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夜、いつもより少し遅く帰ってきた柴原さんはまだ起きていたすずを抱き上げて膝の上に座らせた。すずはパパに抱っこしてもらえてご機嫌だ。


「すず、ママに会いたい?」


すずはキョトンとするも、すぐにはっとなって柴原さんの膝の上で跳ねた。


「ママ?うん!ママ!どこにいる?」


「今病院にいるんだ。」


「すずもびょーいんいく。いまいく。」


「次の土曜日に行こうか?」


「いまいくー!」


すずは元気よく手を挙げた。柴原さんの膝から下りると、走って自分の上着を取ってくる。


「ねえね、すずねーママのとこいく。うわぎきせて。」


「う、うん。すず、今じゃないよ。今度の土曜日だよ。」


「やだ。いまいきたい。」


分かっているのかどうなのか、すずは上着と私を交互に見ながら何か葛藤している。困って柴原さんを見ると、眉と目尻を下げてすずを見ていた。


「有紗は会わないって一点張りだったけど、やっぱり会わせることにした。このまますずの記憶から消し去ってしまうのは残酷かなと思うんだ。」


「ねえねもいく?」


「私は…。」


言い淀んでしまう。

私は行った方がいいのだろうか。

行かない方がいいのだろうか。


「美咲も行こう。有紗には三人で行くからって言っておいた。」


すずは喜んでいる。

柴原さんはいつも通り。

迷っているのは私だけだ。

私たち三人で連れ立って行くことに、姉はどう思うだろうか。


「美咲、大丈夫だよ。今日きちんと話したから。美咲が頑張ってすずを育ててくれてること、俺たちは三人で住んでいること。有紗は理解してくれたから。それから、すずに会うことも了承してくれた。だから大丈夫。」


ポンと頭を撫でられ、私は顔をあげる。

柴原さんの優しい瞳と優しい口調は、いとも簡単に私に安心をくれた。

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