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勝手に俺の「普通」に「勇者」のレッテルを貼らないでください。  作者: 亀犬
勇者、普通の俺(ギャグパート)
9/29

9. 物語は終わらない

 やがて目映い光が収まり、徐々に視界が開けてくると、目の前には先ほどの場所とは違って、多くの建物が建ち並んでいるのが見える。

 

「……まさか、また失敗したのか?」


「いえ、していませんよ」


「でも、さっきと全然違う場所だぞ」


 俺が疑問を口にすると、それを聞いたクルミは建物をバックに、両腕を左右に広げながら微笑む。


「ここは神様の町。通称〈神町(かみちょう)〉です」


「ほぉ、これが噂に聞く神町か」


 それを聞いたペンタンは感嘆の息を漏らす。


「ペンタン、知ってるのか?」


 俺がそう聞くと、ペンタンは腰に手を当て、その小柄な体型の胸を張る。


「私を誰だと思っているのだ?」


 幼い見た目の可愛らしい天使、ではなく魔王だ。


「私のい」


「お前には誰も聞いてねぇよ」


「最後まで言わせて下さいよ」


 クルミが隣で不服そうな顔をしながら、頬をプクーっと膨らませる。


「それで、どうしてここに来たんだ?」


 俺はそのことをスルーして聞くと、クルミは少し不機嫌そうな様子で答える。


「それはもちろん、ここで暮らすからですよ」


「………そっか」


 すっかり忘れていたが、俺は元の世界に戻れないのだった。本当になんてことをしてくれたのだろう、このポンコツ神は。


「どうした神道? そんな世界が滅んだのを目の当たりにした様な顔をしとって」


「はは、少なくとも俺の普通の日常は粉々に砕けて消失したんだよ……」


「何を言っておるのかは良く分からんが、」


 ペンタンはトコトコとクルミの隣に並ぶと、誇らしげな顔をしながら、高らかに言い放った。


「美少女二人とのラブラブ生活の方が待っておるのじゃ! そんな顔をするのは筋違いじゃろっ!」


「………」


 俺がそんな様子のペンタンに冷たい視線を送っていると、クルミはハッとした顔でペンタンの方を見る。


「さすが魔王様、いえ天使様! そんな説得の仕方があったなんて!」


クルミの言葉に、ペンタンは得意気な顔をしながら、鼻をフンッと鳴らす。


「ふふんっ、もっと褒め称えいっ!」


「いよっ、天上のロリ魔王っ!」


「……それ、褒めてなくね?」


 それから、天界だからといって、わざわざ天下を天上に直す必要もないと思う。


 俺の言葉が二人に届くはずもなく、二人はこんな調子で暫く盛り上がり続けるのであった。

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