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69 君の髪を梳く。そして君の髪を切る。


【5/1 20:10】


 ドアを開けると、透明な鈴の音がリンと鳴る。雪姫が、目を点にしているのが分かった。


 一見すれば、アンティークショップのようだ。ファンタジー世界とつながる「魔法のお店」と言われても、納得できる雰囲気で。

 たちこめるアロマの香り。今日はオレンジハーブか。バーバチェアが無ければ、ココが理髪店なのを忘れるぐらいだ。


「「ようこそ、恋する髪切屋へ」」


 二人の声が重なる。白を基調に燕尾服を模した制服。口には出さないが、仕事モードの二人は本当に格好良いと思う。毎回、つい見惚れてしまうのだ。


 この店は恋する女性が美しくなってもらうことを理念(フィロソフィー)として掲げている。そのために一切妥協をしない。ヘアスタイリング、ファッションのコーディネイト、二人の人生観をもとにした恋愛相談(カウンセリング)まで。

 恋する髪切り屋は気まぐれ営業、そして美容院でもない。それなのにティーンズを中心に人気なのだから、世の中って何がウケるか分からない。


「遅かったのぅ」

「遅くなるってちゃんと連絡を入れたろ。色々あったの」

「冬希の心配はしとらんよ。儂は嬢ちゃんの心配をしていただけだから」

「へいへい」


 爺ちゃんの人の食ったような言い方もいつものこと。と、婆ちゃんが雪姫の手を引いて、ソファーに座らせる。黒の革張り。まるで王宮に鎮座する――チェスターフィルドタイプのソファーに、雪姫が座わるのとまるでお姫様のようだ。思わず頬が熱くなる。


 と爺ちゃんが冷やしたタオルを持ってきた。俺はその意図を理解する。泣いて腫れた瞼を冷やせ、というのだろう。


 トントン、と婆ちゃんがソファーの座面を叩く。


 雪姫の隣に座れと、暗に言っている気がした。言われるがままに座ると、爺ちゃんが俺にタオルを渡す。そこでようやく、俺は意図を理解する。


「雪姫、目が腫れちゃったね。ちょっと冷やそう。少し冷たいよ」

「え、あ――」

「大丈夫だよ」

「……うん」


 コクンと雪姫が頷く。


 俺は静かに雪姫の目にタオルを乗せた。俺の腕を掴む力が少し強くなる。大丈夫だよ、ともう一度囁く。視界を塞がれたことで、雪姫は孤独だった過去を連想しまったのだ。


 抑えつけた感情がまた再燃しそうになる。ずっと雪姫が何を抱えているのか、気になっていた。でも無理矢理聞くもの違うと、雪姫の言葉を待っていた。


 だからいざ知ると――許せないという気持ちが先に立つ。


 でも、怒りの感情を撒き散らすのは、やっぱり違う。今は目の前のこの人をただただ幸せにしたい。それだけを思った。


(会長、青柳――)


 その名前は胸の奥にしまい込む。恨んでないと雪姫は言う。でも傷ついてないと同義語じゃない。だから、もう絶対に傷つかせない。そう思う。


「雪姫、次蒸しタオル行くからね」

「え? う、うん――」


 瞳孔が光で彩られた瞬間、雪姫の表情は安堵する。でも、また視界が塞がれようとする刹那、不安そうに双眸が揺れる。


「大丈夫だから」

「え?」

「傍にちゃんといるよ」


 タオルを置いた瞬間、俺は雪姫の髪を撫でる。見れば、もう爺ちゃんと婆ちゃんの姿はなかった。気を利かせてくれたんだと思う。正直、助かった。遠慮なく雪姫を包み込んであげられる。


「ふゆ君?」

「ここにいる。ちゃんといる。だから心配しなくて良いから」

「うん……」


 タオルを取って、その目を覗き込む。良かった。思ったより腫れていない。


「ごめん、冬君。私……面倒くさくて」

「……」

「たまに思うの。私みたいな子じゃなくて、他の子だったら。冬君は苦労なんかせずに、気遣いすることなく、デートだってできるんだろうなって――」


 俺は問答無用で雪姫の唇を自分の唇で塞いだ。


「ふ、冬君?」

「悪いこと言うのはこの口だね」

「え?」

「雪姫、あのね。俺は君が好きなの」

「え、ん、うん」

「君だから好きなの。雪姫じゃなきゃダメだって思ってるよ。前にも言ったけど、俺初めてだったんだ。自分で決めたのも。自分で行動したのも。いつも人任せだったから」

「うん……」

「不安なら何回でも言う。他の誰でも良いわけじゃなくて、雪姫だから好きなんだよ」


 雪姫はようやくコクンと頷く。


「でも、私……面倒くさいよ?」

「ドコが?」


 雪姫を面倒くさいなんて思ったことないので、その意味が分からない。


「歯止め効かなくなると思う。冬君じゃなきゃイヤだって思ってる。離れてほしくないし、ずっと傍にいて欲しいし、離れたいって思っても、もう離してあげられな――」

「一生かけて、雪姫を愛したいって俺は思ってるよ」


 本心を晒す。何て重い言葉をぶつけるんだって思うけど。まるでプロポーズだった。雪姫が唖然とした表情で俺を見る。


「……分かってるよ、たかだが二週間の付き合いで何を言ってるんだって思うけど。でも、俺はそう思ってるの。幼いって思われても甘ちゃんって思われても、それぐらい――」


 今度は俺が言葉と唇を奪われた。

 雪姫が求めるように、温もりを求める。重ねるだけのキスじゃなくて。その奥底の温もりをほんの少しだけ、求めるように。


「ゆき?」

「私も」

「え?」

「私も、一生をかけて冬君を愛すから。誰にもこの隣を渡さないから。重いって言われても、誰に後ろ指さされても、冬君の隣だけは絶対に渡さない。諦めない。もう迷わないから!」


 真っ直ぐに、雪姫はそう言う。俺は嬉しくなって、コクンと頷く。


「不安になったら何度でも言うから。俺の隣は絶対、雪姫だから」

「うん。私じゃなきゃイヤだ」


 そう言って、雪姫は俺の目を再度覗き込む。


「冬君……」

「ん?」

「さっきの言葉、もう一回聞きたい」

「……」


 あれをもう一回言うのか。気恥ずかしくて顔が熱くなる。でも雪姫にそう言われたら、拒否する選択肢なんて、そもそもなかった。

 すぅっー、と深呼吸をする。


「俺は一生をかけて雪姫を愛すよ。その覚悟があるからね。軽くなんか無いから、俺の気持ちは」


 そうでなきゃ、軽はずみに髪を切るなんて言えない。幼馴染達の髪を気軽に切るのとは全く別次元だ。

 大切な人の髪を切る。それはあなたに責任を持つということで。気軽に鋏を入れられるはずがなかった。

 でも、と思う。他の誰かじゃイヤだ。雪姫を変えるのは俺じゃなきゃイヤだって思う。


「私も、冬君を一生かけて愛します。あなたじゃなきゃイヤです。冬君じゃないとダメだから」


 雪姫は目を閉じる。

 求めるものを改めて聞くほど野暮じゃない。


 今度は俺が温もりを求めるように、唇を重ねた。雪姫の甘い吐息が鼓膜を震わせる。細胞が痺れそうになる感覚を味わいながら。


 何度だって言うし、何度だって伝えたいって思う。

 ダメなのは……。雪姫がいないとダメなのは――むしろ俺の方だった。





■■■





 バーバチェアに雪姫を座らせて、俺は雪姫の髪を櫛で梳く。本当に綺麗な髪だなって思う。鏡越しに雪姫を見れば、ずっと目を閉じていた。


「怖い?」


 と聞いて、そりゃそうだろうと思う。資格がある理容師や美容師じゃない。素人が鋏を入れるのだ。怖い――とまでいかなくても、緊張して当たり前だ。


「怖いより嬉しいかな? やっとって思ってる。すごくドキドキしてるよ」

「え?」


 予想外の言葉に俺は目を丸くした。


「だってねCOLORSのヘアスタイリング、冬君がしたって聞いたから」

「また婆ちゃんかよ、あのお喋り――」

「今回は師走さんでした」

「あのクソジジィっ」


 犯人はじっちゃんの方だった。しかし祖父母と雪姫が連絡のやり取りをしていると聞くと、こそばゆさを感じる反面、穏やかじゃない感情が疼く。その時間まで、俺が独占したいって思ってしまう。なんて心が狭いんだろう。これは紛れもなく、浅ましい嫉妬だった。


「私、冬君がお父さんやお母さん、空とやり取りしているの知ってるよ」


 今度は雪姫が頬を膨らませる。


「私だって、冬君のことたくさん知りたいし。冬君の時間を誰かに奪われるのイヤだもん」


 俺は苦笑が漏れる。結局は似たモノ同士の二人だった。

 でも、と思う。集中しなくちゃ。


 俺は無言で、雪姫の髪を触る。重心、バランス。そして自分のイメージを重ね合わせて。自分の感情を、雪姫の感情に重ね合わせるように。


「ふ、冬君?!」


 鏡越し、雪姫の顔が真っ赤になるのが分かった。


「動かないでよ。今、バランスを見てるから」


 そう言った俺はもう片方の頬にも唇を寄せる。


「ず、ズルい! 私が目を閉じてるからって、冬君の意地悪!」

「目を開けたらいいじゃんか」

「だって……かわ……楽し……だったんだもん」


 ボソリと呟く声が聞き取れない。


「ん?」

「冬君に、変えてもらうのを楽しみにしていたんだもん! 最後に見たいって思っていたのに、冬君がイジワルする! 意地悪!」


 ぶすーっ、ぶすーっとさらに頬を膨らます。それでも目を開けないのだから、雪姫もなかなか強情だと思う。


「ごめんってば」


 すっかり雪姫は拗ねてしまった。雪姫の色々な表情を見たくて、つい悪戯心が芽生えて――と、俺は雪姫の表情を見てはっとした。明らかに不安の感情が織り混ざるっているのを感じる。


「ゆき?」

「――イヤ。イヤだ、イヤ、イヤ、イヤ。冬君、傍にいるって、ちゃんといるって言ったもん。それなら、それなら――いるかいないのか分からないのはイヤ。ちゃんと存在を感じさせて欲しい。私の傍からいなくならないって、ちゃんと証明して欲しい」

「……ん」


 俺は簡単に考えすぎていたのかもしれない。周囲の人達は波が引くように、雪姫と疎遠になった。代わりに押し寄せた波は、雪姫を追い込んだ底知れない悪意ばかりで。


 雪姫は怯えていたのだ。もしかすると、俺もいなくなってしまうかもしれない未来に。目を閉じているからなおさら連想してしまう。でも自分が変わることを、本当に楽しみにしていたから、瞳を開けるつもりはない――そのジレンマに挟まれて。


「バカだな」


 クスリと笑みを溢して、俺は雪姫の前に周る。両手でその頬に触れた。


「今、雪姫の前にいる。俺の両手は、雪姫の頬を触れているよ」

「え? 冬君? え? うん……?」

「俺、独占欲強いから。雪姫の頬にキスしたのだって、俺の彼女だよって雪姫にもっと自覚してもらいたかったから」

「え? え?」

「俺ね、悔しかったんだ。雪姫ともっと早く出会えたらって、つい思ってしまう」

「ふゆ君?」

「こんなに好きなのに、他の人達と雪姫との時間、この差は絶対に埋められない。それが本当に悔しい」

「それは私だって……」

「だからさ、誰にも入り込めないぐらい、雪姫のなかまで、俺でいっぱいにしたいって思うんだ」

「冬君?」

「ね? 俺、独占欲が強いでしょう?」


 ニッと笑ってみせる。ようやく雪姫からも安堵の微笑が漏れた。それでも目を開けようとしないのだから、やっぱり雪姫は頑固だなって思う。


「もう、私のなかは冬君でいっぱいだよ」

「俺はね、まだまだ足りないって思ってるの」


 頬に触れながら。自分のイメージと現実の雪姫の表情が、同調(シンクロ)していくような感覚。


 変えるなら――雪姫を変えるのは、俺が良い。他の誰じゃなくて俺がしたい。ずっとそう思っていた。


「冬君……」

「ん?」

「傍にいて。いなくならないって、もっと教えて。もっと冬君を感じたい。いなくなったらイヤ。勝手に消えちゃったらイヤ。私、冬君じゃないと無理だから」

「うん」


 俺はコクリと頷く。雪姫がすがるように俺の手を探して、手首へ――掌へ、その手で掴む。


「私を一人にしないで。私には冬君がいるんだって、もっと教えて。キスするんだったら、もっとちゃんとして。すぐに消えちゃうようなキスじゃイヤだよ」

「そ、それは……」


 思わず唾を飲み込む。二人でいるからか。唾液を飲み込む音も心音も、やけに店内に響き渡るような錯覚を覚えた。

 胸の鼓動が止まらない。でも、衝動も行動も止まらない。


「雪姫、キスさせて」

「うん」


 それは長くて、少し深い口吻(くちづけ)だった。触れるより深く。求め合うには浅く。ただ、心と心が結びつくような。お互いの酸素が、お互いに循環していくようで。


 息苦しさならずっとあった。俺はただコミュニティーに馴染めないだけの、甘ったれた感情でしかなかったけれど。雪姫はもっと苦しかったはずなのだ。


 でも、と思う。そんな俺のちっぽけな悩みでも、雪姫と出会って確かに救われたんだ。

 二人の唇が同時に離れる。


「髪を切るよ」

「ん――」


 そう言いながら、雪姫が俺にしがみつく。離さないと言わんばかりに。誰にも渡さない、そう言いた気で。


 もう一度重なる。

 それは深く、求めるより深く。より心と心が結びつく。そんな甘いあまい接吻(くちづけ)だった。





■■■





 俺は鋏を走らせる。

 雪姫の髪は軽い。


 普通の髪ならジャキジャキと鋏が鳴るのに、サクサクと柔らかく鳴って。黒髪がハラリと舞う。


 彼女に纏わりついていた悪意を少しずつ、落としていくように。

 指で、髪に触れながら。

 そのイメージをなぞるように。

 いつ見ている雪姫の笑顔が重なって。


(――うん、大丈夫)


 俺が雪姫を変える。

 そして誰にも絶対、触れさせない。


 地味な子?

 非難の的?


 バカなんじゃない、お前ら。

 でも、もう遅いから。こんなに可愛くて、素敵な子は他に絶対いないから。


「う……あ……。わ、私も。冬君は【無愛想猫】なんかじゃないから。今さら冬君が素敵な人だって気付いても、渡してあげないから」


 見れば鏡越し、真っ赤になって俯いている。どうやら俺は知らず知らず声に出していたらしい。

 と、俺は、雪姫の頭を持ち上げる。


「動かないでね。まっすぐで」

「そ、それは冬君があんなことを突然言うから!」

「今日、何回もキスしたのに?」


 クスクス笑みが溢れてしまう。


「慣れないもん。何回キスされても、何回好きって言われても、その度にドキドキしちゃうから……冬君はもう慣れちゃったの?」

「まさか」


 慣れるわけない。いつだって、今この瞬間だってドキドキしているから。


「――雪姫」

「な、なに?」

「頬にキスするよ」

「か、髪の毛ついちゃうよ?」

「ちゃんと言ったら良いんでしょ?」

「言ったら何でもして良いってことじゃな――」


 問答無用で、俺は雪姫の頬に唇で触れる。

 そして、気を取り直して集中。また鋏を走らせる。

 切った髪が舞う。

 俺が雪姫を変える。

 そして誰にも絶対、触れさせない。



 ――こんなに可愛くて、素敵な子は他にいない。

 今さら気付いたって、もう遅いから。


 だから君の髪を梳く。そして君の髪を切る。

 今日、君を俺が変える。

 無垢なパレットに、雪姫が隠し持っていた色彩を空気に触れさせて。



 弧を描くように、キャンバスに色を塗る感覚で。

 君の髪を梳く。そして君の髪を切る。



 今さら気付いたって、もう遅い。

 誰にも絶対、触れさせないから。


【恋する髪切屋の表通りにて】


「……あいつら、営業時間内でやらせなくて良かった気がする」

「だから言ったじゃない。でも当然だとも思うけど? 恋していたら歯止めなんて効きませんからね」

「でもな……ガラス越しで店内、外から覗けるの気付けって」

「周り見えてないでしょうからね。冬はいっつもああなの?」

「冬希は下河のことになると、周りが見えなくなりますからね」

「ゆっきも一緒。恋なんかよく分からないって言っていた子だけど。もう上にゃんがいない生活、無理なんじゃないかな?」

「暴走しそうなら止めてやっておくれ。周りが見えなくなる恋は、時に人の迷惑になるからの」

「大丈夫ですよ。ね、空君?」

「お、俺は知らないよ。姉ちゃん達を止めるなんてムリだし」

「そう言いながら、いつも心配してるもんねー」

「翼は黙って!」

「冬は幸せね。みんなに応援してもらって」

「おばあさん達も一緒に応援しませんか?」

「瑛真ちゃん?」

「上川君や雪姫の恋路を応援してあげたいんです。二人には絶対、幸せになって欲しいから」

「瑛真ちゃんは、上川君大好きだもんね」

「音無ちゃん、ちょっと黙ろうか?」

「さぁて、ひかちゃん。そろそろやりますか。いつものを」

「へ? 僕? こういうのは彩音か瑛真先輩が――」

「今日のひかちゃがは格好良かったからね」

「格好良かったの、彩音でしょ。というか、僕は正直やるの恥ずかしい」

「二人でやればいいじゃん、ケッケッ」

「はいはい瑛真ちゃん。良いムードだからってヤサぐれないの。じゃ、おじいさんもおばあさんも、皆さんもご一緒にお願いしますね」


「「……せーのっ!」」



 ――拳を握って

 ――アップできるようにサポート! ダウンしてもフォロー! 冬希(上にゃん)と下河ゆっきをハイテンションで応援します! それが私たち……。




「「「「「「アップダウンサポーターズ!」」」」」」


「「ご唱和、ありがとうございました!」」



……。

…………。

………………。




【おまけのおまけ】


「恥ずかしかった……。何で通りすがりの人までノッてくるの?」

「ひかちゃん、照れすぎだってば。――あ、サポーターズダンスが動画投稿サイトyour tubeで、この前バズった影響あるかもね」

「へ?」

「歌い手さんを特集している、your tubeの週刊歌い手チャートの番外編で紹介されたらしいよ」

「まさか【歌チャー】に紹介されていたとは……」

「演劇部の上野さんがね、今度、歌い手として動画作ってもらうみたい。アップダウンサポーターズとして!」

「はい?」

「ボカドロPが楽曲提供だってさ」


※注 ボーカルドロイド(音声合成技術製品)を使用して楽曲を作る人がボカドロP


「ごめん、彩音。情報量が多くてついていけない」

「なんと、音無先輩がピアノで参加。私もカスタネットで参加します」

「瑛真ちゃんは、トライアングルで参加です!」

「音無ちゃん、マジ? それ初耳なんですけど?」

「ひかちゃんはベースらしいよ?」

「彩音、初耳なんだけど?」

「じゃ俺は――」

「あ、空っちは翼ちゃんとイチャイチャ担当ね」

「楽器じゃないし! 見世物じゃないし! イチャイチャしてないし!」

「そうです、イチャイチャしてません。平常運転です!」

「本当に情報量が多くて、何が何やら」

「スカイウイングサポーターズも動き出さないとですね(小声)」

「音無先輩、何?」

「なんでもないですよ、空君。それじゃ瑛真ちゃん、もう一回いっちゃいましょうか?」

「オッケー。それじゃ、皆さんご唱和ください。せーのっ!」



――アップダウンサポーターズ!(拳を天に突き上げて)

ありがとうございましたっっー!

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