ただ今日が終わっただけだ
無気力に電車に揺られて
目的地についても視界は暗い
無気力に電車に揺られて
気づけば家で一人ぼうっとしている
そんな退屈な毎日を
暗い暗い僕のこの色を
365日の1日だけでも
なんなら24時間分の半分だけでも
明るく過ごしたい
思い立ってスマホで電車の始発を調べた
なんだまだ数時間も余裕があるじゃないか
朝日に目を向けながら駅まで歩いた
いつもよりも歩幅は広かった気がする
電車に揺られながら陽の光を感じた
まばらに点在する乗客を見渡した
そこに座るサラリーマンよ申し訳ない
今日だけ僕は仕事に背を向けたよ
ふんわりとした背もたれに身を預けて
乗り継いで向かった久しぶりの海
近くの学校に向かうランドセルを背負う子供たち
今日だけ僕は何もかもを背中から降ろしたよ
浜から見えるあの場所はどこだろう
目を凝らして見てもただ煙が上るだけだ
潮風の匂いにあの煙の臭いがする気がする
そうやって綺麗な空気が汚れるんだろう
ポケットで鳴り続ける着信にようやく手を伸ばす
耳に入ってくる罵声に眩暈がする
いつもと違うことをするからこうなるのかもしれないな
少しづつスマホを耳から遠ざける
お前はクビだと聞こえた気がする
涙が出るのは無職になったからじゃない
陽に照らされ続けて僕はいま笑ってる
なんにでも成れるのだから
だって僕は無色になったのだから