112 クソガキ団参上!!
都合の良い、夢を見ている。そう思った。こんな光景は見たことがないし――多分、俺の願望なのだって思う。見たくもないエイゾウだって思うのに、隣で誰かが寄り添ってくれる。そんな錯覚すら憶えて暖かい、と思ってしまう。
「柊さん、どういうことなんですか!」
温厚な蒼司が、声を張り上げる。いつも柊さんの指示を聞いて、レッスンを頑張るあいつとは、まるで真逆で。
「そ、それは……。真冬が、き、決めたことで……」
「なんか、おかしいって思っていたんですよね」
そう言ったのは翠だった。眼鏡をかけた彼女は、いつも冷静にアドバイスをくれる。その翠は――いや、蒼司も、朱音もステージ衣装で。そうか、と思う。その衣装、それから控え室。思い出した……俺が引退を宣言した、セカンドアルバムツアー。その最終日、ライブ会場だった。
翠が、眼鏡のフレームに、指で触れる。この仕種は……怒りを、無理矢理、抑えている時の《《ヤバ》》いヤツだ。
「な、何が――」
「冬君だけ、レッスンを外されたのが、納得がいかなかったんですよね。疑問に思いながら、言葉にできなかった私たちも非はがありますけど。でも、この機会ですからしっかり教えてもらっても良いですか。柊さん?」
翠の言葉に、柊さんは目を逸らす。でもそれは悪手だ。普段は温和で、癒やし系キャラと、各方面から愛されている彼女だが、COLORSで逆鱗に触れちゃいけないランキング、ナンバー1が翠なのだ。翠は容赦なく、距離を詰める。回答以外の選択肢は許さない。有無を言わさない圧迫感は、夢と分かっていても、やっぱり怖い。
「そ、それは……明らかに真冬の技能は、君らと劣っていて、一緒のレッスンはそぐわな――」
「ウソですね。バカにしてるんですか?」
見事な一蹴だった。
「……な?」
「冬君と、私達を比べたら、ふー君の方が上手いに決まってるじゃないですか。キャリアが違うんですよ? 幼児の頃から、レコーディングスタジオが、保育園代わりだった人と、私達がかなうはずないじゃないですか」
「そ、それは……」
「察するに、柊さんがいつもふー君に言っていた【華】って、ことですか?」
「翠、それって、どういう?」
蒼司が首をかしげる。
「アイドル性ってことでしょう? 私達にはある。ふー君にはない。そう、柊さんは言いたかったんだと思うの。ふー君が上手すぎることで、私達とバランスが取れないってことかしら」
「はぁ?! そんなの冬がいたから、ここまで頑張って――」
「朱音の言う通りだけど、周りの大人達はそう判断していなかった、ってことだよね。それと、ふー君も」
「え?」
「多分……ずっと前から、ふー君は考えていたんだと思う。神原小春の息子としてのプレッシャー。COLORSメンバーとしてのプレッシャー、そういうことなのかなって今なら思う。挙げ句、華がないって言われたら――」
「棒たち、別にアイドルなんて謳ってないよ?」
「だとしても。オトナの皆さんは、私達をそう売りたい。音楽番組やバラエティー番組、ラジオでも喋られる私たちに価値を見出した、ってことだよね」
「そんなの絶対、間違って――」
今にも飛び出しそうな朱音の手を、翠は引っ張った。
「は、離してよ! 翠! 私はふーの所に! ふーと話をしなくちゃ!」
興奮する朱音み向けて、翠は首を横に振った。
「私も呆然として、さ。時間を浪費しちゃったから。今日ライブに来てくれたファンの口は塞げない。まして、ライブの千秋楽で、報道陣も来ていた。でもそれ以上に――柊さん、私はあなたを恨みますからね」
スマートフォンを放り投げる。
蒼司が、危なげなくキャッチした。
「公式ホームページ?」
――COLORSメンバー、真冬脱退のお知らせ
「なんで? お知らせ、早くない?」
「早くないよ。私達が、頭を真っ白にさせている間に、大人達が頭をフル回転させたのよ。これは『ずっと前から決まっていた』ことで。『メンバーの同意である』って。そうメッセージを出すことにしたんだよ」
――ずっとメンバー間で、議論を重ねてきましたが、方向性の違いから、真冬は今回のライブを最後に、COLORSを脱退することになりました。COLORS、そしてスタッフは、真冬の新たな旅立ちを応援したいと……。
「な、何よ、コレ?! 私達、話し合いなんかしてないし!」
「納得なんか、全然してな――」
「私だって納得できないよ、蒼司。でも問題はそこじゃない。前から準備をされていたみたいじゃない、このホームページの更新? きっと、少なくとも柊さんは、ふー君の想いを知っていたんだと思う!」
冷静に努めようとした、翠の感情の箍。それが外れた瞬間だった。
はっと、蒼司は息を呑む。
「あの時、なのか……」
きっと、俺がギターを叩き壊した日のことを、蒼司は思い返したのかもしれない。
――冬、柊さんと何があったんだよ?!
――別に、何もないよ。ギターを落としただけだから。
――落とした壊れ方じゃないじゃんか。
――柊さんを怪我させてないから。
――そういうこと、言っているんじゃなくて!
――大丈夫。本当に大丈夫だから。
うん、あの時は上手に笑えていたと思う。
この場所に、俺がもういないと分かっているはずなのに。朱音は、俺の名前を呼んだ。
慟哭する感情と俺を呼ぶ、そんな声が入り交じって。
翠が、そんな朱音を抱きしめる。
これは夢。
ただの夢。
都合が良い、俺の夢。
そう思うのに。声なんか、聞こえるはずもなにのに、俺はあらん限りの声で、三人の名前を呼んでいたんだ。
蒼司、朱音、翠――!!
■■■
勢いよく、体を起こす。目の前でにっこり笑う雪姫の顔があって、目を丸くした。見れば、テーブルには、片付けがまだの皿が置かれたままで。
雪姫が作ってくれたトマトソースのパスタは、あまりにも美味しすぎた、って今さらながらに思う。後味の悪い夢を、見事に上書きしてくれた。なんでも、俺が学校に行ってからホールトマトを煮詰め始めたというのだから、恐れ入る。
すっと、髪を撫でられて。それから、引き寄せられた。鮮やかな手つきで、膝枕をされて面食らってしまう。膝丈上のプリーツスカート。微妙に頬が、雪姫の肌に触れて、心臓が早鐘を打つ。
「え? もしかして、俺、ずっと膝枕されてた――?」
「うん。食べたら、眠そうだったから。寝させてあげようかなぁ、って」
母さんのことを色々考えていたこともある。でも、退職願を書くために早起きをした。自分で決めたこととはいえ、神経をすり減らしてしまったらしい。あんな夢を見ながら、それでも誰かに背中を支えてもらっていたと思ったのは、錯覚ではなかったらしい。
「……女の子の名前、呼んでたいたよね?」
むすっーと雪姫は、頬を膨らませる。え? って思う。俺、声が出ていた?
「いや、それは、幼なじみの、夢を見ていただけで、他意はないというか――」
慌てる俺が、よっぽどおかしかったらしい。雪姫はクスクス笑う。
「分かってるよ。COLORSの朱音さんと翠さんだっけ?」
「う、うん。うん」
必死に頷くが、雪姫の膝の上。まるで、格好がつかない。と、雪姫がさらにクスクス笑う。
「ごめん、ちょっとイジワルだよね?」
「え?」
「昨日、空に釘をさされたし、ね」
――姉ちゃん、一緒にいるのならヤキモチはほどほどにね。あまり束縛しすぎると、男は離れちゃうよ?
あぁ、って思う。確かに、空君はそんなことを言っていた。でも、嫌いになるのだろうか? 思い巡らせば、やっぱり首をひねってしまう。夢の残滓を思い返せば、俺はきっと自分が思う以上に、COLORSに大切にされていたのかもしれない。
だけど、って思う。ストレートに何回も「好き」と言われるのは、雪姫が初めてだった。戸惑って、でも――くすぐったくて、単純に嬉しいという充足感に満たされていた。
「冬君?」
雪姫に声をかけられて、我に返る。
「へ?」
「トマトソースがついてたよ」
慌ててガシガシと、左手で右頬をこする。
「そっちじゃないよ?」
唇が、左頬に触れて。
「え――」
それから、唇を塞がれて。当の雪姫は満面の笑顔を咲かせている。
「……雪姫?」
「小春さんから、たくさん聞いたことよ? でも、私の知らないこともたくさんあるって思うの。でも、それ以上に私しか知らない冬君もたくさんいるからね」
雪姫の唇が耳朶に触れる。
「え、ゆ、雪姫――あ、Cafe Hasegawaに俺、行かないと」
時計をみれば、すでに約束の時間はとうに過ぎていた。
「大丈夫、ちょっと遅れるって、マスターさんには連絡済みだから」
「え?」
俺、雪姫に午後はCafe Hasegawaに行くって言ったっけ――?
そんな言葉はやっぱり、雪姫に塞がれてしまう。
人差し指で、そっと唇を撫でられて。その様が少し、艶やかだって思ってしまう。
「片付けたら、一緒に行こう?」
「え、ちょと、俺は一人で――」
「一人で待つのはちょっと不安かな? 今日はちょっと私、調子が悪いみたいなんだ」
「どこが?!」
どう見ても、俺の方が雪姫に翻弄されている気がしてならない。
「ひゅーひゅー」
「口で言っても、それ喘鳴じゃないからね?」
「今は冬君がいるから、落ち着いているだけだもん」
ニコニコ笑ってそんなことを言うが、全く説得力がない。きっと、小さい時、こんな笑顔を溢しながらイタズラに興じていたんだって思う。クソガキ団の【雪ん子】恐るべし――そんなことを思っていると、また、唇を塞がれた。
今度はその唇で、温かい温度、包み込むような温もりで。溶かされるような、後頭部が痺れるような、そんな錯覚すら覚えて。まるでお酒で酩酊するような感覚だった。そういえば、って思う。陽一郎さんに、打ち上げの場で間違って、お酒を注がれたことがあったっけ。あの時の感覚よりも、甘くて。溶けて、体に熱を灯す。
――でもね。冬君、一人に抱え込ませてあげないからね。
そう雪姫が呟いた気がして、顔をあげる。
「それって、どういう……」
目と目が合えば。やっぱり雪姫に、唇を奪われた。
■■■
(……どうして、こうなった?)
頭痛がしてきた。Cafe Hasegawa、一番奥のテーブル。スタッフが休憩で活用していた、通称・使われずの間である。死角になっていて、一般のお客さんは活用がし辛い。余程混み合っている時でないと、ココに誘導することはない。逆を言うと、他のお客さんの視線が気にならないので、事務作業や文芸部の面々が愛用していた。ようは、常連のVIPスペースなのだった。
でも、って思う。
真正面にマスター。そして、美樹さん。俺の横には、雪姫。さらに、隣のテーブルには、光、黄島さん、瑛真先輩、音無先輩。それから大國、芥川さん。向かいには、空君と、天音さん、彩翔君に湊ちゃん。
何、このフルメンバー?
さらに、比較的空いている時間帯のはずなのに、今日はやけにお客さんが多い。中心が町内会の知った面々で。これはどういうことなんだ――?
「まぁ、こんな状況だからさ。ここで、話を聞かせてもらうね? 注文が入ってたら、すぐに対応できるように、ね」
「あの、事務所でお話は……」
「ちょっと厳しいかな? いかに店員のみんなが、頑張ってくれていても、ね」
「……そうですよね……」
ため息をつく。俺は覚悟を決めて、バッグから退職願の封筒を取り出して――思わず二度見してしまった。
【金一封】
何度も、見返しても文字が変わることはない。カバンの中には、これしか封筒がなかった。
(……なんで?)
目をパチクリさせ狼狽していると、マスターが封筒を受け取ってしまう。
「相談したかったのは、このこと?」
「……そ、そうなんですが、いや、ちが、違うんです。これは、何かの間違いで――」
マスターが、封筒から、中身を取り出そうとして。その瞬間、紙吹雪が舞った。
金銀。銀紙。色とりどり。折り紙を切り刻んだ、そんな雨が降ってきて。そして、子どものおもちゃとして使われる、ちびっ子銀行の千円札が、最後に舞う。
「「「「クソガキ団、参上!」」」」
みんなの声がハモる。真横からもそんな声が聞こえて、目を白黒させるしかない。
「あぁ、上川君。下河さんを怒らないであげてよ。真っ先に彼女から、相談があったんだ。だから、君がどう考えていたのか、想像はできたんだよね。君、真面目な子だし」
クスリと笑んで。それからマスターはコホンと小さく咳払いをした。
「……大人からはこれだけは言わせて欲しいかな。君はまだ高校生なんだ。全部、一人で決めなくても良いし、ドライに判断するのが社会の全てじゃないよ」
「で、でも俺はこの状況じゃ何の戦力にもなりませんから! 費用対効果で考えたら――」
「君は、自分を過小評価し過ぎだよ。それに費用対効果って言うのなら、君がカフェオレを淹れるようになってからの売り上げ、前年度比で今すぐ示そうか?」
ニッとマスターが笑う。
「付加価値って言葉もあるね。君がいてくれるだけで、確かに価値があるんだ。それで不満なら、そうだね。店員のみんなに、恋するカフェオレをレクチャーしてもらうのも良いよかもね。新商品を、下河さんと一緒に考えてもらっても良い。君ら二人が退職するなら、瑛真の小遣いを、減らさないといけない。それくらウチはダメージが大きいからね?」
「ちょっと、お父さん! それ、どういうこと!?」
瑛真先輩が抗議の声を上げた。
「実は、知る人が知る、真冬に会えるカフェなんですよね。私的にもダメージが……」
芥川さんの発言は、この際、無視をすることにして――俺は、隣の雪姫の顔を見やる。
「……やっぱり知っていたの?」
「うん。同じアパートにいるんだもん、分かっちゃうよ」
と雪姫が取り出したのは、退職届と書かれた、本物の方の封筒だった。
「冬君が、寝てる時に、すり替えさせてもらったの。結構、簡単なお仕事だったよ? 小春さんとも相談をして、ね。冬君に一人で抱え込むのは、分かっていたから。きっと、遅かれ早かれ、そんな選択しそうだなぁって思っていたの」
ニコニコ笑って、そう言ってのける。
「……だから、怒っていたの?」
学校が戻ってから、感情が揺れる、雪姫の瞳を思い出した。ようやく、その理由に思い至って――。
「怒ってないよ?」
「え、でも――」
「あぁ、そういうことね。上にゃん、ゆっきはね、怒っていたワケじゃないからね?」
「ほら、空君。空君が余計なことを言うからだよ!」
「ちょ、ちょっと! 彩ちゃん! 翼ちゃん! それ以上はストップ! それ、約束と違うよ!」
ワタワタと慌てる雪姫を見て、俺は目が点になる。
「冬希。下河はね、匂いを感じたんだって、さ」
「ちょっと、海崎君!?」
「そうそう、他の女性の匂いがしたんだって」
瑛真先輩までニヤニヤして言う。キャパオーバーの雪姫は、真っ赤になその顔を隠すように、テーブルに突っ伏してしまう。思い至ったのは、保健室での弥生先生、添田先生、それから志乃さんとの面談だった。
「ちょっと! あれは、志乃ちゃんが、上川君にくっつきすぎだったんだからね!」
「弥生ちゃんも便乗したクセに――それに、久々の真冬君だったからね。でも、ヤキモチ妬いちゃうよね。その気持ち、分かるなぁ。私はそんな雪姫ちゃんに、共感だけどね」
近くで某担任と養護教諭の声が聞こえてきたが、やっぱり無視することにする。
――姉ちゃん、一緒にいるのならヤキモチはほどほどにね。あまり束縛しすぎると、男は離れちゃうよ?
トリガーは、空君のあの言葉か。思わず、苦笑が漏れた。
俺は、迷わず雪姫の髪を梳く。
「……ふ、ゆ君?」
顔を上げたその目は、もう涙腺が決壊しそうで。濡れた目尻を、そっと指で拭ってあげる。雪姫は雪姫で、ずっと湧き上がる感情をガマンしていたのかと思うと、妙に力が抜けてしまう。
「遠慮しないんじゃなかったの?」
「そ、それは冬君だって――」
「うん。一人で抱え込ませてもらえないのは、よく分かった。それに、やっぱり雪姫に大切に想ってもらっているなぁ、って」
「……大切だよ。大事だよ。誰より、冬君を一番に考えちゃうよ。だから、冬君の力になれないの、辛いよ。他の子のこと、考えているのも見ているのも、やっぱりイヤだよ。でも、それくらいはガマンしなくちゃって――」
「俺、どうしても抱え込んじゃうからさ。雪姫くらい、傍にいてくれる方が丁度良いと思ったんだ。正直、今まで、こんな風に甘えたことなかったから。甘え方って、よく分からないんだよね。でも、雪姫の前でなら、素直になれちゃうから」
「私、きっと学校に行っても、こうだよ?」
雪姫が息を吐き出す。呼吸に乱れはない。ただ、俺だけを見てくれている。俺も、雪姫しか見られない。結局、COLORSの夢を見ても、雪姫の体温に包まれていた。だから、思ったより冷静でいられたんだって思う。
「……学校では、少しだけ遠慮してくださいね?」
生徒会副会長の声で、はっと我に返る。二人の距離は一寸にも満たなくて。でも、もっと近づきたいと思っている自分がいる。自分達に注がれた視線にようやく気付いたのに。
「てめぇ、上川! 雪姫にそれ以上、近づくな!」
「ひかちゃん、もうちょっと、近くに行っても良い?」
「へ? え? なんで?」
「じゃ、瑛真ちゃんは私と」
「なんでよ?」
「じゃ、瑛真先輩、私と!」
「芥川さん、離れて?! なんか身の危険を感じた! ゾワゾワする!」
「マコちゃん、私達も良いよね?」
「お店の中じゃダメでしょ。お仕事が終わったら、ね」
「……空君、もうちょっと近づこう。やっぱり、しっかりお話をしないと、って思ったの。なんで、恋愛経験のない人が、お姉さんに偉そうにアドバイスをしているのかな?」
「ん? 最近、よく相談されるけど? 話しやすいって好評だよ?」
「それが本当に恋愛相談ならね!」
「翼ちゃん、笑顔で、空に近づく子を牽制するもんね」
「本当に空、バカかよ」
そんな賑やかな喧噪に目を丸くしていると、雪姫が本物の退職願を改めて手に取った。
迷いなくビリビリに破いて。
それから、放り投げる。
まるで、粉雪が舞うようで。カフェのなかでする悪戯としては、いささか度が過ぎる気もするけれど。
でも、照明に反射して――綺麗だって、思ってしまう。つい見惚れてしまった。
みんなが、そんな粉雪に見とれた刹那――雪姫は、俺の耳元に唇を寄せる。
「絶対に、一人で抱え込ませてあげないから」
凜と、そんな雪姫の声が俺の鼓膜を震わせる。季節外れの粉雪が舞い続けて。
俺が答えようとしたその刹那――やっぱり雪姫に、言葉ごと奪われたんだ。
作者から蛇足的な後書きです。
2022年、最終更新回でした。
君呼吸初、長い回でもありましたが、なんとか書けました。
お付き合いいただき、ありがとうございます!
雪姫の学校、COLORSのこと、生徒会、空君と翼ちゃん、光と彩音。
少なくとも、ここらへんは書きたいので、もうしばしお付き合いください。
ここまで、読んでいただき。
今年も、本当にありがとうございました!




