023
俺はテイムに関して一つ、特殊なスキルを取得していた。
──広域契約
本来個体と一対一で交わす契約を、範囲に向けて一斉に行うことができるスキル。
例えば上空の鳥の群れ、地上をかける狼の群れ、情報を与えてくれる虫型の魔獣たち。
これらをテイムするときには特にお世話になった便利スキルだった。
──ネクロマンスの範囲を広域化することに成功しました
やっぱり。
思い浮かべればスキルの強化も可能だと分かった。
「おあつらえむきな場所だしな。一回やってみるか!」
『キュオオオン』
『グモォオオオ』
肯定するように吠えた二匹に背中を押される形で、スキルを展開した。
「ネクロマンス!」
──ネクロマンスに成功しました。
──ゾンビをネクロマンスしました「痛覚耐性」を取得しました
──ボーンソルジャーをネクロマンスしました「柔軟」を取得しました
──グールをネクロマンスしました「食事強化」を取得しました
──クラッシュアーマーをネクロマンスしました「防御強化」を取得しました
──スケルトンをネクロマンスしました「再生能力」を取得しました
──ゴーストをネクロマンスしました「物理耐性」を取得しました
──ブラッドハウンドをネクロマンスしました「血液回復」を取得しました
「おお……」
姿は見えない何者かと繋がった感触を得る。
だが声はここで止まらなかった。
──リッチをネクロマンスしました エクストラスキル「白炎」を取得しました
──レイスをネクロマンスしました エクストラスキル「雷光」を取得しました
「これは……」
エクストラスキル。
ネクロマンスで繋がった個体の特性を考えても、上級魔法だろう。
魔法は体系立った四大属性魔法の他に、名を冠するオリジナル魔法がある。
一つでも取得していれば大きな武器になる。ものによってはそう、二つ名の由来になるような……待てよ?!
「白炎と雷光って、歴代賢者の冠魔法じゃないか!?」
ふと目の前にキラキラした何かが横切り、そのまま空へ還るように飛んでいくのが見えた。
「まさかな……」
テイムとネクロマンスは似た部分のあるスキルだが、大きな違いもあった。
その最大の違いがこれだろう。
テイムがその後一緒に活動することを前提としているのに対して、ネクロマンスは能力を引き継いでいく性質が強い。
俺が強く願わなければ、力を引き継いで消えていく。ミノタウロスたちがエースしか現れなかったのは、あのときの俺がそう願わなかったからだろうというのが、道中なんとなく二匹のパートナーが伝えてきた見解だった。それについてはまあ、概ねそうだろうと思っていた。
考えようによっては聖魔法以外の特殊な除霊手段にもなるようだ。
『キュオオオン』
「ああ……本物の賢者か、それを模した人物かはわからないけど……賢者のオリジナル魔法を覚えるほどの人物がアンデッドになったってわけだからな」
レイから発された意思は「警告」だった。
『グモォオオオ』
エースも訴えかけてくる。
わかってる。
もう目の前に気配があった。
よろしくお願いしますー!




