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すずの寝かしつけをしてから残りの家事をこなそうとリビングへ行くと、柴原さんがちょうど洗い物を終えたところだった。


私の作った夕食を文句も言わず平らげ、なおかつシンクにたまっていた食器も全部洗ってくれている。何も言わなくても自然と協力体制ができている柴原さん。優しくて気遣いのできる素敵な男性。その隣には私じゃなくて姉がいるはずだったのに。


「すず寝た?」


「うん。」


「元気ないけどどうかした?何か飲む?」


柴原さんはマグカップの入っている棚を開ける。ちょっとした気遣いさえも胸がぎゅっとなってしまう。ここにいるのは私ではなかった。何度でも思う。


「ちょっと話があるんだけど。」


「うん?」


私は昼間姉から預かった封筒を柴原さんに差し出した。柴原さんは素直にそれを受け取る。


「これ、お姉ちゃんから預かった。」


「え?有紗と連絡取れたの?」


「うん。」


封筒を開けると、とたんに柴原さんの顔が険しくなった。私は中身を知らないので思わず首をかしげる。


「有紗は今どこに?」


「入院してる。」


「入院?」


「…末期癌なんだって。」


私の言葉に、柴原さんの顔は更に険しくなった。

そりゃそうだよね、妻が末期癌だなんて聞いたら驚くよね。

当たり前のことなのに、なぜか胸が痛んだ。

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