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111/112

*111

未だプリプリ怒ってそっぽを向く私に、柴原さんは覗き込んで言う。


「で、美咲は?」


「え?何?」


「美咲は俺のことどう思ってるの?なんか俺ばかり美咲が好きみたいで一方通行なんだよね。」


「えっ…。あの、その、えっと、」


「うん?」


「…好き。」


ボソリと呟くと、柴原さんがくしゃっと笑った。その笑顔に心臓かドキリと反応する。


「よかった。」


柴原さんの大きくて温かい手が私の頬を優しく包んだ。

近づいてくる距離感に自然と目を閉じる。

柔らかな感触と共に、一気に満たされた気がした。


私、柴原さんとキスをしてしまったらしい。


後から追いつく思考に、私は苦笑いする。


「あー!すずも、すずもっ!」


いつの間にか起きていたすずが、私たちによじ登りながら口をタコのようにさせている。


「すずもちゅーする!」


躊躇いもなく口に出されると恥ずかしさが込み上げてくる。まさかすずに見られているとは思わなかった。


「すずにはほっぺ。」


柴原さんが屈んですずの頬にキスをした。


「じゃあねえねはこっちから。」


すずを挟むように、私と柴原さんは両側からすずの頬にキスをする。

すずは、キャーと嬉しい悲鳴を上げてもういっかいとせがんでくる。

私と柴原さんは顔を見合わせてクスクスと笑った。

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