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003 異世界言語

引き続き評価やブクマなど、応援いただきありがとうございます。

今回最高位、日間ファンタジー異世界転生/転移ランキングBEST300の127位に入りました!


 そんなスプラッタでホラーもんな俺に怯えたのか、3人が引きつった表情を浮かべながらホールの出口へと駆け出していた。


 途中、3人の中で年長の男が何かに躓いてすっころんだ。

 何だろうか……壊れた……人形?


 男は転んだことを恥じる素振りも見せず、前のめりの体勢のまま出口へと消えていった。


 貴重な情報源……いや、殺人犯を逃がしてしまった。

 あいつらが殺人犯なら火傷に苦しむ俺を助けようなどという善意は持ち合わせて無いだろう。

 犯行現場を見た俺の口封じをしなかっただけ良かったのかもしれない。


 「saxgaw、iaie……ozagsanioe」


 空虚な感覚に囚われている俺の後方から声が聞こえた気がした。

 俺の後ろと言うと……。


 俺はそーっと視線を死体さんに向ける。


 ぎゃーっ! こっち見てるー!


 剣が突き刺さった死体はこちらを見て何かをつぶやいているが、何を言っているのか聞き取れない。

 生きているのなら死体ではないため怯えることは無いのだが、彼の惨状は一般庶民の俺には目に余る。

 俺自身の状況はさておき、だ。


「あ、あのー、大丈夫なんですか? 痛くないんですか?」


 俺は恐る恐る尋ねてみた。

 見た目は細い体の青年。だが血の色は暗い紫色。人間では……ないのか?


「wajpd……ska……punga、uiewaua、tijgnfur」


 何かを言っているようだがまったく理解することができない。

 もしかして言葉が通じないんじゃなかろうか。


 会話する意思は見て取れる。

 こちらとしても会話は望むところだ。

 とりあえず何でもいいから情報を! 状況の説明を、経緯を教えて欲しい!


「あー、あー、あなた、日本語、わかります?」


 俺の呼びかけに対して彼の口が動くが、やはり聞き取れはしない。


 どうしたものかと思っていたら、彼の手から光るものが二つ、俺のほうにフワフワと寄ってきた。

 一つは磨き抜かれた丸い水晶玉、もう一つはごついカバーの分厚い本だ。


 ゆっくりと近寄ってきたそれらは、ぐるぐる俺の周囲を高速で回りだすと、じわじわと俺の頭上へと昇っていく。


 目を回しそうなので追うのをやめた時、俺の眼前でぴたりとそれらが停止し……いったい何が起こるのかと思った矢先、水晶玉が俺に向かって突撃してきた。


 ぼごっ、と水晶玉と俺の骨がぶつかる鈍い音がした。

 俺は痛みに備えたが、先ほどからと同様に痛みは無く、またもや杞憂に終わる。


 痛みが無いからといって油断はできない。

 なぜなら水晶玉は俺の胸あたり、胸骨にめり込んでしまったからだ。

 もしかして寄生生物!?

 などと思ったが、めり込んだ辺りが何やらじんわりと暖かく気持ちいい。

 寒いときのホッカイロのような、温泉につかっているような、そんな暖かさに意識を奪われていると……次の瞬間、俺の意識はそんなぬるま湯のような状態から一気に鮮明になった。


 何が起こったかと言うと……。


 俺の眼前にはもう一つの光るもの、宙に浮いた本があったのだが、それが自然にページがぱらぱらとめくれ出して、とあるページで止まったかと思うと、本の中からまるでトイレットペーパーのような長いものが現れて触手のように俺の体に巻きついてきたのだ。


 年代物のパピルスのようなそんな紙なのか布なのかわからない材質のそれには文字のようなものがびっしりと書き込まれており、振り払おうとする俺のことをものともせず、骸骨ボディをぐるぐる巻きにしていった。


 鏡があればよくわかるだろうが、さながらミイラ男のようだ。

 胸の中央では骨にめり込んだ水晶玉が光を湛えている。

 布は水晶玉を避ける形で巻き付いているのだ。


 そういえば、目をふさがれているのに何で見えているのだろうか。

 口もふさがれて、息がくるしいっ! ということもない。

 いや、そもそも今の俺、目も口も肺も内蔵も無い骸骨のはずだけど!?

 これって生きてるって言えるのか?


「魔炎瘴気の上から結界を施すことに成功しました。引き続き宝玉マクスウェルにより身体の再生を行います」


 日本語!?

 この状況で初めて聞き取れる言葉だぞ!

 でも聞き取れるとはいえ、内容を理解できたわけではない。


 謎の日本語に理解が追いつく間もなく、水晶玉から眩い光が溢れ出す。

 何が起こるのかと身構えたものの何ができるというわけでもなく、俺は身を任せるほかなかった。


 何が起こったのか説明すると、まず水晶玉の周りに肉ができた。


 何を言っているのかはわからないと思うが、はじけ飛んで無くなった体の肉だ。

 まるで水晶玉を囲むようにドーナツのように肉がもこもこと水晶玉から外側へと生成され、そこからすごい速度で体全体へと波及していった。

 胸から始まり、首、顔。そして肩からひじ、手の指先まで。くすんだ赤色のような一目で人間ではないと分かる体表の色。

 爪も再生し、目も歯もそして頭髪も再生された。


 だが、その凄まじい再生が及ばない場所もあった。


 下半身だ。

強制ストーリー進行も次回が最後です!

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