第八話
「かわいー!」
「ほっぺたぷにぷにー!」
「こら、あんまり頬をつつくなよ」
「あ、指握ってきた・・・。」
子供達にぐちゃぐちゃにされる生後1年の赤ちゃん(おっさん)の図。
中に入ると意外と寒くはなかった。てっきり中と外の区別が怪しいくらいの寒さはあるかと思っていたけど、中に入ったと認識できるくらいは暖かい。やっぱり風の有無というのは大切だな。
「寒かったねー?」
「うーお」
「この子雪景色に怯えちゃってね。」
「あれま、そうなのかい?」
「家出た時はいつもよりテンション高めかなーって思っていたのに、こっちに入ったら少し怯えた様に外を見ていてね。」
「子供心には白い景色が怖かったみたいです。」
「なるほどねぇ」
どっちかというと、その白さでスリップ事故起こさないかが怖かったよ。
「みんなー。咲が帰ってきたわよ~」
「咲おかえりー」
「お姉ちゃんおかえりなさいー」
「こんな寒い中の帰省ご苦労ー」
廊下から居間に入ると、ほとんどの人が大きなこたつに浸かりながらゆるゆるになっていた。
「もう皆こたつ漬けなのね」
「さみーからなぁ」
「こら、寝ちゃダメよ。」
「眠いよかーちゃん・・・カァ」
「兄ちゃん、これどうやってクリアするの?」
「ん?これはな、この属性のモンスターで行くといいぞ。」
流石に親戚が多い。前世の親戚はまずこんなに集まらなかったから多いかどうかも分からなかったけど、
「あん?咲、おまえそれ・・・もしかして赤ん坊か?」
「ええ。私の娘の楓よ。」
「え!?噂の楓ちゃん!?まぁー!かわいいー!!!」
「え?なに?なになに?」
「咲おばさんが赤ちゃんを連れてきたんだよ。」
「私も見たーい!」
私の存在が発見された瞬間にゆるゆるだった親戚一同はピシッとなり、私のことを、はこ、運んで、ちょっ運ぶな!運ぶとしてもせめて抱き抱えろぉ!!
「ちょっと!そんな持ち方じゃ楓が傷つくでしょう!?」
「はいはいはい、楓ちゅわーん?おばさんとこんにちは~?あ、今何歳?」
ママとほぼ同い年に見える女性に抱き抱えられてなんとか落ち着いた。あともう少し続いていたらつい泣いていたかもしれない。
「1歳よ。」
「私も赤ちゃんみたーい!」
「見せてー!」
「ほらほら、あんまり触っちゃダメだよ?赤ちゃんは丁寧に柔らかに、ガラス細工を持っているときみたいに触れるんだよ」
「わぁ・・!かわいー!」
「ほっぺたぷにぷにー!」
「これはまた・・・血って凄いんだな・・・」
「血?」
「いや、なんでもない。」
あの、子供達よ。私の頬っぺたに触りたくなる気持ちは分かるが、あまり無遠慮につつかないでくれるか?
「久しぶりね、隆也君。」
「あ、お、お久しぶりです。」
「一昨年は確か中学受験したのよね?合格したって電話で聞いたわ。おめでとう。」
「あ、ありがとう、ございます。」
ふむ。見るからにママに対して緊張しているようだな。チラチラと見ながら目を背け、でも決して嫌な顔をしたり、無理に振る舞っているわけではなさそうだ。これらから導かれる答えはただ一つ!
隆也君は私のママに惚れている!
もしかしたら初恋だったのかもなぁ。まあ、本人も中学生になって母も結婚して私を産んだことで、失恋してしまったんだろうけど、それでもこう、ぎこちない接し方になってしまうんだろうな。なんとなくだけど分かるぞ、少年。その思春期を無事に渡りきるがいい!
「警告、対処してください。目標、眼前の少年。理由、近い将来命を脅かされる可能性あり。この少年は死の原因になる可能性があります。」
!!?なんだこれぇ!!??