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勝手に俺の「普通」に「勇者」のレッテルを貼らないでください。  作者: 亀犬
勇者、普通の俺(ギャグパート)
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6. 降臨、ロリ魔王

「お主ら、此処で何をしておるのじゃ」


「うるせぇ……って、どちら様で?」


 声のした方向に振り向くと、そこには金髪ロングの可愛らしい少女がいた。

 少女に対して可愛いなどと言うと、俺がロリコンのように見えてしまうかもしれないが、断じて違う。

 俺はロリコンなどではない。ただの高校生だ。

 その少女は俺の方を見ながら、再び問い掛けてくる。


「まずはこっちの質問に答えよ。お前らは此処で、何をしておるのじゃ」


それを聞いていたクルミは唐突に呟く。


「あ、魔王様」


「え」


 その呟きを聞いてしまった俺は呆然とする。

 なぜなら、俺からして見れば女子高生が五歳児に向かって魔王様などと言っているようにしか見えないからだ。

 一言で言ってしまえば、不自然極まりない。

しかし、そんな俺の気も知らずにクルミはその金髪少女に挨拶をする。


「お久しぶりです。お体の方は大丈夫なのでしょうか?」


 女子高生が五歳児の体を気遣っている光景は新鮮だ。

 いや、ここでは神が魔王の体を気遣っていると言うべきだろうか。

 どちらにせよ、俺にはこの光景がコントにしか見えない。


「おお、なんだお主だったのか。ええっと…」


その上、この口調だ。もはや、コント以外の何物でもない。


「今は神道君に付けてもらいまして、クルミと名乗っ

 ています」


「ほう、此奴は神道というのか。ふむ、どれどれ」


 ロリ魔王は俺の目の前に立つと、品定めする様にジロジロとあらゆる所を見てくる。

 何だか、早朝の市場に出されている魚になった気分だ。


「なあ、クルミ」


その視線に耐えられず、俺はクルミに声を掛けてしまった。


「はい、何でしょう」


 ただ話し掛けただけなため、特に聞きたいことがあるわけでもないのだが、話し掛けておいて何も言わないというのはどうかと思い、俺はこの少女について聞くことにした。


「コイツが魔王なのか」


俺が指を指しながら聞くと、その少女が口を挟んでくる。


「誰がコイツじゃ。私には「ペンタン」という名があるわい」


「ペンタンっ!?」


 あまりにも魔王とは無縁そうな可愛らしい名前に、俺は衝撃を受ける。

 確かにこの可愛らしいルックスとであればアリかもしれないが、いくら何でも魔王に付けるべき名ではないだろう。

 そんな事を一人で思っていると、ペンタンは軽く微笑みながら聞いてきた。


「……お主、今何を思った?」


「いえ、何も思ってなどおりません」


 俺は反射的にそう応えていた。


「……まあ、いいわい。そんな事より、お主らは何をしに来たんじゃ?」


その質問にクルミがニコニコとしながら応える。


「魔王討伐に来ました」


「………」


 ここは笑うべきところなのだろうか。もしかしたら、本当は魔王討伐なんていうのは嘘であって、実は俺にこのコントを見せたかっただけなのではないか。

 そもそも神と魔王が敵意もなく挨拶している辺りからおかしいのだ。

 第一、話がトントン拍子で進み過ぎていて、正直ついて行けていない。せめて一日くらいは猶予があってもいいと思う。でなければ魔王討伐よりも先に精神的にリタイアしてしまいそうだ。

 俺が心の中で現実逃避やら不満やらをたらたらと並べていると、ペンタンは実に愉快そうな表情をしながら言った。


「ほうぅ、それは楽しみじゃな」


 果たして何がそんなにも楽しみなのだろうか。なぜ自分の命が狙われているというのに、こんなにも楽しそうにしていられるのだろうか。

 見た目が少女であることもあって、俺にはペンタンが魔王としてではなく、一人の頭のおかしい人間として恐ろしく感じる。

 俺が内心、恐怖で震えていると、ペンタンは俺のことをマジマジと見ながら不思議そうな顔をする。


「クルミ、此奴は何も付けておらんようじゃが……」


 その疑問に対して、クルミはさも当然だと言わんばかりの表情で答える。


「ええ、神道君ならこの状態でも余裕だと思われますので」


「お前ふざけんなよ」


 一体なんの根拠があってそんな事を言えるのか。どこにそんな自信があるというのだ。是非とも教えていただきたい。

 それから勝手なことを口走って欲しくない。非常に困る。

 

「ほぉぉ、そうかそうか、それは腕がなるのぉ」


 こっちも大概だ。

 見た目は可愛らしい少女だというのに、なぜ初対面の人と殺り合う気満々なのだ。せめて、その可愛らしい声をどうにかして欲しい。

 ハッキリ言って、調子に乗っている少女にしか見えない。


「ふふっ、楽しみにしておいて下さいね」


「お前、マジで黙れ。次なんか余計なこと言ったらどうなるか分かってるよな」


「えっ、そ、そんな……まだ手も繋いでないのに……さすがにちょっと、早すぎます……」


「し、下ネタはよさんかっ」


 口調に反して意外と可愛らしい性格をしているペンタンに、俺は少々驚く。

 それから俺はペンタンが想像しているような事をする気は微塵もない。勘違いされているのは完璧にクルミのせいだ。


「言っておくけど、俺はコイツの体なんてもとめてねぇぞ」


「「えっ!」」


 なぜクルミまで驚くのだ。まさか、本気でそんな事を思っていたというのか。ボケではなかったというのか。だとしたら見当違いもいいところだ。

 

「ど、どういう事だ神道っ」


「どいうことも何もねぇよ。お前が勘違いしただけだろうが」


「黙れ」


 ペンタンは先程よりも若干低い声でそう言うと、キッと俺のことを睨み付けてくる。

 そんな様子を見ていたクルミは、落ち着いた声で口を挟んでくる。


「まあまあ、二人共落ち着いてください」


「そうだな。じゃあ余計なことを言ったクルミちゃんを殴って落ち着こうとしようかな」


「ゴメンなさい、ちょっとやり過ぎました。お願いします、許してください」


 クルミは勢いよく頭を下げてくる。その勢いで俺の顔に髪が掠ったが、美少女の髪に触れられたということにして、ここはスルーした。


「はいはい、分かったよ」


 俺がそう言うと、クルミは顔上げた。その顔はニコニコとしており、反省の「は」の字も無い。

 クルミは一つ咳払いを置いてから言った。


「さて、そろそろ始めましょうか」


「うむ、賛成だ」


 勝手に話を進めないでいただきたい。実際に戦うのはクルミではなく俺なのだから。

 俺がそんな事を思っていると、クルミがニコニコとしながら親指を立てる。


「神道君、ガンバッ」


 今日のところは、その可愛らしい顔に免じて、一発だけで許してあげようと思う。

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