表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親殺し  作者: 大新楼
3/4

1-2 独居房

連れられた先には部屋があった。


貴也少年はそのちょうど中心に立っている。



四畳の畳の片隅に洋式便所が向き出しになっている。

天井は高く、思いのほか開放感があった。

だが壁は打ちっぱなしで、コンクリートの灰色がそれと相殺していた。


壁の高い位置には小さな小窓が据えられていて、そこを開けると、すぐ目の前に建物の壁が迫っていた。

これでは風も通りそうにない。


テーブルと布団が一式、ちょこんとあった。


貴也少年はとりあえず座ることにした。そして扉を一瞥する。


独居房の扉は華奢で、こじ開けようと思えば、無理ではなさそうだった。しかし、当然扉の先には看守がいるだろうし、それを突破しても障害は、まさしく山のように大量で山のようにそびえ立つだろう。


それを華麗に突破できたとしても、この日本で社会からは逃げ切れない。逃げれたとしても代償やリスクはかなり大きい。


貴也少年は脱走の計画に早々に区切りりをつけ、一刻も早く罪を償い少年院をでることにした。



貴也少年にとっての償いとは、自分の犯した罪を心から反省し、社会のために働く といったものではなく、極単純に、自分の犯した罪に対して社会が突きつけた罰を受けきることだった。

その後は自分がなにをしても犯した罪は一切関与しないと、少年は頭で決めていた。


しかしそれを態度にだしてもいいことなどない。

少年はここでは精一杯良い子でいることにした。


少年は頭を使わないことにした。

頭を使えば、どこかの片隅に、ほんの少しではあるが絶対になにかが蘇る。

父の姿が浮かぶ。

顔が、少ないながらも思い出が。

そして刺した感触、苦悩に満ちた顔が。



それが少年には不快でならなかった。




なにもないこの部屋でやれることは限られていた。


少年は柔軟体操をし、腕立て伏せ、腹筋、背筋、スクワットを何セットかこなした。

体がほんのりと熱を帯びる。


さらに運動を続けると、汗が滴り落ち、無地の服が濡れ始めた。


少し息を整えた。



気づくとすでに結構な時間が経過してるらしく、窓の格子の向こうは闇に満ちていた。


すると扉が開く。飯だ。


看守は言葉を発することもなく、皿を乗せた膳を乱雑に置いて出て行った。


味噌汁に麦飯に焼き鮭に和え物。


箸を取ると再び扉が開いた。


扉に視線を移す。


少年がいた。

貴也少年ではなく、別の少年だ。



先程まで一緒にいた、同じタイミングで少年院に入った少年だ。


「なにか??」


貴也少年は穏やかに言う。



「ワイはタカハシ」


少年は言う。

そしてタカハシ少年はそれ以外は何も言わずに貴也少年の正面に座った。


「お前は??」



「本馬」


短い問いに短い答えで答える。



「あぁ、噂の…」


そこまで言うとタカハシ少年は口を紡いだ。



親殺しか。


その後に続く言葉が本馬少年にはすぐわかった。


その雰囲気が伝わったようで、タカハシ少年は頭を下げた。


「悪気はなかった。勘弁してくれや」



「いえ。ところでタカハシさん、要件は??」



タカハシ少年はそこで笑っいながらしゃべり始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ