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68 彼へ告げる「雪姫が見ようとしている綺麗な世界を泥で塗ろうっていうのなら、誰だって絶対に許さない」と彼は言う


【高校1年生 12/24】


 お父さんって本当に、凝り性なんだよね。庭で今年も力作のお手製クリスマスツリーのイルミネーションを眺めていた。今年はモールス信号的な点滅で『ハルカ、ダイスキ』と自己主張に余念がない。毎年、些細なお父さんの告白をお母さんは気付かないので、本当に残念な夫婦だと思う。


 でも不思議、とも思う。人間ってあんな風にお互いに好意を向けることができるなんて。恋愛とか好きっていう感情。この時の私は、まったく理解ができなかった。

(ベタベタしてて、気色悪(キショ)いって思うこともあるけど――)


 そう苦笑を浮かべていると、珍しい来客の訪問に目を丸くした。空と一緒に、彩翔君と湊ちゃんが立っている。


「あ、あの……雪姫さん、お願いがあります!」


 意を決したように、湊ちゃんは頭を下げた。

 私は目をパチクリさせることしかできなかった。





「メリークリスマス!」


 クラッカーの音が追随する。私は、その光景を夢うつつ、ぼーっと見やった。空、彩翔君、湊ちゃん。それから――彩ちゃんと海崎君がいる。まるで小学校の時に戻ったような不思議な光景だった。


 自然とクスリと笑みが溢れる。空がバスケ部を退部してから、この三人が一緒のいるのは初めて見たかもしれない。


「雪姫さん。最近、空の付き合いが悪いんですよ」


 と寂しそうに彩翔君が言う。


「お前らのイチャイチャに挟まれたくないだけだから」


 とぶっきらぼうに空は反論した。四人家族なのに6号ケーキを食べたいと言ってきた時はどうしようかと思ったのだが(だって8人前はあるからね?)こういう理由だったのかと思うと、微笑ましい。そのついでに、自分達の兄、姉を誘った流れなんだと思う。この三人に気遣いをさせてしまったのが、本当に申し訳ない。


「本音を言うと空と彩翔、やっと話せたんですよ。この前大喧嘩してから」

「湊、そこまで言わなくて良いから!」


 空は渋い声を出すが、男子二人は特にしこりが残った様子がない。ニッと笑う二人を見ると、こういう時、男の子同士って良いなぁと思ってしまう。


「そ、そんなことより。彩姉は、雪姫さんに言うことあるだろ?」


 と彩翔君が、彩ちゃんを促した。コクンと頷く。


「ゆっき、ごめん」


 彩ちゃんは頭を下げる。空が選曲したクリスマスソングが妙に無機質に聞こえた。


 私は首を傾げてしまう。彩ちゃんが謝る意味が私には、理解できなかった。


「だって中学、高校とゆっきと距離が遠くなっちゃったのは私のせいだから……」

「そんなことないよ。新しい友達だって大事だよ」

「でも、ゆっきは私の大切な幼馴染だから!」


 真剣な眼差しで、彩ちゃんはそう言う。


「うん、私もそう思ってるよ」


 だから私もニッコリ笑って返した。だって仕方がない。いつまでも保育園の時のようにはいられない。彩ちゃんはオシャレでみんなの輪に入れる。私はその反対で、ドラマもファッションも恋愛も興味がない。周囲から浮くのも当たり前だった。


「お兄ちゃんも言うことあるんでしょ?」


 と湊ちゃんが海崎君の背中を押す。


「あ、え……。うん。あ、あの、雪姫――メリークリスマス」


 絞り出すような声で。湊ちゃんが呆れたと言わんばかりにため息をつくのが聞こえた。でも、それで良いと私は思っている。いつまでも同じままじゃはいられない。無理に距離は近くなくて良い。海崎君が元気なら、今まで通りじゃなくても良い。そう私は思った。


「うん、メリークリスマス」

 だから私はにっこりと笑ってみせた。






【高校1年生 1/2】



 クリスマスを契機に、彩ちゃん達は前と同じように声をかけてくれるようになった。

 初詣もこのメンバーで一緒に行くことになったので、妙に戸惑ってしまう。

 遠慮する空気の中、結局は空と一緒に行動をするけれど。


「空は、湊ちゃん達と一緒に行かなくて良かったの?」

「バカップルに付き合って正月早々胸焼けしたくないからね」


 ニッと笑って空は言う。空の言い方が妙におかしくて、笑いがこみあげてくる。

 やっぱり、と思う。こうやってみんなと過ごせるのは本当に嬉しい。それが過分な想いだと分かっていても。


 拝殿でぱんぱんと、拍子を打つ。


 私の願い――静かに過ごして、高校を卒業したらこの場所から消えたしまいたい。

 もう何も欲しがらない。期待しても、何も得られるモノなんかないから。私はそう学習した。


「雪姫」


 と海崎君が声をかけてくれる。少しだけ気まずい沈黙が流れた。


「何をお願いしたの?」

「海崎君と彩ちゃんが、仲良くいられますように、かな?」


 ニッコリ笑って言う。彩ちゃんが私の隣で慌てふためく。ずっと彩ちゃんが海崎君のことを好きなのを知っているから。

 と、海崎君はそんな私をどこか切なそうに見ていた。





【高校1年生 1/11】



「ゆっき、ゆっき。昨日、勧めてくれたラノベ、チョー良かったよ!」


 冬休みが明けて、彩ちゃんは自然と私に声をかけてくれた。


「ふふ。良かったね」


 私は読んでる本を閉じて、彩ちゃんに答える。以前なら当たり前だった光景に嬉しさと――少し恐怖も感じる。

 そして今日も、そんな私達を見て悪意は膨れ上がっていく。


「彩音って、本当に優しいよね。病原菌を相手にさ――」

「その言い方キライなんだけど? 私の幼馴染にそういうこと言うのいい加減やめてくれない?」


 ギロッと彩ちゃんが睨む。でも彩ちゃんがそれ以上、言うことを私は止めた。彩ちゃんに彼女達の方に行くように促す。


 だって私は本を読みたいから。そう意思表示をして。

 私は本を読みたい。彼女達は彩ちゃんと仲良くしたい。これでウィンウィンのはずだ。


「……スカした顔して、本当にムカつく」


 ボソッとそう言い捨てられた。


 私は小さくため息をついた。何がいったい正解だったんだろう? そう思うだけで、息苦しくて喉元がひゅーひゅー言う。このところ、過呼吸になりやすい。


 落ち着かせようと、懸命に深呼吸をする。ページを捲る。活字に目を向ける。


 物語の世界に没頭していれば私は、忘れることができた。本のページを捲りながら思う。いっそのこと、消えてなくなってしまえば良いのに。例えばこの小説の登場人物のように。

 本の世界に飲み込まれて――現実の私なんかいなくなってしまったら良いのに。消えてしまったらいっそ楽なのに。


(あ、ダメだ――)


 今日は特に喘鳴が強い。本で顔を覆う。――休憩時間、終了間際、ようやく呼吸が落ち着いてきたのだった。





■■■



【高校1年生 2/14】


 文芸部で彩ちゃんや瑛真先輩と何気ない話を重ねる。海崎君が傍にいる。帰りは空と帰る。そんな何気ない日々に満足していた。


 人と関ることが怖いと思いながら、見知った人達が居てくれる。その時だけは緊張が解れて、息苦しさも無い。自然な自分が出せる気がした。


 だから、気持ちが緩んだ。

 気まぐれにちょっとチャレンジしてみようかと思ったのだ。


 小学校以来だろうか。ガトーショコラを作ってみた。気を許せる人達に渡してみようと思って――どうせなら、と思った。私が不快に思わせている人達にもあげたら良いんじゃないだろうか、とそう思った。


 私はあなた達のことを嫌いじゃない。どうせなら仲良くしたい、そう言うことができたら何かが変わるかもしれない。

 空に話すと、呆れ顔をされる。


「姉ちゃんはバカだね」


 でも、それ以上の批判はなくて。


「チョコが余ったら、俺が食べてやるからね」


 空はニッと笑って言う。そうだよね、と思う。勇気を出せなくて渡せない可能性だってある。この弟は、でも気にするなと言ってくれる。本当にこういう時ズルいって思う。


「あ、姉ちゃん。大丈夫かな?」

「ん?」

「あのさ今日、湊に呼び出されていて。高校まで迎えに行くことができなく――」

「空? 年上は私なんだけど? 私がお姉ちゃんなんですけど?」


 ジトっと睨んでみせる。それから、あぁと思い至る。湊ちゃんには彩翔君という彼氏がいる。そのキュービッドが空。気心知れた三人が、今さらチョコを渡すぐらいで、あえて呼び出すのも変な話で――。


「ふぅん」

「な、何だよ。姉ちゃん?」

「ま、がんばって」


 空は湊ちゃんの言葉を額面通りに受け取っているようだけれど。きっと、空にチョコを渡したい子がいるんだろうなぁ。そう思うと、つい唇が綻んでしまった。



 


■■■


 

「下河さん、このあと時間がある?」


 と青柳君に声をかけられた。彼の声を聞くのも本当に久しぶりだった。

 そうだ、と思う。私は手提げカバンの中から、チョコを取り出した。


「青柳君、もらってくれる?」


 すでに彩ちゃんと海崎君にはガトーショコラを渡している。海崎君は照れ臭そうに、でも喜んでくれたので、こっちまで嬉しくなる。彩ちゃんは言うまでもなく、心底喜んで――ハグまでされてしまった。


「え、あ……。下河さん?」

「えっとね。閉じこもってばかりじゃ、ダメだなって思ったの。だったら私から歩み寄らないと、って思ったの」

「その……ごめん」


 俯く青柳君に、私は首をひねる。


「ありがとうって言ってくれた方が嬉しいよ?」


 私は笑ってみせる。動悸はしない。息も苦しくない。だから――私は大丈夫。


「ハッピーバレンタイン」

 私は笑顔で青柳君にそう言えたんだ。







 案内されたのは視聴覚室。暗幕が引かれていて、中は真っ暗だった。


「青柳君?」


 と振り返ると、ドアがバタンと勢いよく閉まる。と、懐中電灯やらペンライトと思しき光が幾つも私を照らす。何人、この時いたんだろう。ただ私はもうパニックになっていた。


「何、それチョコ?」


 誰かが私の手提げカバンを奪った。


「え?」


 私が反応する間もなく、カバンが放り投げられる。無造作に、足で踏み潰された。


「誰が病原菌が作ったチョコを食べるんだよ」


 何が起きたのか理解ができない。私はただ口をパクパクさせることしかできなかった。呼吸が浅くなるのを感じた。


「青柳も、そう思うだろ?」

「……」

「踏み潰しとけよ? 病原菌のチョコなんて食いたいと思うのか?」


 スローモーションでわずかな光が幾重にも交差する。青柳君が見えた。唇を噛み締めて。そして私のガトーショコラを床に落とす。その足で踏み潰した。

 グシャリと、音がやけに大きく響いた。


「あ、あ――」


 言葉にならない。どうして良いか分からない。

 と、誰かが私を突き飛ばす。

 私に跨った。と、肩に鈍い痛みを感じた。

 カッターの刃が光に反射して煌めく。

 それが私の制服を切り刻んだ。


「女として(おか)されること期待した?」


 キャッキャ笑い声があがる。


「残念だったね。あんたにそんな価値も無いから。伝染したらイヤじゃん」


 笑い声が私の鼓膜を震わす。

 懐中電灯の光が幾重にも交差して。


 動悸が激しい。


 私は何がダメだったんなろう?

 何が正解だったんだろう?

 一生懸命、考えたのに。ずっとずっと考えてきたのに。

 もう何も考えられない。

 何も聞こえない。


「会長、お前は本当に悪いヤツだね」

「まだだ。まだ足りない。もっともっと追い詰めて、壊してしまって。どうにもならなくなるその寸前で、僕が手を差し伸べてあげるから」

「良いトコ取りのつもりかよ」

「違うよ。僕は欲しいもの、何が何でも手に入れたい派なんだ。拒絶も廃棄も選択権は僕にある」

「ひでぇ」

「もう一人、会長を拒絶しているヤツいるじゃん?」

「音無のこと? あいつは違うやり方で屈服させてあげるから」


 何かをあの人達が言っている。でもその内容まで頭に入ってこない。ただ息が苦しくて、どう呼吸していいのか忘れてしまったかのように、喉元がひゅーひゅー言う。血の気が引いていく。


「ちょ、ちょと? これヤバくない」


 誰かが私を指差した刹那だった。

 その鳴き声だけが、私の聴覚に鮮明に響いた。




()()ー!」


「え? 何でここに猫がいるんだよ?」

「痛い、ちょっと、何なの?」

「やめて、ちょっと! 引っ掻かないで!」

「痛い、噛まれた! 助けて!」


 何故か、いきなり彼らは恐慌をきたした。私はわけが分からず、フラフラしながら視聴覚室を出た。幻覚に誘われるように。いるはずがない白猫に導かれて――。


 



■■■



「雪姫、何があったの?」

「ゆっき?」


 どうやって家の前に着いたんだろう。海崎君と彩ちゃんが私を見て――体の震えが止まらない。

 ヒューヒューと喉の奥底から喘鳴を響かせる。

 苦しい。怖い。息ができない。


「ゆっき?」


 彩ちゃんが私の手に触れようとして、私はその手を払う。さっきまで私を囲んでいたあの人達の姿が網膜に重なった。


「あ、あ、あ――」


 口をパクパクさせることしか私にはできなかった。


「雪姫?」


 と足音が聞こえる。玄関から空が出てきた。


「姉ちゃん?!」

「そ、空――」


 弟にしがみつく。今、私が安心できる場所は空しかいなかった。


「姉ちゃんこれって?」

「転んだ、転んだだけだから。何もないから、大丈夫、大丈夫だから――」


 でも喘鳴はまるで収まってくれない。苦しい、苦しいよ。もう何も求めないから。何も願わないから。呼吸をさせてください。息をさせてください。もう誰とも仲良くなりたいなんて思いませんから。全部諦めますから、お願いします――。


 ぎゅっと、空が私を抱きしめる。

 息が少しだけ、肺に流れ込む。


「何でだよ……」


 空が呻く。その視線は海崎君と彩ちゃんを睨んでいた。


「先輩達が姉ちゃんの近くにいてくれるんじゃなかったの?」

「そ、それは……」


 彩ちゃんが言葉を詰まらせる。

 空、みんなを責めないで。彩ちゃん達は文芸部の仕事を頑張ってくれていたんだから。私がしっかりしていなかったから、私がダメだったから――。


「姉ちゃんが何をしたんだよ? 何で姉ちゃんを見捨てるんだよ?!」


 空が激昂が谺して。私は体を震わす。

 怖い、感情に触れるのが怖い。視線に晒されるのが怖い。人の言葉を聞くのが怖い。

 怖い。

 ゼンブ、コワイ――。

 私の記憶は混濁して、そこで途切れた。






■■■


【5/1 19:50】



 ギリッ。

 歯を噛みしめる音に私の体がビクンと震えて、我に返った。


「ふゆ君?」


 私は恐る恐る、彼を見る。その双眸に怒りが宿っていた。でも私と目が合う刹那、すぐに柔らかくなって――私は安堵する。


 ずっと思い悩んでいた。浅ましい私を知って、冬君はどう思うんだろう。こんな醜い私を知って嫌われたらどうしよう? ずっとそんな考えに囚われていた。冬君まで失ったら、もう私は本当に息ができない。生きていく自信がない。どう笑って良いのか分からない。

 だから冬君が包み込むように抱きしめ続けてくれて、安心した自分がいる。


「……幻滅したよね?」


 それでも、やっぱり聞いてしまう。冬君はこんな私をどう思っているんだろう。ずっと怖くて聞けなかったから。

 冬君はきょとんとして、首を傾げた。


「雪姫に幻滅する要素なんて、ドコにもなかったよ。ただ俺は雪姫を追い詰めた奴らが許せない。ただそれだけだから」


 ぎゅっと冬君は私を抱きしめる力をこめた。

 心音が聞こえる。その音が私を包み込む。


「あのね、冬君」

「ん?」

「別に恨んでないよ? ただ苦しかっただけ。どうやったらみんなと上手く関わられるんだろう、ってずっと考えていたから。でも、それも冬君に出会うために必要だったんだなぁって。今はそう思っているよ」

「――俺はもっと前から、雪姫と出会いたかったよ」

「え?」


 予想もしない言葉に、私は目をパチクリさせる。


「雪姫をもっと前から支えたかった。幻滅? どうして? みんなのために雪姫が、こんなに頑張っていたのに? 幻滅する理由が無いよ。同じように光と黄島さんを責めようとも思わないけどね。人間関係が変われば、その環境に呑まれてしまうことだってあるよ。でも雪姫を傷つけた奴らは別だ」

「ふゆ君?」


 私は彼の目に吸い込まれそうになる。


「雪姫が見ようとしている綺麗な世界を泥で塗ろうっていうのなら、俺は誰だって許さない」


 あの時――カフェオレを淹れてもらった日。あの帰り道に言ってくれた言葉を、冬君は再び囁いてくれた。


 噴水が吹き上がって。

 光が乱反射して。


 さらに光が拡散して。水飛沫(みずしぶき)が二重に三重に屈曲して。


 この世界を直視できないくらい、光の乱反射が止まらない。

 双眸の奥底から感情が溢れて。だめ。もう止まらない。

 弱い私。うまく誰とも付き合えなかった私。そして脆弱な私を知っても、冬君は何ら態度を変えない。


「ふ、ふゆ君、冬君、冬君――」


 もうダメだった。ずっと飲み込んでいた感情、押し込めていた記憶、諦めることにした願い。それが全て、全部、吹き上がってくる。


 まるで、噴水が湧き上がるように。水飛沫を散らすように。光が乱舞するように。私の感情という感情、その断片まで巻き上げて。


「あ、う――」


 私はもう言葉にならない。

 冬君の胸に顔を埋めて――私は慟哭した。

 その指で髪を梳いてもらいながら。冬君に抱きしめてもらいながら。


 と、時計が20時を告げた。

 鐘が「りぃん」と鳴り響く。


 その音に耳を傾けていると――もう一度冬君が囁いた。その声は静かに響いて、私の胸を強く打つ。


 凍りついた時間が、その言葉で四散する。私はだから――変わりたいと思える。

 弱いままの私じゃなくて。

 過去のままの私でもなくて。


 今の私で。過去の私もすべて肯定して。


 否定しなくてもよくて。諦めなくてもよくて。

 冬君と出会えたから。


 だから、過去の雪姫(わたし)と今の雪姫(わたし)が手を重ね合わせることができた。


 否定も諦めもしなくて良い。

 もう何も怖くない。

 だって、私には冬君がいるから。


 冬君がいるから呼吸ができ――違う。もう、貴方がいないと、私は呼吸ができない。



■■■




「雪姫が見ようとしている綺麗な世界を泥で塗ろうっていうのなら、俺は誰だって絶対に許さないから」

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