第六十五話
久々の自分の部屋で起床だ。病室のふかふかのベッドと枕は非常に気持ちよかったけど、やっぱり自分の部屋のベッドと枕というのは特別に気持ちよく感じるものである。
「んーー、んっ。まだちょっと体変かな」
流石に私の体であっても1日で元通りとはならないか。ちょっと面倒だけど、予定していた通りランニングでもして体鍛えるかな。
いつも通りの朝ごはんを食べて顔洗って・・・今日は何を着ようか。あ、ドッジボールとか言ってたし動きやすいのがいいか。デニムパンツと半袖Tシャツ、その上からパーカーというヤング?ラフ?なんか少し不良少女を感じるファッションで家を出た。
「楓ちゃんおはよー!」
「おはよう、姫ちゃん」
「おばさんに言ってみた?」
なんのこと・・・ああ、筆記用具か。昨日の夜中にパパとママに言ってみたところ、
「今の筆記用具は嫌?」
「ううん、ただ皆と同じものにしたら・・・いいかなって」
「よし、パパが買ってあげよう!今度の日曜日に一緒に行こうね!」
とすぐに了承してくれた。
「うん。今度買いに行こうねって言われた。」
「良かったね!」
「これでクラスに馴染めるといいんだけどなぁ」
「きっと大丈夫だよ!」
で、あって欲しい。これで駄目だったら私はもしかしたら<孤高の美少女>とか呼ばれるようになって二人組を組めない生活になるかもしれない・・・いや、そんな二つ名付ける小学生がどこにいるんだって話だが、小学校5年生くらいで中二病の入り口に経つような男子いるし、たぶんそう呼ばれる。それもなく、<ぼっち>で扱われたらきっと引きこもりたくなるだろう・・・
「楓ちゃん?」
「あ、ううん。なんでもないよ。」
無駄なシミュレーションはやめておきましょ。
学校に着いてからまず職員室に向かう。一応きちんと「退院して学校に来ました」と先生に報告するためだ。
ちょっと先生の名前を忘れかけてたが何とか思い出して田島先生に報告し、いよいよクラスに入るときが来た。
「みんなおはよー!」
「姫おはよー」
「きのうのみたー?」
「お、おはよう!」
姫ちゃんが挨拶した時には賑わっていた教室も、私が挨拶すると一瞬音が消えた。そして、次の瞬間、
『おはようございます!』
クラスの女子が皆、息を揃えて私に挨拶した。まるで軍隊の教官か偉い人みたいな気分だ。まったく気持ちよくない。
私が無理やり上の地位に座らされた人の気分でいるとクラスの奥から麗子ちゃんが近づいてきた。
「おはよう、楓。」
「あ、麗子ちゃん」
「麗子で構いませんわ。楓と私は親友なのだもの!」
「あ、」
やべ。ネックレスの存在忘れて身に付けるの忘れた・・・。
「そ、そうだね。」
「私も楓ちゃんのしんゆーだよ!」
「ふっ、私と楓は目で確認できる親友なのよ!」
ごめんなさい忘れました。
「私もこうやって皆に見せるもん!ぎゅーっ!」
あははは、姫ちゃん腕を強く抱き締めないでちょっと痛いー。私が入院している間に色々あって変わっても、この二人はまだ変わっていなかったようだ。
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